新型コロナウイルスの感染拡大で多くの学校が休校となり、子ども達が長い期間自宅で過ごすことになった2020年春。

ようやく開始した学校も、これまでとは大きく姿を変えたものだった。

高校では部活が再開したものの、感染対策との両立は難しく、煎茶部では茶わんに口をつけることを禁止するなど、生徒も教師も様々な工夫に苦心している。

また小学校では、これまでと異なる状況を前に、戸惑いで疲れてしまう児童もいるという。

コロナ禍以降、学校はどのように変わっていき、親は子どものどのようなことに注意すべきだろうのか。
 

文化部の部活動はどう変わった?

夏の甲子園やインターハイが中止になり、打ち込んできた部活の総決算の機会を失ってしまった高校生たち。多くの注目を集めた運動部だが、もちろん文化部の部活動にも大きな影響を及ぼしている。

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大分県の私立大分東明高校の煎茶部。粉末の茶である抹茶ではなく、急須などを用いて煎茶や玉露などの茶葉を使用して茶道を学ぶ部活だ。

この日生徒たちは静けさが支配する部屋の中で、お茶をいれていた。しかし、茶わんに注がれるのはお茶ではなく、水。マスクを付けて、茶わんを口の近くまで寄せるだけだ。その理由はコロナ対策だという。

使っている茶わんは部員で使いまわしていることから、お茶を飲むことで感染が広がる懸念があるとして、今は作法だけを行い、お茶を飲むことは禁止しているという。

煎茶部の日名子陽葵部長は「最初はちょっと違和感がすごかった。今はお茶が飲めないが、作法を丁寧にするなど出来ることがあるので、大事にしていきたい」と、今でもできる活動を大切に進めていくつもりだ。
 

一方、大分県立大分雄城台高校ではGW明けから始まったという吹奏楽部の練習が行われていた。多いときには同じ部屋で50人以上が一緒に演奏をしていたというが、管楽器を吹くときは、どうしても飛沫が飛んでしまう。
パートごとの練習は複数人でやり、さらにマスクを外さないと合奏はできない。

そのため部員で6つのコロナ対策を自分たちで考えたという。

1.練習室では、窓を開け換気する。
2.パートで分かれて練習し、合奏を減らす。
3.一人一人の距離を2m以上空け、椅子を配置する。
4.ドアノブを触ったら手洗いする。
5.部室、セミナーハウスの消毒液をこまめに使う。
6.楽器の使用は、個人毎に固定する。

合奏をするときは、最低限の人数にしたうえで隣の人との距離を十分に空け、パートごとの練習では、屋外で演奏する人数をこれまでの倍以上に増やした。飛沫が飛ばないようにお互い向き合わず、方向は皆バラバラで練習する。

さらには、他人の楽器を使わないことを徹底する。

「ここでクラスターが起きたら、部活ができなくなってしまう。感染対策をしっかりとって、部活をするのは大事」

吹奏楽部・佐藤理央部長は部活を続けるためにできる限りのことを考えていた。

今だからできる形での演奏会

この日、学校の中庭では吹奏楽部の演奏会が開かれていた。

中止となった甲子園同様、3年生にとって集大成の場となるはずの県のコンクールが中止されたことで、学校が特別に企画したものだ。

コロナ対策として会場は屋外。観客は演奏する部員たちからかなり距離を空けていて、校内の廊下から演奏に聞き入る生徒たちもいる。

新型コロナと向き合いつつ、練習を重ねてきた生徒たちは見事な演奏で、在校生や駆けつけた保護者を魅了していた。

この演奏会で引退となる3年生のために、1、2年生たちが、お世話になった先輩のためにと用意した演奏もサプライズで披露された。

「急きょ3年生は、この文化発表会で引退となることになりました。この場を設けてくださった先生方、暑い中集まってくれた保護者の方々、感謝申し上げます」

佐藤部長は目に涙を浮かべながら感謝の気持を述べた。

部員たちも「公の場で披露する最後の場だったので、とても気持ちが良かった」「みんなに最後の演奏を聞いてもらえて、自分たちの親にもその姿を見せられる場ができたのは本当にありがたい」と一度は無くなった3年間の発表の場が、発表会という形でできたことに満足そうだ。

