ライフステージの変化を前に、将来のキャリアに悩む女性は少なくない。働き続けることを選ぶ女性がいる一方、結婚や出産を機に仕事を離れた女性たちにも、再び働きたいという思いがある。
仕事と家庭をどう両立し、望む働き方を実現するのか。広島の女性たちの声から考える。
自分自身でキャリアの舵を握るには
2026年7月、安田学園が主催する「キャリアオーナーシッププログラム」が始まった。
「自分たち自身で人生の舵を握る。その力を共につけていきたい」
安田馨理事長がそう呼びかける。このプログラムに参加したのは、広島県内の企業で働く女性たち。約3カ月にわたり、講義やグループワークを通じて、自分らしいキャリアのあり方を探っていく。
広島県では若手や女性の県外流出が課題となっており、その背景の一つに職場での男女格差もあるとされる。女性がいきいきと働き、活躍できる環境づくりを後押しすることがこのプログラムの狙いだ。
参加者の一人、広島市中区の広島電鉄に勤める今田真代さんは入社7年目。経験を積み、責任ある仕事を任されるようになった。
「後輩もできてきて、働きやすい職場にするために、自分がコミュニケーションを頑張っていく立場なのかなと思い始めているところです」
上司も「にぎやかな感じではないが、結構ひたむきにやるタイプ」と評価し、後輩の指導にも期待を寄せる。一方で、今田さん自身は将来のキャリアに迷いを感じていた。
結婚や出産で変わるキャリアへの不安
7月29日、初回セミナーのテーマは「女性のキャリアを取り巻く現状」。プログラムを監修するひろぎんHDの木下麻子さんが、男女の賃金格差など、女性が職場で直面する課題について解説した。
「30歳ごろ、自分が自由に人生を設計できないタイミングが訪れます」
結婚や出産、育児といったライフステージの変化が、女性のキャリアに大きな影響を与える。今田さんは、グループワークで将来の不安を打ち明けた。
「家庭と仕事の両立に不安があり、家庭に入ってしまえば仕事を任せられないのではないか」
特に気がかりなのは、出産を経ての職場復帰だ。
「出産すれば仕事を一時中断するので、ちゃんと元の部署に戻れるのか、戻れないのか、という不安があります」
その背景には、自身が育った家庭環境もあった。
「母が専業主婦で、父は仕事をして母が子育てをしている環境で育ったので、自分もそうなるのかなと勝手に思っていて」
仕事と家庭をどう両立するのか。今田さんは答えを探していた。
変化を拒否せず、挑戦して自信を得る
9月3日のセミナーでは、「挑戦」と「自信」をテーマに学んだ。
環境の変化に不安を感じる人は少なくない。今田さんも、慣れた仕事を離れて新しい部署に挑戦することにためらいがあった。
「異動から2年がたって、やっとわかってきたかなと思っているところで、自分がまた新しい部署に挑戦したいかと言われたら、そう思っていなくて……新しいことに挑戦するのが苦手なので」
こうした声に、講師の木下さんは環境の変化を自信につなげてほしいと伝えた。
「子育てがあるかもしれないと思うと、慣れた仕事を離れることにリスクを感じる。今くらいの安心感に到達するには何年かかるんだろうと思ったら、怖くて変化を拒否し始める。だけど、挑戦はやり直しではない。挑戦してできるようになって、達成して習得したら自信がつきます」
セミナーを重ねる中で、今田さんの意識にも変化が生まれた。
「何回も挑戦することが自分の自信につながると知ることができて、これからやりたいことがあれば自分から挑戦していきたいなと思いました」
10月2日の最終プレゼンテーションでは、約3カ月間の学びを自分の言葉で発表した。
「将来分岐点に立ったときに家事は自分がするものだと無意識に決めつけていました。しかし家事は夫婦で分担し、女性も男性と同じように働いていいのだと考えるようになりました」
家事や育児に合わせて自分のやりたいことを諦めるのではなく、さまざまな選択肢から、楽しいと思える仕事や続けられる方法を自ら選ぶ。今田さんは、そうした考えにたどり着いたという。
まず取り組むのは、「1日の始まりにやることを書き出して達成する」という日々の目標だ。
「挑戦することから始めて、失敗しても挑戦した後に自信がついて、キャリアにつながればいいなと思いました」
誰かが決めた未来ではなく、自分で選ぶ未来へ。今田さんは、自分の人生の舵を握り始めている。
専業主婦の約4割「今後、働きたい」
キャリアを模索する女性がいる一方、結婚や出産を機に仕事を離れ、再び働きたいと考える女性たちもいる。
マイナビが20~50代の既婚女性を対象に行った調査では、専業主婦の約4割が「今後働きたい」と回答した。しかし、実際の就職については58.4%が「難しい」と答えている。希望する条件に合う勤務先探しや、内定の獲得に難しさを感じている人が多い。
広島市内でこの調査結果について聞くと、仕事に戻った女性からは、生活費だけでなく、社会とのつながりを求める声も聞かれた。
30代のパート勤務の女性はこう話す。
「私も働きたいと思ってパートを始めたので、気持ちは分かります。子どもとずっと一緒にいると、孤独ではないけど、大人としゃべりたいという思いもあったので」
復職して「良かったです」と話す一方、仕事探しでは時間の制約が壁になったという。
「子どもを預けている間しか働けない」
働ける時間が限られる中、気軽に子どもを預けられる場所が増えることを望んでいる。
別の30代女性も、仕事に復帰したのは子どもが大きくなってから。動機を尋ねると「生活費ですかね」と答えた。その夫である40代の会社員男性は、家族との時間を確保できる働き方がもっと広がってほしいと考えている。
「家族に合わせた休み、例えば土日祝が休みの職種が限られるので、平日は仕事をして週末は家族と一緒にゆっくり休める職種がもっと増えればいいなと思います」
「家族を支える人」を支える社会へ
また、40代のパート勤務の女性は、子育てをしながら働くことが今より難しかった時代を振り返る。
「私が出産したのは20年ぐらい前で、小さい子どもを育てているお母さんが働く環境が全然整っていなかったので、就職自体がそのころは難しかったですね」
子育てや家事には、楽しいこともたくさんある。それでも、仕事を離れた時間が長くなるにつれ、焦りのようなものが生まれる。
「元気なうちに働かなくちゃ、みたいな気持ちがあったように思います。焦燥感が強いかもしれないですね」
一方で、今の母親たちが置かれた状況にも思いを寄せる。
「今の若いお母さんはすごく大変だと思っていて、キャリアを積みながら出産をして家族のこともやるのはすごいなと。働きたかったけど、同じことできるかなと思ったらできないなと思ったりもして。家族を支える人に対する支えが必要ですよね」
結婚や出産を機に仕事を離れる女性が多かった時代と、働き続けながら家庭も支えることが当たり前になりつつある今。女性を取り巻く環境は変化しているが、仕事と家庭の両立や、希望する働き方を実現する難しさは残っている。
自分のキャリアを築くための挑戦、もう一度働くための一歩。それぞれの「働きたい」に耳を傾ける社会が求められている。
(テレビ新広島)

