新規感染者・重症者が急増
「急速に感染拡大しております。極めて深刻な状況になる前に感染拡大の防止策を早急に講じる必要があると考えております」
国立国際医療研究センターの大曲貴夫センター長はこう続けた。
「特に重症化リスクの高い高齢者の新規陽性者数が増加しており、高齢者への感染の機会をあらゆる場面で減らすことが必要と考えております」

この発言後、東京都が11月26日に発表した重症者は60人。25日よりいっきに6人も増えた。
新たに感染が確認された65歳以上の高齢の感染者も、25日の54人から大幅に増え83人に。「高齢者の増加=重症者の増加」となることは、これまでの経験上明らかだ。
東京都医師会の猪口正孝副会長も会議後、「重症者はこれから増えるので、医療提供体制は気を引き締めて準備をしなくてはいけない」と厳しい見方を示した。

26日の会議では、新規感染者数の7日間平均が先週の326人から大幅に増え、約400人にのぼり過去最多、との分析が出された。
新規感染者の増加比は123%、このままだと1カ月後には、1日あたり920人の新規感染者が出る、という。
感染経路は今週も家庭内感染が最多で40.7%、次いで職場が19.9%、学校・老人ホーム・病院などの施設が13.4%、会食が7.1%だった。
「不要不急の外出控えて」高齢者は要注意
また、重症化リスクの高い65歳以上の高齢者の感染割合は13%と横ばいであるものの、患者数が大幅に増加しているため「高齢者への感染の機会をあらゆる場面で減らすことが必要」と指摘した。

「できればできるだけ不要不急の外出を控えてください。外出する場合には対策を万策にしてください。体調が悪い方は外食への参加を避けていただきたい。重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患ある方、そして重症化リスクの高い方と同居される方も出来るだけ会食への参加を控えて下さい。帰宅時には手洗い消毒などの徹底をお願いします」
小池知事は、基本的な感染対策を徹底するよう呼びかけた上で、強い口調でたたみかけるように訴えかけた。

増加続けば通常医療を圧迫…受診遅れ重症化のケースも
「このままだと予定されている手術といったものが受けられなくなる、そういう状況が来る」
大曲センター長は、10人程度のクラスターも多発し、感染が急速に拡大することで通常医療が圧迫されることへの危機感をこう述べた。
「医療機関は予定手術、救急の受け入れや通常医療を制限せざるを得なくなり、新型コロナ感染症重症患者のための病床の確保との両立が極めて困難になると思われる」

医療提供体制については、先週と同じく深刻度が上から2番目の「体制強化が必要である」に据え置かれたが、猪口副会長も同じく、通常医療との両立が難しくなることへの強い危機感を訴えた。
「重症患者数は新規感染者の増加から少し遅れて増加することから、さらなる重症者の増加が予想されます。例年冬季は脳卒中、心筋梗塞など通常医療の入院患者が増加する時期であります。医療機関は、予定手術、救急の医療や通常医療を制限せざるを得なくなり、新型コロナ重症者との病室の確保との両立が極めて困難になると思われます」
また気になるのが、受診の遅れによる患者の急変だ。
25日段階で人工呼吸器をつけた患者は28人いたそうだが、そのうち12人が感染確認後2日以内に人工呼吸器をつけることになったという。発症後7日から10日で重症化するため、我慢せず早めの受診を、と強調された。

今週は深刻度が上から2番目の医療提供体制の総括評価だが、来週は「最も深刻」に変更される可能性が高いとみる都庁幹部も多い。
医療機関の負担が加速度的に大きくなっていて、医療の逼迫は現実化してきている。
(執筆:フジテレビ都庁担当・小川美那記者)