政治とカネをめぐる問題で紛糾した臨時国会は、会期が延長されることなく閉幕した。世論調査では菅政権の支持率が急落したが、野党の支持率は依然低迷している。
国民が今野党に求めるものは。今回の放送では、橋下徹氏と立憲民主党の長妻昭副代表、日本共産党の小池晃書記局長を迎え、徹底議論を行った。

ルールの不備改善も野党の役割

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長野美郷キャスター:
安倍前総理の「桜を見る会」をめぐる疑惑について。桜を見る会の前夜の会合で、安倍前総理側がおよそ950万円の会費補填を政治資金として記載していなかった政治資金規正法違反の疑い。さらにこの会費について、安倍前総理が国会で虚偽の答弁をした疑い。橋下徹さんは11月29日の「日曜報道THE PRIME」でこのように発言しています。

橋下徹 元大阪府知事 (VTR):
国家のリーダーがホテルへの確認を行わず、秘書から「補填はない」と聞いただけで国会答弁をしていた。これが事実なら、本当に残念だが安倍さんの議員辞職もやむなしと思います。

長野美郷キャスター:
長妻さん、小池さんはどうご覧になりましたか。

長妻昭 立憲民主党副代表 選挙対策委員長代行:
今のストーリーでは、「自分は秘書に騙されていた」。しかし補填が事実であるなら、それを鵜呑みにして国会で5か月間に渡り30回も嘘の答弁をしていたということは考えられない。罰金だけで済んでしまえばモラルハザードとなり、選挙の公正性も問われる。国会で徹底的に追及する。

小池晃 日本共産党書記局長:
「桜を見る会」は税金を使った公的行事。それと一体の後援会行事を時の総理が利用した倫理的問題。それから政治資金規正法の問題。何よりも重大なのは、1年に渡る国会での嘘がほぼはっきりしてきたこと。国会での議論が国民から信頼されなくなれば政治は成り立たない。真相を明らかにし、議員辞職も含めた処分を

橋下徹 元大阪府知事:
追及はどんどんやってもらいたいが、必要なルール作りが野党の重要な役割。今回、民間企業であるホテルが領収書も明細も出さなかった。なぜ国会に民間への照会制度がないのか。また、大がかりな国政調査権の発動よりもっと手前で、全議席数の4分の1の要求で照会ができるような機能もあるべき。

「安倍さんは政治家を引退したほうがよい」

反町理キャスター:
橋下さんの「事実なら議員辞職もやむなし」は、法的な意味においてか、それとも倫理・政治責任の意味か。

橋下徹 元大阪府知事 :
責任の意味だが、難しい話ではない。安倍前総理は、発言を信頼してくれなければ委員会が成り立たないと言って、電話一本で済むホテルへの確認をしなかった。確認せずに答弁し今回のことになったのは重大すぎる。

反町理キャスター:
安倍前総理は次の総選挙の結果により審判を受けるべきという議論については。

橋下徹 元大阪府知事 :
政策は選挙で判断されるべきだが、不祥事は多数決の話ではない。選挙で禊は済まない。自分の確認不足だったのだから、もう政治家は終了としたらよい。

反町理キャスター:
それは、安倍前総理が政界から引退すべきだという意味?

橋下徹 元大阪府知事 :
そう。安倍さんは外交安全保障や金融緩和で成果を出し、大阪の改革でも力を貸していただき、僕は安倍政治には基本的に賛成。ただ、こんな問題でずるずる行くのは安倍さん個人にとってもったいない。

「安倍辞職せず」の方が野党にとってプラスか

小池晃 日本共産党書記局長
小池晃 日本共産党書記局長

反町理キャスター:
橋下さんと異なり、野党の追及は法的な部分に軸があるように見える。ならば、事実関係の確認だけを行い議員辞職勧告決議案を提出すればいいのでは。答弁拒否もある安倍前総理の証人喚問は必要?

小池晃 日本共産党書記局長:
7年8カ月総理だった人が証人喚問に出て、証言拒否しますか。そういう姿が出ればこれはやっぱり、国民の中で批判も起こる。

長妻昭 立憲民主党副代表 :
今の推移を見ると、断定的には言えないが会計責任者が略式起訴され罰金を受ける。証人喚問がなければそれで終わり。全部終わったあとで安倍前総理が記者会見をして、一方的に色々話すだけ。

長妻昭 立憲民主党副代表
長妻昭 立憲民主党副代表

反町理キャスター:
真相の解明が目的なのか、与党の支持を削ることが目的なのか。安倍前総理が議員辞職をして問題が収束し、自民党が傷を癒した形で総選挙に臨むのか、来年の総選挙まで攻撃材料になり続けるのか。野党は安倍さんに辞めないでもらったほうがいいのでは? 本音を聞きたい。

長妻昭 立憲民主党副代表 :
私はそういう考え方はしません。

小池晃 日本共産党書記局長:
そのように70年代の政局的な見方で国会を描き報道することはやめた方がいい。国民は政治に対して希望を失いますよ。もちろん、そういうことが全然ないとは言わないが。

反町理キャスター:
ほら、ほら。

反町理キャスター
反町理キャスター

小池晃 日本共産党書記局長:
だが今僕らは、チャンスというのではなく、国権の最高機関としての役割を取り戻すという使命感でやっている。

反町理キャスター:
橋下さん、僕のアプローチではやっぱり通用しない?

