乳がん治療をする友人のすすめで検診。そして自らにもがんが発覚。

11月2日の「教育のキモ」に出演いただいたのは、「女性とがんについて考える」をテーマに、がんの啓発活動をするNPO法人「C-ribbons(シー・リボンズ)」代表の藤森香衣(ふじもりかえ)さん。

モデルでもある藤森さんがこの活動を始めたきっかけは、自らも乳がんになったことだった。

「友人が若くして乳がんとなり、治療に入る際に私に『検診を受けてね』と。それで検診を受けたら、私にもがんが見つかったのです。
しかし、その友人は亡くなってしまって…彼女には恩返しができないので、“命のバトン”を誰かに渡したいと考えました」

日本人の2人に1人はがんにかかり、3人に1人はがんで亡くなると言われている現代。なかでも、女性の乳がんの罹患は12人に1人とも言われ、年々増えている。

「右わきにしこりがあって、さらに右胸に腫瘍が3つ見つかり、医者からは『右胸は残せません』と言われました」

藤森さんのがんは、早期のステージ0だった。抗がん剤やホルモン治療はなかったものの、2013年4月に手術を行うことになる。

「手術で右胸を全摘出して、同時再建を行いました。女性としてずっと生きてきた身体だから寂しいような、そこが犠牲になるのは申し訳ないような、そんな気持ちになりました」

 
 
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“がんサバイバー”の治療後の人生を考えたい

当時、藤森さんを支えてくれたのは、がんの経験を持つ友人たち。また職場も、藤森さんを後押ししてくれた。

「病院で治療が終わった後、患者はどう生きていけばいいのか、と。
病院ではいきなり仕事を辞めないでくださいねと言われます。仕事を続けながら生活している人もいますが、仕事を辞めて余計につらくなる人もいる。
社会とつながっていることが希望になるのです」

藤森さんは、がん経験者(サバイバー)と一緒に治療後の人生を考えていきたいと、NPO法人「C-ribbons」を立ち上げた。「C-ribbons」の“C”は、Cancer(がん)、Care(ケア)、Cure(治療)を表している。

「がんサバイバーは、皆が積極的な人というわけではありませんし、人によって問題は違います。だから、『治ったならいいんじゃないの』という言葉は乱暴です。
そして、腫れ物に触るように接してほしくないという気持ちと、わかってほしいという気持ちがあります。
一方で、健康な人はどうサポートしていいのかがわかりません。だから間に壁が出来てしまう。
お互いが知識を持つことで、社会でどう共に生きていくのか、提案する時期にきているのかなと思います」

藤森さんは最後に、「キャンサーギフト(がんがくれた贈り物)」という言葉について語ってくれた。

「病気になって全部を失うのではなく、違う道を見出すことが希望にもなります。病気はなったらよくないですけど、生まれ変わったような気持ちにもなれます。
病気の重さは人によって違うので全員には当てはまりませんが、皆さん“希望”という部分では共通している。病気になったなかでも、どう生きるのか見つめたいと思いますね」

 
 

「私は桜の花が咲く季節に生まれたのですが、桜の花が毎年咲くことが、当たり前のことが幸せと感じますね」

Yahoo!ネット募金で、「がんサバイバー」と「周りで支える人たち」のための支援活動へのドネーションも行っています。
http://donation.yahoo.co.jp/detail/5090001/

 
 
鈴木款
鈴木款

政治経済を中心に教育問題などを担当。「現場第一」を信条に、取材に赴き、地上波で伝えきれない解説報道を目指します。著書「日本のパラリンピックを創った男 中村裕」「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」、「日経電子版の読みかた」、編著「2020教育改革のキモ」。趣味はマラソン、ウインドサーフィン。2017年サハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。2020年早稲田大学院スポーツ科学研究科卒業。
フジテレビ報道局解説委員。1961年北海道生まれ、早稲田大学卒業後、農林中央金庫に入庫しニューヨーク支店などを経て1992年フジテレビ入社。営業局、政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。映画倫理機構(映倫)年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。映画配給会社アドバイザー。