8年前に上司である大阪地検トップ=検事正から性的暴行を受けたと訴える女性検事が検察庁を先月下旬に退職したと明らかにしました。
再発防止のために求めていた調査を受け入れなかった検察組織を去る決意をした女性検事。
事件の“被害者”としては刑事責任追及のために検察と関わらなくてはいけませんが、大きな不安と不信感を抱いています。
先月下旬、長年務めた検事の職を退いた元大阪地検検事のひかりさん(仮名)。
検察庁には怖くて行くことができず、検事バッジの返却は郵送でせざるを得ませんでした。
バッジを茶封筒に入れるとき、悔しさがこみ上げます。
【ひかりさん(仮名)】「本当に辞めるんだなって、今になって実感が沸いてきました。
被害者の方が一歩前に踏み出せるように、背中を押してあげられたらと思ってずっと仕事をやってきたので失うことはすごく寂しいです」
■検事正(当時)による“性的暴行”訴える女性検事 求めた第三者委調査
ひかりさんは8年前、懇親会の後、大阪地検トップの検事正で上司だった北川健太郎被告(66)から、酒に酔って抵抗できない状態で性的暴行を受けたと訴えています。
この事件をめぐっては、大阪地検の女性副検事が、被害者がひかりさんであると職場で言いふらし戒告処分を受けています。
二次被害も経験することになったひかりさんは、ハラスメントなどの再発防止のため法務省や検察庁に対し、第三者委員会による調査を求めました。
しかし、一向に受け入れられないことから4月に退職届を提出し、8月下旬の退職となりました。
■「検察組織の問題は市民の生命、安全に直結する」ひかりさんと代理人が抱く危機感
【ひかりさん】「組織の問題を究明し、法と人を守る組織に改革する必要があります。
検察組織の問題は市民の生命、安全に直結します」
ひかりさんの代理人を務める田中嘉寿子弁護士も元検察官。悔しさと危機感をあらわにします。
【田中嘉寿子弁護士】「上司に逆らってでも信念を持って事件を頑張るとか、優秀でやる気のある人ほど案外と早く辞めちゃうんですよね。
本当に“上”の言うことだけを聞いて、やる気のない人ばっかり残ってしまうと検察庁が市民の役に立たない」
■大阪地検・高検「職員個人の人事」「コメントを差し控える」
ひかりさんの退職を受けて大阪地検と大阪高検が出したのは「「職員個人の人事に関することについてはコメントを差し控える」というコメントでした。
“職場”を去らざるを得なくなっても、ひかりさんは検察と関わらなくてはいけません。
■無罪主張 刑事裁判で“被害者”として検察と関わるが…
ひかりさんに性的暴行を加えた罪に問われている北川被告は、初公判では起訴内容を認めるも、その後、無罪主張に転じました。
この刑事裁判で、ひかりさんは“被害者”として北川被告の犯罪行為立証のために検察と協力しなければいけないのです。
現役時代、担当する事件の様々な被害の“全容”を立証し、それに相応する適正な処罰を求めてきたというひかりさん。
自分が“被害者”となった今、他の検察官にその使命を託さざるをえませんが、この事件で検察は”性暴力の実態”に目を向けようとしていないと感じています。
■“PTSD” 医師は「性被害によって発症」と診断も検察は「因果関係立証が難しい」
【ひかりさん】「(検察は)この事件をいかに矮小化して、とにかく自分らのことばっかりしか考えてない」
ひかりさんは、事件後発症したPTSDについても「性的暴行の被害」として裁判で訴えることを求めていました。
医師から「性被害によって発症した」と診断されているにもかかわらず、検察は「因果関係の立証が難しい」として認めなかったのです
裁判開始後の無罪主張によって、およそ2年間にもわたって争点整理などが行われている裁判は、早ければ来月にも2回目の公判が開かれる見通しです。
“引き継がれる信念”として「被害者とともに泣く」と標榜する検察。
法廷で真実は明らかになるのでしょうか。
■ジャーナリスト浜田敬子氏「社会にとってもすごく大きな損失」
ひかりさんの取材を続けるジャーナリストの浜田敬子氏は、自身の取材をもとに、「ひかりさんは特に性暴力事件の捜査をものすごく一生懸命されていて、被害者の方とか弁護士の方に聞いてもすごく信頼が置かれていた検事の1人だった」と明かしました。
そのうえで「こういった検事の方が退職をしてしまうということは、社会にとってもすごく大きな損失だなというふうに思う」と話します。
また、事件そのものについては裁判で明らかにされるべきとする一方、検察組織の問題については裁判だけでは明らかにならないと指摘しました。
【浜田敬子氏】「なぜああいうことが起きたのかとか、そのハラスメントというものがこの事件だけじゃなくて他にもあったのじゃないかとか。
もっと言えばなぜ(言いふらされたことによる)誹謗中傷が起きたのかみたいなところまでは、裁判だけでは明らかにならないところがあると思っている。
普通の企業だったらすぐに第三者委員会を作って解明していくところですよね。検察という組織は法を守る人達なわけですから、普通の企業以上に敏感にきちんとした対応をとらなければいけない。
自助努力が問われてくると思います」
(関西テレビ「newsランナー」2026年9月1日)