橋下徹  元大阪府知事 :
テレビカメラがあるのに本音を言うわけないでしょ。

小池晃 日本共産党書記局長:
本音を言ってるんですよ。

後期高齢者の医療費負担増は不公平か

反町理キャスター:
与党と政府の間で、後期高齢者の医療費の負担を75歳までは2割、75歳からは1割となっていたところ、75歳以降も2割のままとする合意があった。対象は年収200万円以上。

小池晃 日本共産党書記局長:
75歳を過ぎると疾患がどんどん増え、受診率は桁違いに上がる。そこでさらに負担比率を高めるのは、負担額でいうと公平ではなく不公平になる。若者は受診しても内科ぐらい。

橋下徹  元大阪府知事:
野党に支持が集まらないのはそういうところ。未来を感じない。
年齢関係なく公平に、収入が低い人には負担を軽減、収入がある人は当然負担してもらう。受診回数が多い人だけをちゃんと支援する仕組みを作ればいい。負担が増える可能性があるとしても、公平ならば現役世代は説明に納得する。問題は年齢による不公平。現役世代にとって最も腹が立つこと。

長妻昭 立憲民主党副代表 :
普通の先進国には、この年収以下で負担を増やすと受診抑制が起こり重篤化してかえって高くつくといったデータがある。日本でも厚生労働省がそのデータを出してほしい。また、橋下さんのご指摘は総合合算制度という考え方で実現できる。それを含めて議論が必要。

橋下氏「野党にはポピュリズムが足りない」

長野美郷キャスター:
野党が存在感を示すためには。政権の問題が出れば野党の支持率は若干上がるが自民党との差は大きく、1強多弱の状態が続いています。

橋下徹  元大阪府知事 :
理屈で正論を言っても支持率は取れない。感情が大事。野党にポピュリズムが足りなさすぎる。

長妻昭 立憲民主党副代表:
かつて政権交代を実現した民主党のマニフェストは、ある意味ではポピュリズムだったかも。今の我々は政権を奪取して目指す理想の社会をつくり上げたいと本当に思っており、実現可能性を重視しているから派手さがない。野党の政策は世間も報道もあまり反応しないが、選挙直前になれば平等に報道がある。それに備えて準備している。

橋下徹 元大阪府知事:
野党の役割として、与党に対峙し真逆のベクトルに行くことと、与党の方向性に乗っかり不足部分を推し進めていくことがある。立憲民主党や共産党は与党と違うベクトルにばかり行こうとしているが、国民の意識をマーケティングしているのか。自分たちの意見ばかり言って、国民の意見を感じすくい取る部分が足りない。

小池晃 日本共産党書記局長(左)、橋下徹  元大阪府知事 
小池晃 日本共産党書記局長(左)、橋下徹  元大阪府知事 

小池晃 日本共産党書記局長:
我々は野党にとどまろうと言っているわけでは全くない。国政選挙でも選挙協力をするようになった。今までとはかなり違う道を歩んでおり、乗り越えるべき課題もある。

橋下徹 元大阪府知事 :
でも共産党の「共産」という名前はもうやめた方がいい。それにこだわっている限りは一部の支持者だけでとどまりますよ。

小池晃 日本共産党書記局長:
そんなことはない。しっかりと伝えていく努力を我々はしている。

長妻昭 立憲民主党副代表 :
別に無理に自民党と違うことを打ち出しているのではない。ただ私たちは、格差に無頓着で、多様性を認めず、過度な自己責任論と同調圧力で声を上げられない政治や、新自由主義的な、成長を至上目的とする価値観とは考えが違う。そこをきちっと打ち出して、国民の皆さんに理解いただけるように。

野党・ゆ党・与党

反町理キャスター
与党と野党があって、その間に「ゆ党」というものを考えてみる。これは維新のこと。つまり対立型の政治もあり、先ほど橋下さんが言った与党の政策に対してものを言う形の「ゆ党」の政治もある。政権奪取の近道はどちらなのか。

小池晃 日本共産党書記局長:
何のための政権交代か。自民党と変わらないような政権交代は無意味。維新は「ゆ党」ではなく、与党の一員だと思う。一連の政策を変えるために政権交代するのなら、その中間に立つことはあり得ない。

橋下徹 元大阪府知事 :
それでは政権奪取はできない。「変えるため」の政権交代では国民不在。小池さんが変えたいと言っているだけ。だから世論調査を使うなどして、非自民の一本化のための予備選をやればいい。その中で国民が向いている方向を探る。すると互いの主張がミックスされながら収斂してくる。これが最大のマーケティング。

小池晃 日本共産党書記局長:
それは野合。予備選で一本化なんてできるわけがない。維新と我々で政策的に一致しているところなどほとんどないんだから。

橋下徹 元大阪府知事:
国会議員の間で調整することが野合。有権者が決めることは野合ではなく、民主主義。

BSフジLIVE「プライムニュース」12月10日放送