12月特集は「こんなはずじゃなかった…コロナの1年」。2020年は新型コロナウイルスに振り回されたが、大学生の皆さんは1年間をどう過ごしただろう。

オンライン授業主体でいわゆるキャンパスライフが楽しめないというだけでなく、中には、外出自粛などでアルバイトで稼げない、学費を払ってくれていた両親の収入が減ったなど経済的な問題を抱える大学生もいることだろう。
 

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今回は、現実的な問題として「中退」を検討せざるを得ない大学生に、相談窓口があることをお伝えしたい。

中退相談の窓口「コロナ中退119番」

その相談窓口は、就職支援事業を展開する企業「ジェイック」が5月に立ち上げた「コロナ中退119番」という試み。進路や中退などに関する悩みについて、実際のキャリアアドバイザーが相談・情報収集に応じてくれるサービスだ。

キャリアアドバイザーが相談などに応じる(画像はイメージ)
キャリアアドバイザーが相談などに応じる(画像はイメージ)

電話かウェブの専用フォームから申し込むことができ、いずれも無料。キャリアアドバイザーは年間で400人以上の中退者の相談を受けている経験から、アドバイスをしてくれるという。

ウェブでの申し込みフォーム画面
ウェブでの申し込みフォーム画面

大学生からはどのような悩みが寄せられているのだろう。中退となると、その後の人生にも影響がでかねないが、どんなアドバイスをしているのだろうか。ジェイックの担当者に、実情を聞いてみた。

経済的に厳しい・友人が作れない…

ーー「コロナ中退119番」の開設経緯を教えて。

弊社は「セカンドカレッジ」という就職支援サービスを提供していて、もともと中退者の悩み相談にも応じていました。コロナ禍で相談も増えてきたので、119番として特化したほうがサポートできるのではないかと思い、開設させていただきました。

コロナ中退という言葉は使っていますが、実際は学校生活の幅広い悩みをいただいています。利用者は12月現在で約20人と多くありませんが、セカンドカレッジに寄せられた中退などの相談は約3000件(11月27日現在)で、昨年と比べて約1.3倍になっているので、苦しんでいる学生は増えていると思います。

ーー相談ではどんな悩みが寄せられている?

傾向としては、(1)経済的な厳しさ(2)友人・人間関係が作れない、この2つが挙げられます。一つ目の「経済的な厳しさ」だと、留年や休学していた人、アルバイトのシフトや親の所得減少で、奨学金の返済ができなくなった人が中退するケースが目立ちます。

学生は立場上、飲食店やサービス業で働いて学費を賄う人も多いので、コロナ禍の煽りを直接受けやすく中退の引き金となることがあるようです。

もう一つの「友人・人間関係が作れない」は、講義がオンライン授業に切り替わったことによるモチベーションの低下ですね。高い授業料を支払う価値を感じないようです。

学生も働き口を失っているという(画像はイメージ)
学生も働き口を失っているという(画像はイメージ)

卒業論文を残すのみで中退した学生も

ーー実際に中退してしまった人はいる?

コロナ中退119番に寄せられた相談だと、留年はしたけど単位のほとんどを取得して、後は卒業論文を残すのみだった人が、学費が工面できなくなって中退しました。追加で多額のお金を支払うなら、一刻も早く働いたほうがいいと判断したようです。

セカンドカレッジに寄せられた相談だと、海外への留学目的で1年留年したが、コロナの影響でその留学先に行けなくなってしまい、目的を見失って中退した人もいます。言葉として適切かどうかはわかりませんが、どちらもかわいそうな状況でした。

ーー2020年度に入学した人からの相談はある?

ありますし、割合としても多いと思います。理由は「入学後のギャップ」です。オンライン授業が中心となり、友人も作れなければサークルも入れない、アルバイトも思うようにできないので、思い描いていたキャンパスライフと全てが違うそうです。

特に上京したばかりの人は問題を抱えやすいと思います。周囲に仲間がいなく、目的を見失いやすいです。「オンライン授業だと課題の負担ばかりが重く、提出してもフィードバックもない。誰かに聞いてほしい」と連絡してきた人もいます。

オンライン授業の日々で孤独を感じている人もいる(画像はイメージ)
オンライン授業の日々で孤独を感じている人もいる(画像はイメージ)

「中退する・しないは人生の分岐点」

ーーコロナ禍は大学生にどんな影響を与えている?

先が見えない状況だと思います。なりたい職業を目指して大学や学科を選んだ人も多いはずですが、その職に就けるかどうかも分からない。オンラインで技術などを学べるのか、大学を卒業する価値はあるのかと感じても不思議ではありません。

ーー相談者にはどんなアドバイスをしている?

相談者も悩みを話すことで気持ちを整理できるので、まずは「中退する・しないは人生の分岐点」というスタンスで話を聞きます。そこで辞めたい意思を感じたときは、目先の状況だけで決めたりしていないかを伝えるようにしています。

中退者の支援もしているので、中退後に社会人として活躍する人を多く見てきましたが、一方でコロナ禍だと辞める理由をコロナのせいにできるところもあります。簡単な気持ちで中退するとその後の就職も、バイト感覚で選んでしまう危険性があるのではないかと思います。

一時の思いで中退すると後悔する可能性も(画像はイメージ)
一時の思いで中退すると後悔する可能性も(画像はイメージ)

ーー中退者の支援はどう取り組んでいる?

セカンドカレッジの場合、中退理由の振り返りやビジネスマナーなどの研修を実施した後に、学歴に関係なくいい人材を求める企業との集団面接会を行います。そこで互いに評価が合致すれば、企業との個別の面接に進むような流れで支援をしています。

(※現在は新型コロナウイルスの感染予防で、実施形式などに一部変更あり)

悩みを打ち明けられる場所が必要

ーー社会や周囲が支援できることはある?

コロナ中退119番を開設したことで、コロナと直接関係ない中退の悩み、学校生活の悩みもいただきました。そこでは、親には申し訳なくて相談できない、学校は話を聞いてくれないと感じている人もいるようでした。身近な親や友人など、身近な人に話せない悩みを打ち明けられる場所が必要ではないかと思いました。

ーー苦境が続く中で大学生本人ができることは?

長期的な視点を持つことではないでしょうか。今の状況だけで判断していいのか、これからの人生を考えたとき、本当に辞めていいのかは考えるべきだと思います。

その一方で、経済的なところは私たちはどうにもできないのが実情です。奨学金は言ってしまえば「借金」なので、借り入れを増やすべきとは言えません。アルバイトと授業を両立させる計画を考えることなどは、一緒にお手伝いできればと思います。

一人で抱え込まずに相談してみよう(画像はイメージ)
一人で抱え込まずに相談してみよう(画像はイメージ)

ーー大学生に向けてのメッセージはある?

一人で悩みを抱え込まないでくださいと伝えたいです。身近に話せる人がいるなら、声をかけたり相談したりしてみてください。話しにくいのであれば、第三者が話を聞いてくれるサービスもあるので、溜め込まずに打ち明けてみてください。

 

飲食やサービス業界などの経営不振により、アルバイトの働き口が少なくなっていること、オンライン中心で人間関係が構築しにくいことでの孤独感が、大学生を追い詰めているようだ。

コロナ禍はいつ収束するか分からないが、中退は人生を左右する要因にもなる。悩みを打ち明けられる場所があることは、覚えておいてほしい。

「コロナ中退119番」の問い合わせ先
専用フォーム
・電話番号 03-5282-7600
※現在はテレワークのため、電話は留守番設定で、翌営業日に折り返しとなる

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プライムオンライン編集部
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