熊本地震の発生からまもなく1カ月となる。FNN取材団として現地に入った福島テレビの丹治響貴記者は、被害の大きかった八代市や氷川町を中心に取材した。熊本県によると、今回の地震による死者は38人。地震の影響が続く被災地の“今”を報告する。
氷川町 文化財の酒屋が倒壊
震度7を観測した氷川町では、5人が犠牲となり、町内には今も深刻な被害が残る。
倒壊した「氷川町まちつくり酒屋」は国の登録有形文化財で、天保時代から続く造り酒屋として地域の象徴だった。

建物は一階部分が押しつぶされ、奥の建物も崩れて道路にはみ出すほどの損傷を受けている。
元所有者の井芹道一さんは「まさかこんな状態になるとは思わなかった。氷川町のランドマーク的な存在だったので残念で複雑な気持ちです」と語った。
赤紙が貼られた自宅
今回の地震で被害を受けた住宅は2,589棟に上る。(氷川町 8月25日時点)
氷川町で60代の夫婦が暮らしてきた自宅には、立ち入りが危険であることを示す赤色の紙が貼られていた。裏側は大きく壊れ、室内から外が見えるほどの損傷だという。
夫婦は避難所へは行かず、犬とともに車中泊を続けている。

男性は「犬がいるので避難所に行くと迷惑をかけてしまう。車中泊はきついが仕方ないです」と話した。
車中泊や軒先避難で「避難者」として数えられていない人たちは“見えない避難者”と呼ばれ、長期化すれば災害関連死のリスクが高まる。県は実態把握を急いでいる。
新学期へ向け通学路を集中的に修繕
被災地ではまもなく新学期を迎える。
八代市では歩道の段差や路面の損傷が各所で見られ、熊本河川国道事務所が通学路の集中修繕工事を始めた。宇城市から八代市にかけての国道3号、約40キロの区間で修繕箇所は100カ所以上に上る見込みだ。

担当者は「子どもたちが安心して安全に登校できるよう舗装を進めています」と話す。
発災から1カ月、復旧に向けた歩みは着実に進んでいる。
福島からの技術支援
氷川町の公民館には、福島県浪江町の企業・アークリー株式会社が開発した「アクアステーション」が設置されていた。井戸水や川の水をろ過し、生活用水として利用できる装置だ。
開発の背景には東日本大震災の経験がある。

担当者は「被災地では飲料水だけでなく、シャワーや煮炊きに使う生活用水が必要になる」と話す。断水が続いた氷川町では、近くの川から汲み上げた水をシャワーとして活用し、断水が復旧した今もボランティア活動で使われている。
また福島県からも職員が派遣され、御船町で住宅被害の調査を進めている。
災害関連死を防ぐために
熊本県は、車中泊や軒先避難などで避難者数に含まれていない人たちの実態把握を進めている。避難生活が長引けば災害関連死のリスクが高まる。

福島県では東日本大震災で、避難中に病気が悪化するなどして亡くなる「震災関連死」が2351人に上り、直接死(1614人)を大きく上回った。
過去の教訓をどう生かし、一人ひとりの健康と生活を守るのかが今後の大きな課題となる。
