8月30日の記録的大雨で、福井の有名洋菓子店の工場が床上浸水した。被害額は、判明しているだけで3200万円に上る。それでも水が引いた翌日から従業員総出で洗浄作業を続け、11日後には工場の再稼働にこぎ着けた。店舗のショーケースにはすべての種類のケーキが戻ったが、工場の稼働率は災害前の6割にとどまり、社長は「復旧は道半ば」と語る。
県内5店舗に供給する菓子工場が被災
福井・坂井市丸岡町にある西洋菓子倶楽部。8月29日深夜から30日にかけての記録的大雨で、工場は30センチ程浸水し、菓子製造のための機械や設備が水に漬かった。
「雨が降っても、浸水してしまうことはまったく想定していなかった」と語るのは、同社の高倉竜馬社長。
被災した工場は県内に5つある店舗すべての菓子を製造する拠点で、工場が止まれば、店舗への供給も止まることになる。
翌朝から、工場で働く従業員は洗浄作業に取り掛かった。ボランティアも加わり、約40人が設備の泥や汚れを洗い流していった。ただ「菌は目に見えないので、そこが怖い。どこに菌が潜んでいるのかも分からない」と語っていた。
洗浄作業が終わっても、機械が正常に稼働するかどうかは分からず、現場は手探りの状態で復旧を進めていった。
工場が止まっている間は、ほかの店舗に製造の場を移し、細々と販売を続けていた。しかし、県内の店舗やサービスエリアへの安定した菓子の供給を再開するには、この工場を動かすしかなかった。
「ここが製造の拠点になってくるので、早く稼働しないと、いま営業できているお店自体も商品を供給できない状況になってくる」として、優先的に復旧を目指して作業を進めていた。
復旧は「まだ道半ば」
こうして被災から11日後、工場は再稼働を果たした。
福井市内のショッピングセンター内にある店舗では、売り場にさっそく変化が現れた。
店員は「ケーキの種類は、昨日までは9種類ぐらいしかなかったけど、きょうは5、6種類ぐらい増えて全種類戻った」と笑顔で話す。
客からは「工場は大丈夫?」という声が相次いでいたという。「ショーケースにケーキが並ぶと、お客さんもけっこう見ていってくれる」と、店員は売り場に戻ったにぎわいを実感していた。
ただし、工場内ではメインとなる機械が依然として故障中だ。被害を免れたオーブンなどを使い、ケーキのスポンジやシュークリームを焼くなど、できる作業から順番に再開している状況で、稼働率は災害前の6割ほどにとどまっている。被災した機材のメンテナンスは引き続き必要だ。
「少しの雨でもドキドキする」防災意識に変化
大雨による企業被害は同社だけにとどまらない。県によると、9日までに県内企業277社で浸水や設備の故障などが確認されている。
高倉社長は、今回の被災を通して意識が変わったと語る。「やっぱり少しの雨でもドキドキする」といい、「全国各地で大雨の被害が出ていて、今回限りのことではないという認識を改めないといけない。会社として対策をしっかりできるよう動き出しをしている」と語る。
記録的な大雨は工場や店舗に物的な打撃を与えただけでなく、事業者たちの意識そのものを変えた。

