9月1日は「防災の日」。
この夏、山小屋で小屋番として働いた気象予報士の吉井庸二さんが、山の達人の防災術を取材した。
舞台は大雪山系の黒岳石室
自然災害は待ったなし。
時にライフラインが大きな影響を受ける。
「黒岳石室が見えてきました。大自然の中にポツンとたたずんでいます。石室以外、人工物はありません」(吉井庸二 気象予報士)
標高約1900メートル。
北海道の中央部、大雪山系にある黒岳石室。
私は黒岳の自然が大好きで、この夏何度か山小屋で小屋番をさせてもらった。
山小屋での暮らしが災害時に生かせると思い、今回は取材のため山に登った。

飲み水の確保が重要
「こんにちは。よろしくお願いいたします」(吉井気象予報士)
取材に協力してくれたのは、長い間、小屋番を務める清水祐吾さんと橋野亮平さん。
「水はこの雨水のみです。屋根に降った雨が雨どいを伝って、このオレンジのタンクにためて使っています」(清水祐吾さん)
まず重要なのが、飲み水の確保。
山小屋では携帯用の浄水器で雨水をろ過してから煮沸する。
雨が降らなければすぐに不足するため、大切に使っている。

「米を炊いてご飯を食べて、最後に(鍋で)みそ汁を飲んで。ペーパーで拭き取って食器を洗う水を使わないようにしている」(清水さん)
水が使えないと困るのが「トイレ」。
黒岳石室には水が要らないバイオトイレが設置されているが、携帯トイレも使う。
「こちらが携帯トイレブースです」(吉井気象予報士)
日本トイレ協会の調査では、災害用のトイレを備えていると答えた人は3割弱。
国は、1週間で1人35回分は使えるだけのトイレの備蓄を呼び掛けている。

様々な使い方ができる手ぬぐい
そして、登山者の多くが愛用し、防災にも役立つのが手ぬぐい。
「首に守るのに巻いたり、あと帽子の中にして汗止めにしている。吸水性がよくてすぐ乾く」
「3枚(持っている)。顔用、ものを拭く用、何かあった時用。縁を縫ってないのはすぐ乾くために。縫い目がないという手ぬぐいの特長。折って縫うと、そこが乾きにくいから」(いずれも登山者)
特に両端を縫っていない、切りっぱなしになっている手ぬぐいは包帯にも使える。
「ケガした時もちぎって包帯代わりにしたりとかもできるし、日差しが強い日は頬かぶりすればちょっと涼しい。ぬらして絞ってかぶれば、なお涼しい。寒い日なんかは首に巻いたりとか、いろんな用途で活躍しています」(清水さん)

災害時には疲労回復や精神的なストレスを減らすためにも温かい食べ物が必要だ。
カセットコンロと大量のカセットボンベを用意している。
「なるべく体温が冷えないような温かいものを取るようにしている。(Q:食事に気を遣っている?)人間は、体は食べ物でできているので」(橋野亮平さん)

調理するときには、節約を心がける。
「家庭用のカセットボンベは寒い所に置かないで暖かい所に置く。効率良く使うように。(カセットボンベは寒いと)圧が弱くなるので、時間が無駄になってしまう」
「火の節約で弱火で蒸します」」(いずれも橋野さん)
節水のため、水洗いをなくす工夫も。
「このままですね。お皿に移すとエコじゃないので。もしコッヘル(小型調理器具)を使うなら食品用ラップを使って、これだけ捨てます。洗剤は山に負荷がかかるので、ここでは使っていません。ウェットシートで拭くか、(ナイフなどは)あとは焼いて拭くか」(橋野さん)

普段からサバイバル力を…
山小屋で電気を使うのは、無線と最低限の明かりのみ。
ここにはポータブル電源が3台あり、日中はソーラーパネルを広げて充電している。
「生物としてのサバイバル力を上げておく必要があると思う。それを困った時にやるとつらいので、楽しい所で経験を積んで、体に覚えさせておく」(登山者)
時に自然は人間にはどうすることもできない災害をもたらす。
災害を生き抜く術は、普段から意識することで身に付けることができると感じた。

