新学期が始まって約1週間、学校へ行くのが気が重いという子どもが増える時期とも言われています。
いわゆる「不登校」の子どもが年々増加するなか、「不登校専門」として相談や診療にあたる全国でも初めてのクリニックが島根・出雲市にあります。
悩みを抱える子どもや親と向き合う医師を取材しました。
出雲市大社町の「出雲いいじまクリニック」。
出雲いいじまクリニック・飯島慶郎院長:
なにかしんどいこととか、辛いこととかなかった?
いわゆる「不登校」の子どもたちを中心に診察する全国で初めての診療所です。
院長の飯島慶郎医師、2018年にこのクリニックを開業、はじめから「不登校」専門をかかげていたわけではありませんでしたが…。
出雲いいじまクリニック・飯島慶郎院長:
(クリニックに)たくさんの不登校の患者さんというか子どもさんが集まってきまして、私の娘も同時期に不登校にたまたまなってしまったので、そういう経験も含めて本気で診療していきたい。
殺到する相談に「我が子の不登校」。
飯島医師は、この現実を受け止めるため「不登校専門クリニック」として診療を始めました。
飯島医師が何よりも重視しているのは、不登校の原因となっている精神疾患を突き止め、適切な治療につなげることです。
この日受診に訪れたのは、6年以上通っているという高校3年生の山田さん(仮名)。
山田さん(仮名):
(学校は)行きたくない場所。いろんなことを言われるから。
山田さん(仮名)は学校の勉強に思うようについていけず、小学校高学年から学校に通えなくなった時期がありました。
山田さん(仮名)の母:
辛かったよね、多分。「どうしてできないの」って言ってたもんね。
飯島医師の診断は「学習障害」。
薬の処方を受け、勉強にも集中できるようになった今では、水産関係の仕事に就きたいという夢もできました。
文部科学省のまとめによると、「不登校」の小中学生の数は全国で35万人を超え、過去最多となっています。
約10年前に比べ、3倍近くに増加。
統計上、1クラスに1人はいるのが現状です。
さらに、診察に訪れた出雲市内のさくらさん(仮名)親子も、不登校の悩みを抱えていました。
学校での人間関係や勉強への苦手意識に悩んでいたさくら(仮名)さん(13)。
無理をして学校に通い続けた結果、起きることもままならなくなり、2025年5月ごろから不登校になりました。
さくらさん(仮名):
病んでた時の日記だ。
Q.病んでたのは通っていないころ?
さくらさん(仮名):
通っていないころ。
Q.学校ってどんな場所だった?
さくらさん(仮名):
嫌い。大嫌いな場所。…トラウマですね。見るだけで怖い。教室に入るだけで吐き気がする。
学校は苦痛でしかない空間でした。
さくらさん(仮名)の母:
最初はね、頑張って行こうとするんですよね。期待に応えたいみたいなところもあって。だけどやっぱりだめで。それで自信をなくして、自分はだめだってなって。悪循環ですよね。
なぜ学校へ行けないのか…答えのない闇のなかで家族は、ただただ自らを責め続けたといいます。
さくらさん(仮名)の母:
やはり育て方が…みたいなところまで行きましたよね。あの時私があんなことを言ってしまったからとか、本人も自分を責める。お互いが自分を責めて…という感じでした。
そんな時、藁にもすがる思いで訪れたのが、飯島医師のクリニックでした。
さくらさん(仮名)の母:
(他の病院でも)話はちゃんとうなずいて聞いてもらえるんですよ、丁寧に。その先が知りたいんですよ、私は。じゃあどうすればいいのっていうところが。教えていただいたのは、やっぱその飯島先生だけでした。
飯島医師は、集中が苦手な発達障害の一つ「ADHD」が引き金となり、パニック障害やうつ病を発症していると診断。
不登校の原因は「発達障害と精神疾患」だと伝えました。
さくらさん(仮名)の母:
病気を治すっていう目標ができるじゃないですか。それがやっぱり本人も私のせいじゃなかったんだって思ったし、私も私で、育て方じゃなかったんだっていうふうにも思えたし。この子が楽になる方法があるって分かっただけでも、ほんとに楽になる。
飯島医師は、体調や副作用を確認しながら、気分の落ち込みを和らげる薬や集中力を高める薬などを処方。
さくらさん(仮名):
行ってきます。
約1年かけて、さくらさんには少しずつ笑顔が戻り、今では近くにある公立の支援教室に通えるようになりました。
さくらさん(仮名)の母:
いつも青ざめて帰ってきたんですよ。もう疲れた、もう無理、もう無理って帰ってきたのが、あったことを全部結構細かに話してくれるので、それは今までしばらくなかったことで。通院のおかげだと思いますね、ほんとに。
すっかり元気になり、教室に通う日の朝は絵を描いて過ごすのがルーティーンです。
さくらさん(仮名)の弟:
めっちゃうまい、自慢だよ。
3つ下の弟にとっても自慢のお姉ちゃんです。
見せてくれたのは、絵の練習用に買ったという本。
さくらさん(仮名)の母:
人体の構造はどうなっているのかを勉強しています。今ではイラストレーターなど、将来の夢について考えられるまでになりました。
出雲いいじまクリニック・飯島慶郎院長:
問題をちゃんとクリアに見せてあげて、それはちゃんと外にあって、あなたや子どもさんの問題じゃないんですよって、人格的な問題じゃないんですよっていうのを示してあげるのが私のアプローチですね。ベタな言葉で言うと、症状がなくなるところまで治療してあげる必要はありますよね。不登校を直すっていうのが目的というよりは、ベストな状態を作ってあげることが目的だなと思ってます。
キャスター:
飯島医師によると、子どもの「笑顔が減った」と感じたら要注意だそうです。
例えば、不登校の原因となる精神疾患のうち割合が高いとされるのが、「うつ病」ですが、楽しいと感じると笑顔になることもあるということで、「楽しそうな時もあるから大丈夫」というわけではないとのことです。
もし「学校に行きたくない」と言われた時、子どもにそういった様子が見られないか、気を配ってみるのも大切かもしれません。
なお、「出雲いいじまクリニック」は、現在通院している相談者の治療に専念するため、新たな相談の受付を控えています。
