ここ数年で私たちの身近な存在となった生成AI。そんなAIに潜む「落とし穴」はないのか。
検証から見えてきたのは、子どもたちの将来にも影響をおよぼすおそれのある「バイアス」でした。
身近な存在のAIにあるバイアス
プロンプト=指示文を入力するだけで、文章からイラスト、動画や音声など、ありとあらゆるものが生成できるAI。
普段の生活から仕事まで、様々な場面で使うことが増えてきていますが、AIが出す「答え」は本当に「公平」なのでしょうか。
今回、2種類の生成AIを使った検証を行いました。
職業やシチュエーションに応じたイラストの作成を指示すると、「料理を作る人のイラストを作って」という“シチュエーション”では女性が生成されました。
一方、「シェフのイラストを作って」という“職業”ではいずれも男性のイラストが――。
ほかにも警察官や看護師のイラストの作成を指示してみると、警察官はどちらも男性、看護師はどちらも女性のイラストが生成されました。
そして近年は、性別に関わらずカラフルなランドセルを選ぶ子どもが増えてきているのにも関わらず、男の子は黒いランドセル、女の子は赤いランドセルという結果に。
「男の子が黒、女の子が赤のランドセルにした理由を教えて」とそれぞれの生成AIに追加で質問すると、このような返答がありました。
生成AI①:
現在まで男性が黒、女性が赤というのがずっと親しまれてきたから。
生成AI②:
日本で長く一般的だったランドセルの色の組み合わせを学習しているため。
私たち人間が残してきた膨大なデータ学習するAI。
そんなAIに、私たちが持つ無意識の思い込み、いわゆる「アンコンシャスバイアス」が潜んでいるともとれる結果になりました。
「アンコンシャスバイアス」なにが危ない?
アンコンシャスバイアスとは、何かを見聞きしたときや、感じたときなどに、無意識に「こうだ」と思い込んでしまうことです。
AIを開発している企業側も、偏見や誤情報などが含まれた情報を削除したり、差別的な出力結果にならないようにプログラミングをしたりなど、修正や対策を重ねていますが、それを上回るスピードで日々アップデートされ続ける情報。
対応が追いつかないのが現状だといいます。
総務省が公表した「令和8年版情報通信白書」によると、15歳~19歳の若者世代では91.7%が生成AIを利用したことがあると答えた一方で、親世代にあたる30歳~39歳では56.3%、40歳~40歳では49.0%と、若者世代の利用率が保護者の利用率を大きく上回る逆転現象が起きています。

若者たちのなかには、進路や職業選択のアドバイスを生成AIに求めるケースも。
この現状に危機感を抱いているのが、生成AIの教育利用に詳しい早稲田大学教職大学院の田中博之教授です。
「AIは正しいことを教えてくれると思ってしまう。つい相談相手になってしまう。ネットに上がっている女性はこう、男性はこう、というステレオタイプ的なイメージが、徐々にすり込まれてしまう」
また、家庭での生成AIの使い方にも警鐘を鳴らしています。
「家庭でひとりで使う中高生が多い。間違いがあっても指摘してくれる人がいない」
人生経験が浅い中高生たちは、生成AIが出した「答え」にバイアスが潜んでいても気がつくことができないおそれがあります。
この現状に「教育」はどう向き合うべきなのでしょうか。
私たちは早稲田大学の授業を取材しました。
教育現場で子ども達にどう教えるか
田中教授が行うこの授業では、将来教員を目指す学生達が、生成AIにどんなバイアスが潜んでいるかを調べたり、それを子どもたちにどう教えるかについて学んでいました。
教育現場でも、生成AIの利用がますます拡大することが見込まれている中、子どもたちに正しく活用してもらうための「リテラシー」を教えられるようにするためです。
授業を受けていた学生たちにもアンコンシャスバイスについて聞いてみました。

学生①:
私たち自身もやはりアンコンシャスバイアスは持っていると思う。AIもイメージは寄ってきてしまうのではないか。

学生② :
人間と同じようにAIにもバイアスがあることを今日初めて知った。
島田キャスター:
これまでアンコンシャスバイアスを意識したことはあった?

学生③:
全くない。言葉自体今回初めて聞いたそういった視点でみるのはすごく新鮮。
他にも、「バイアスがあることに気づいてもらえるような授業をしたい」「AIに一任してしまう使い方ではなく、あくまでも判断材料として使おうねと教えたい」など、教員になることを見据えて意気込む学生がいた一方で、「バイアスがあることを意識して使わなければ、AIも人間も同じようになってしまう」「自分が出した宿題をAIが解いてそのまま提出されたら嫌だ」などと、危機感をもつ学生もいました。
子どもたちと生成AI「学校教育の役目が大きい」
田中教授は「学校と家庭それぞれでの教育が必要」だと指摘します。
また、「職業選択がバイアスによって狭められる1番の被害者は子どもたち。それを開いてあげなければいけない。リテラシー教育という、新しいAI時代のAIを適切に使う、バイアスがあったら批判的に考える。学校教育の役目が非常に大きい」
家庭でできることは、「ご飯を食べた後や一緒にテレビを見た後でもいい。『ちょっと来て、ちょっと見て、これどう思う』という5分でできる会話を、AIから出てきたバイアスを見つける体験をすぐにやってほしい」とのこと。
AIに簡単に相談できてしまう現代。
その「答え」を一度立ち止まって考える必要がありそうです。
【取材】フジテレビ:島田彩夏、舘澤志織
【執筆】 舘澤志織

