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養殖カキ「大量死」を乗り越えて…自衛隊を定年退職しカキ漁師見習いとして邑久で働き始めた男性と漁師の減少を食い止めたい地元漁協の思い【岡山発】|FNNプライムオンライン

養殖カキ「大量死」を乗り越えて…自衛隊を定年退職しカキ漁師見習いとして邑久で働き始めた男性と漁師の減少を食い止めたい地元漁協の思い【岡山発】

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瀬戸内市邑久町でこの春、カキ漁師の見習いとして働き始めた元自衛隊員の男性がいる。生産の担い手が減少する中、期待を背負って歩み始めた男性を取材した。

◆自衛隊を定年退職し、子供の頃から憧れていた漁師の道へ…「成功するのも失敗するのも自分の責任」

船から、かきいかだに乗り移る時は慎重に・・・。でも、いかだの上での作業にはまだ慣れない。

「暑い・・・」

カキ漁師の修業を始めて3か月余りの佐々木一元さん(56)。2024年に自衛隊を定年退職した佐々木さんが第2の人生として選んだのは、子供の頃から憧れていた「漁師」の道だった。

なぜ、漁師なのか。

佐々木さんは漁師の一番の魅力として「成功するのも失敗するのも自分の責任。誰かと一緒に漁に出て誰かのせいにするのではなく、自分でできる」というところを挙げる。

自衛隊時代の佐々木一元さん
自衛隊時代の佐々木一元さん
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◆大阪での説明会に出展した邑久町漁協のブースに佐々木さんが興味を持ち、実習へ

佐々木さんは地元・大阪で開かれた、漁業への就業を希望する人向けの説明会を訪ねた。そこに初めてブースを出していたのが瀬戸内市の邑久町漁協だった。

邑久町虫明地区は岡山県一を誇る養殖カキの産地。しかし、生産者の数が年々減少。担い手の確保が最重要課題となっている。

邑久町漁協の松本正樹組合長によると、毎年2軒ずつの養殖漁業者が廃業している現状で、外部の人に入ってもらい、新しい漁家(生産者)になってもらおうとフェアに出展したところ、佐々木さんが邑久に興味を持ってくれ、実習を始めたのだそうだ。

漁業就業支援フェア(大阪市・2024年2月)
漁業就業支援フェア(大阪市・2024年2月)

◆独立に向け3年間の実習期間 ホタテの貝殻の束作りを早朝から昼まで続ける

独立に向けての3年間の実習期間。

この時季のメインの作業は、海に沈めてカキの幼生を付着させるためのホタテの貝殻の束作り。穴を空けた貝殻を針金に通していく作業を早朝から昼まで続ける。

ひたすら。ほぼしゃべらず・・・。
「数を数えているので(わからなくなる)。最初は苦労した」と佐々木さん。

「もうちょっと針金が短くてもいい」

そんな佐々木さんの指導係「親方」を務めるのが、カキ漁師の伊東聖二さん(50)。佐々木さんには「3年間の実習を経て独り立ちし、邑久町漁協の力になってくれたらありがたい」と、期待していると語る。

ホタテの貝殻の束作りにかかる佐々木一元さん
ホタテの貝殻の束作りにかかる佐々木一元さん

◆佐々木さんの親方は漁協の理事も務める“3代目” カキ養殖のベテランが見た「窮状」

海水温と塩分濃度の上昇でカキが大量死したのを受け、2025年12月、岡山県の伊原木知事が視察に訪れた。

「聖二さん、聖二さん!ちょっといい?このカキを水揚げした漁業者」

松本組合長が呼んだのは、祖父がカキ養殖を始めた3代目で、漁協の理事も務める若手のリーダーでもある伊東さん。伊東さんは知事に「何十年もカキ養殖を見てきたが、こんなことはなかった」と、生産者を代表して窮状を訴えた。

視察に訪れた伊原木隆太知事に窮状を訴える伊東聖二さん(2025年12月)
視察に訪れた伊原木隆太知事に窮状を訴える伊東聖二さん(2025年12月)

◆邑久町漁協初の試みに対し伊東さん「僕は教えるだけ」

邑久町漁協が外部から生産者を受け入れ、育成するのは初めての試みだという。だからこそ、「最初でこけないように、慎重に」やっていると伊東さんは語るものの・・・。

「僕は教えるだけであとは佐々木さん頼み。佐々木さんが上手にやって成功しれくれたら」

伊東聖二さん
伊東聖二さん

◆ホタテの貝殻の束を海に沈める「採苗」も例年より早い時期だとリスクが…

この日、伊東さんは作業の予定を急遽変更して船を出した。高い水温の影響で例年よりかなり早く、カキの幼生が海の中を漂い始めたという情報が入ったのだ。

「普段ならまだ沈めないが、いかだの角の一部だけ沈める」

幼生を付着させるためのホタテの貝殻の束を海に沈める「採苗」。ただし、例年より2週間ほど早いこの時期に採苗するのは「少ししか付着せず、中途半端に成長して死んで、殻の口を開けて使い物にならなくなるので少し早い」という点でリスクも大きいという。

「採苗」
「採苗」

このタイミングで貝殻を全部沈める漁師もいるそうだが、伊東さんはリスクを考え、全体の3割だけを沈める判断を下した。ただこの後、幼生が全く取れなければ、7割が無駄に・・・。

伊東さんは「海の環境が変わり過ぎて、今までの常識が通用しない。何十年やっていても今は手探り。人間のできることは知れているので、いろんなことを試しながらやっていくことしかできない。失敗してもいいから、とにかくやる」

大きな賭け。判断は1人1人の漁師に委ねられている。難しい判断を求められる漁師の厳しさを目の当たりにした。

全体の3割だけを沈める判断
全体の3割だけを沈める判断

◆顔は怖いが「何でも分からないことを教えてくれる」親方は佐々木さんをこう評する

研修中の佐々木さんは「ふらふらです」と取材に応じながらも、師匠の伊東さんについては「何でも分からないことを教えてくれる。優しい」

顔は怖いけど、との言葉を添えて話してくれた。

そんな伊東さんは「僕らが不思議に思わないことも不思議に思い、細かいことまで質問してくる。勉強熱心な方」と、佐々木さんの印象を記者に語ってくれた。

◆漁師となる決意の後でカキの大量死 3年後には「後輩でやりたい人がいれば一緒にできる環境を」

佐々木さんが邑久町でカキ漁師として生きる道を決めた後に発生したカキの大量死。乗り越えるためのノウハウを親方から学び、独立した後の目標がある。

「自衛隊の後輩で、邑久でカキ漁をやりたい人がいれば、呼んできて一緒にできる環境を作っていきたい。そうすれば邑久の漁師も増えると思うし、将来的に良いと思う」

一人前の漁師を夢見る佐々木さんと漁師の減少を食い止めたい漁協の思いがマッチしてスタートした取り組み。その成果が出るのは、3年後だ。

(岡山放送)

佐々木一元さん
佐々木一元さん
岡山放送
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