この3年生の代は終わったが、下級生たちは今後もウィズコロナの時代で練習を続けていく。感染対策をとりながら部活動を両立させるために、何ができるのか。
 

ようやく開始した小学校。しかし子供の様子は…

新型コロナウイルスによって学校生活が一変してしまったのはもちろん高校生だけではない。各地の小学校にも大きな環境の変化が訪れていた。

各地で学校が再開した6月からの3か月で、新型コロナウイルスに感染した小学校や高校などの児童や生徒は1,166人、学校内感染は約15%の180人と、今でも気が抜けない子どもたち。

高校生など年齢の高い子どもは、普段と違う状況をある程度受け止めることができる一方、小学生には小学生ならでの戸惑いがあった。

愛知県刈谷市の岡田さん。小学2年生と5歳と2歳。3人の娘を持つ母親だ。岡田さんの住む刈谷市でも学校が再開し、子供たちも楽しみにしていたが、学校から帰ってきた子どもたちは浮かない顔をしていたという。

「いつも学校から帰ってきて『ただいま!』って言って帰ってくる娘が、すごく疲れた顔して帰ってきて、『どうしたの?』って聞くと、もう『疲れた』っていう一言で。学校行って疲れたってちょっとかわいそうだなって」

「疲れた」という言葉を聞くことが多くなったことを、心配している岡田さん。この日も帰ってきた長女の表情は明るくない。

岡田さん:
おかえり~ただいまは?疲れた?

長女:
うん

岡田さん:
友達としゃべった?

長女:
長い放課(休み時間)は…あやとりしていた

岡田さん:
1人で?

長女:
1人でしかダメだもん
 

この日から学校給食も再開し、本来なら楽しい1日になるはずだった。しかしその給食の時間もこれまでとは違うものだ。

岡田さん:
給食久しぶりだったもんね。給食は1人で食べるの?

長女:
前向いて静かに食べないといけない。すごい教室が静か~になってた
 

岡田さんは「誰とも喋っちゃダメだったりとか、あとは『放課(休み時間)何してたの?』って聞いたら、『みんなで散歩しに行った』って言うんですよ。放課も唯一、子供たちの楽しみじゃないですか?なんかそれもまだ奪われた状態なんだなと思って」と戸惑いを隠せない。

「やっぱり心配になる部分っていうのは、学校が再開した後に、子供たちの授業ってどうやって進んでいくのかなとか、お友達との関係性ってどうなっちゃうのかなとか」

「ゴールデンタイム」と呼ばれる友達との関係づくりをする4月、5月を経験できなかった子どもたち。
今まで経験したことのない状況に子供が簡単に順応できるのか、親として不安を感じている。
 

子供の変化にどう気がつくか

街でも学習の進みで差がついたり、勉強以外の学びが失われることで、精神的に不安定になってしまうのではないかという声が聞かれた。

“ウィズコロナ”時代に必要な子供たちの心のケアについて、学校側も対策を考えている。
名古屋市では長期休暇明けの登校が精神的な負担になる可能性があることから、これまで、夏休みに入る前に配っていた相談窓口などが書かれたカードを、今年は学校再開のタイミングに合わせて配布した。

また、眠れているか、体調はどうかなど、「チェックリスト」を使って学校ごとに心と体の調子を確認している。

特に注意しているのが、再開からしばらく経ったこれからの時期だ。

名古屋市教育委員会は「逆に頑張ろうとしすぎて、ちょっと経った時に疲れが出てきちゃう可能性があるかなと思うので、その辺りも注意していきたいなと思っています。ゆっくりと子供たちが遊ぶ権利や、ちょっと怠けたりする権利もあるわけなので、そういう所で、“大きく見守ってください”と先生方にもメッセージを出しています。長い目で子供たちを見守っていければなと思っています」と注意をうながす。

子供の心の不調のサインにはどんなものがあるのか、ファミリーメンタルクリニックの河村雄一院長は以下3点を挙げる。

・腹痛・頭痛を訴える
・これまでしっかりしていた子が急に甘えるようになる
・わざと怒らせるようなことをする

低学年の子供だとおねしょをするなど、幼児返りと思われる兆候が見られることも多いという。
こうした不調のサインがみられた場合でも、河村院長は「子供以上に親が焦らないこと」をが大事だと指摘する。子供は適応力があるので成長や適応力を信じて、長い目で見て、焦らずに話を聞いて環境を整えることが大事だという。

コロナ禍でのストレスはもちろん小学生だけでなく、中学生、高校生、大学生と様々な年代の子どもたちが抱えている。“ウィズコロナ”時代を迎える今、こうした変化が元通りになることはない。
政府や自治体、また身近な大人たち力を合わせて支えていかなくてはいけない。