長野県飯田市の動物園の飼育員が描いたイラストが出版社の目に留まり、2026年秋に、本が出版されることになりました。大好きな動物たちを知ってもらいたい―。飼育員の熱い思いが込められています。
■くすっと笑える動物の豆知識
開園から70年を超える飯田市立動物園。
約40種類の動物が飼育されています。
その動物たちの飼育舎に貼られているのは―。
動物の生態や、くすっと笑える豆知識が描かれたイラスト。タイトルは「いいだどうぶつずかん」です。
来園者:
「怒ると唾をはく。『人間はまねしないで』だって」
「かわいくて分かりやすい」
「どうぶつずかん」は園のSNSでも発信。その投稿が出版社の人の目に留まり、2026年秋、「飼育員が教えるどうぶつ図鑑」として書籍化されることになりました。
■SNSでも話題!著者は「飼育員」
表紙に描かれている本の著者「すう」さんとは―。
動物園の飼育員、石川鈴夏さん(25)です。
動物園のイラスト「どうぶつずかん」の作者でもあります。
本の著者「すう」さんこと・石川鈴夏さん:
「(出版社から連絡が来て)本当だったらすごいことだとやり取りして、本物でした(笑)」
動物が大好きで、飼育員になった石川さん。働き始めて1年目(2023年)の1月、その年の干支の「ウサギ」をもっと知ってほしいと思い、描き始めたのが「どうぶつずかん」です。
飯田市立動物園・石川鈴夏さん:
「動物園で飼育している動物の紹介で、1枚に情報を詰め込み、目を引くような掲示物にして、大人も楽しんでもらえるような掲示物を作りたいと思って」
それから3年あまり、園内にいる約40種類の動物のうち、26種類まで描き上げました。
■小さなころから「動物の絵ばかり」
石川さんは長野市出身で、小さい頃から動物の絵を描くのが好きでした。
飯田市立動物園・石川鈴夏さん:
「シートン動物記が好きで挿絵の模写したり、絵の具でカナヘビ描いたり動物の絵ばかり描いていた」
高校卒業後は、千葉の動物専門学校に進学し、2年の時に飯田市立動物園で実習を行ったことが飼育員としての今につながっています。
■飼育員の「ウラ側」の仕事
この日の仕事は、フンボルトペンギンのエサやりや―。
飯田市立動物園・石川鈴夏さん:
「(ペンギンは)夜間バックヤードに帰っていて、夜の間に汚れがたまるので」
バックヤードの掃除です。
飯田市立動物園・石川鈴夏さん:
「これはペンギンの鳴き声です。お客さんに牛みたいと言われるが、フンボルトペンギンはこういう鳴き声です」
ほかにも―。
飯田市立動物園・石川鈴夏さん:
「体重測定ができるようにターゲットトレーニングをしていて」
音とエサで、ターゲットにタッチすることを覚えさせ、ターゲットを使って誘導できるようにするためのトレーニングです。
こうしたトレーニングや獣舎の管理・整備などは、飼育員の「ウラ側」の仕事です。
■「かわいい」以外の言葉を
反対に「オモテ側」の仕事というのが―。
飯田市立動物園・石川鈴夏さん:
「人に『動物の魅力を直接伝える』ことができる(仕事)」
魅力を伝える手段の一つがイラストでした。自分の担当以外の動物は、その担当者に聞いたり、本で調べたりして描いているそうです。
夜行性のビーバーは日中ほとんど動かない―。
飯田市立動物園・石川鈴夏さん:
「ビーバーが見られないという時は、ぜひこの掲示物を見てもらうと、こんな生き物というのが分かるので。ビーバーがダムを作るのは周知の事実だと思うが、なんのためにダムを作るの?と正しい知識を面白く伝えられたら」
来園者:
「イラストと見比べながら見られて分かりやすかった」
「動物の特性が分かって愛着が湧き、かわいいなって思う」
飯田市立動物園・石川鈴夏さん:
「反応があると『よしよし』と思い、掃除しながらニコニコしている。『知らなかった』、『こんなすごいことがあるんだ」みたいな、かわいい以外の言葉を引き出せた時に、やったなと思う」
■7種類の動物と暮らす自宅
石川鈴夏さん:
「こんにちは〜」
石川さんがイラストを描く場所は「自宅」です。
石川鈴夏さん:
「怖いね、すごく怖がりなので」
リビングで迎えてくれたのは、ネコの「てん」ちゃん。専門学校で保護され、それを引き取りました。
さらに―。
ネズミの仲間、デグーの「リリー」と「テト」。アマガエル2匹にニホントカゲが2匹。水槽ではメダカとエビを飼っています。
寝室には―。
石川鈴夏さん:
「見づらいかもしれない、この中にいるんですけど」
カメの「ゴマ」とは、小学生の頃からずっと一緒です。
飼っている生き物は、全部で7種類。そんな動物たちに囲まれてイラストを描いています。
絵は「独学」で、高校生の頃からはipadを使って描いています。
石川鈴夏さん:
「好きだけでやっている。大した理由はないというか」
■「詐欺?」出版社から連絡
実際に「どうぶつずかん」の制作過程を見せてもらいました。
石川鈴夏さん:
「何を伝えたいかを一気に書き出して、空いたスペースに絵を入れていく。色を付けて」
「カピバラ」は5時間45分で完成!
「どうぶつずかん」は、園の公式SNSでも発信しています。
2万件を超える「いいね」が―。
すると、2025年春―。動物好きだという出版社の担当者が、偶然、SNSで石川さんのイラストを目にし、連絡してきました。
石川鈴夏さん:
「動物園のメールで書籍化しませんかと声をかけられて、職員みんなで詐欺じゃない?ってKADOKAWAからメールくることあるかなって」
書籍化の話が決まると、そこからはひたすら絵を描く毎日で、休日は1日中、机に向かうこともありました。
石川鈴夏さん:
「コマ割りとか起承転結、3コマくらいに収めるのは難しくて、漫画家ってすごいなって」
■「動物への世界を広げたい」
本は全部で160ページ。これまで描いてきた「どうぶつずかん」をもとに、動物の生態や観察してほしいポイントなどをマンガ形式で紹介しています。
飼育員だからこそ描ける動物の魅力や面白さ。それをより多くの人に知ってもらいたい―。「図鑑」にはそんな石川さんの思いがたっぷり詰まっています。
飯田市立動物園・石川鈴夏さん:
「少しでも動物の知識を持ってきた方が100倍楽しめると思う。疑問に思ったこと、普通に思っていたことにも必ず意味があると知ると、世界が広がるので。来園者や本を読んでくれた人の動物への世界を広げていけたらいいなと思っています」
