私たちの安心・安全を、日々守る、警察官。その警察官の数が全国的に足りなくなっています。
「警察」とえば映画やドラマで描かれることも多く、「市民のヒーロー」というイメージもありますが、実はいま…。
【奈良県警(採用担当)】「10年前より受験者が半数以下まで落ち込んでしまった」
警察の採用担当者は、採用試験の受験者減少に頭を抱えています。
その理由はなぜなのでしょうか。警察官の仕事に密着するとともに、その背景を探りました。
■ 全国で2番目に警察官が不足しているのが滋賀県警
警察官の不足は、数字にも明確に表れています。
「警察白書」によると、全国の警察官採用試験の受験者数は、10年前の9万1635人と比べて去年は4万1077人”半分以下”にまで落ち込んでいます。
東京都を管轄する警視庁では、今年度の充足率が定員に対して93%にとどまっています。全国平均の97.1%を下回る県も相次いでおり、滋賀・奈良・徳島などが平均を割り込んでいます。
全国で2番目に警察官が不足しているのが滋賀県警です。警察官の充足率は94%で他県と比較しても際立っています。
元兵庫県警刑事部長の棚瀬氏も、「警察官が足りないとなると、警察の活動、仕事に支障が生ずるのは、論理必然」と、いまの警察官不足を危惧しています。
【元兵庫県警刑事部長 棚瀬誠氏】「『交番を1つなくしてしまおう』とか、『この犯罪捜査はやめておこう』というわけにはいかないので、足りていないというのは1つの大きな課題」
■ 「怖そう」「きつそう」 若者が敬遠する理由
なぜ、警察官を目指す人が減っているのでしょうか。
街で若者に聞くと、「怖い人と戦わないといけないのは、ちょっと苦手です」、「犯人を見つけて走りで追わないといけない。きつそうだと思います」といった声が聞かれました。
奈良県警察本部の警務部 採用担当、酒谷裕子警部は「厳しい現場があるんじゃないかというイメージが先行してしまい、なかなか受験に至らないのではないか」と分析します。
奈良県警察本部 警務部採用担当・酒谷裕子警部「仕事のやりがいというのはものすごくあると思いますので、憧れて志望してくれる方がいたらいいかな」
実態よりもイメージで選択肢から外されてしまう…そこに、採用難の一因があるようです。
警察庁は、警察学校の運営方法の見直しや中途採用の強化など、対応を進めています。
■ 警察官の24時間勤務に密着
では、実際の警察官の仕事はどのようなものなのでしょうか。
取材班は奈良県警の協力を得て、近鉄奈良駅前交番に勤務する堀本凜太郎巡査(25)の1日に密着しました。
この交番の勤務体制は4人。取材日は3人が午前9時半から翌朝9時半までの24時間勤務、1人が午後5時すぎまでの日勤です。
午前中は落とし物の相談や高齢者の捜索対応。午後は住民の困りごとを聞いたり、防犯情報を伝える住民への巡回連絡に出かけます。
そして午後3時すぎには盗撮の通報を受け、現場のコンビニへ急行しました。被害者は海外からの観光客で、翻訳アプリを使いながら丁寧に聞き取りをしました。
【堀本凜太郎巡査】「撮影された方は傷ついていると思うので、そこの気持ちに配慮しながら。日本語が通じないので、翻訳アプリを介してなんですけど、伝えたいことに齟齬がないように…」
■「自転車が盗まれた」と通報
その直後、今度は「自転車が盗まれた」と通報を受けた現場へ。駆け付けると、通報者の隣には自転車が。「お酒を飲みすぎて忘れただけ」ということでしたが、堀本巡査は穏やかに「それならよかったです」と応じました。
体力的に決して楽ではない仕事が続く中、堀本巡査は続ける理由をこう語ります。
【堀本凜太郎巡査】「人と接したときに感謝の言葉をもらったり、ありがとうと言われたときに、貢献できているというふうに感じてそれがやりがいになっています」
(Q.警察官になってよかった?)
【堀本凜太郎巡査】「なってよかったと思います」
■滋賀県警はSNSでの魅力発信とポスターで受験者1.5倍
深刻な警察官不足の解消に向け、警察も対策に乗り出しています。
兵庫県警は8月31日までの3日間、就職活動中の大学生ら35人を対象に職業体験会を開催しました。
指紋や足跡を採取する実際の捜査に近い体験を提供し、警察の仕事をリアルに知ってもらう機会を設けています。
一方、滋賀県警はSNSを活用して”親しみやすさ”と”様々な働き方の選択肢”を積極的に発信。
さらに、地元出身の人気漫画家・森田まさのりさんが募集ポスターを担当するという独自の取り組みも展開しました。
その結果、長年減少が続いていた受験者数がおよそ1.5倍に増加しました。
■ 警察の魅力をどう伝えるか 問われる社会の関わり方
刑事ドラマを見て、警察官に興味を持ったという棚瀬氏も、こうしたアプローチが有効だと話します。
【棚瀬氏】「私の世代がテレビドラマで警察に魅力を感じたとすると、(今は)SNSというメディアを通じて警察の魅力を発信していく。
厳しい場面、苦しい仕事は当然あります。それを“ブラック”と呼ぶかはさておき、誇りを持って仕事が続けられるとか、生きがいの部分も含めると、私が警察官になった当時もそうだが、立派な仕事だと思う」
警察の仕事が持つやりがいや使命感を、どのように次の世代へ届けるか。警察組織だけでなく、社会全体が向き合うべき課題として、問われ続けています。
(関西テレビ「newsランナー」2026年8月31日放送)
