兵庫県屈指の“ディープタウン”尼崎。
尼崎市は4年連続で転入者が転出者を上回っていて、近年、移住先としても人気を集めている。
なぜここまで選ばれるようになったのか。
「おしゃれになってきている」と話題のスポットを中心に秦令欧奈アナウンサーが尼崎を取材した。
■工業都市として日本経済を支えてきた尼崎
阪神尼崎駅前の商店街に立った秦アナ。
秦令欧奈アナウンサー:尼崎といえば、ちょっとディープな街のイメージだったり、にぎやかなイメージがありますよね。いったいどんな変化が訪れているんでしょうか。
尼崎は大阪から近く、海に面した広い土地があることから、明治以降、工業地帯として発展してきた街だ。
はじめは紡績やガラスなどの軽工業、のちに造船・鉄鋼・機械など重工業が発展し、工業都市として日本経済を支えてきた。労働者が多く集まり、飲み屋などにぎやかな街のイメージが根付いてきたのも、そんな歴史があってこそだ。
では実際のところ、街の雰囲気はどう変わったのか。街の人に聞いてみると…
街の人:街はキレイになったけど、人がキレイになってない。
秦アナ:例えばどこがキレイになった?
街の人:駅前とかね。

■駅前が激変!「尼崎セントラルパーク」
「おしゃれになってきている」という地元の声を受け、秦アナが阪神尼崎駅へ向かうと…。
秦アナ:ここ、公園がありまして、すごくきれいな芝生が広がっています。ほんとにこの空間、すごくおしゃれなスペースだなっていう印象はありますね。
以前は公園でお酒を飲んでいる人も多かった阪神尼崎駅前の中央公園が、去年3月に「尼崎セントラルパーク」としてリニューアル。のびのびとくつろげる天然の芝生広場や、テラスのあるカフェもでき、おしゃれな空間に生まれ変わったのだ。
さらに2019年には、駅の南側に尼崎城が再建された。
実は尼崎出身で旧ミドリ電化の創業者が、10億円以上の私財を投じて建てたもの。地元の新しいシンボルとして、今や多くの人が訪れている。

■商店街に現れた「タコス屋」の正体
駅前だけではない。商店街ではこんな情報が。
街の人:タコス屋さんがあんねん。この商店街にある飲み屋さんとは違うような感じ。
商店街からすぐのところにあるタコス専門店。壁一面に迫力あるウォールアートが描かれたそのお店は、尼崎出身で音楽活動もする辻内祥雄さんが3年前にオープンした。
生地から手作りするという、こだわりのタコスが看板メニューだ。
さっそく試食した秦アナ、目を丸くしながらこう言った。
秦アナ:お肉もだし、このサルサソース、全部がジューシーで。口の中がいい意味でカオスになりますよね、タコスって。ほんとにおいしい!
ご主人の夢は大きいようだ。
店主 辻内祥雄さん:食と音楽とかいろんなカルチャーで、尼崎を新しくまた盛り上げていけたら。
辻内さんの友人京都・福岡・佐賀など各地から移り住んだ友人も多いという。

■移住支援が豊富な尼崎市 4年連続で転入者が転出者を上回っている
近年、尼崎は移住先としても人気を集めている。なぜここまで選ばれるようになったのか。秦アナは松本眞尼崎市長にを直接取材した。
松本眞市長:兵庫県の外から引っ越してこられた方に、例えば賃貸でファミリーで住む場合には25万円を補助するとか、新築で建ててくれたら200万円補助するとか、中古住宅なら60万円補助するとか、様々な移住支援メニューを準備しています。
秦令欧奈アナ:すごい金額ですね!
市長によると、尼崎市は利便性が高い一方で「ファミリー世帯にも来てほしい」という長年の課題があり、令和6年度から新たな政策を始めているとのことだ。
こういった支援制度の充実もあって、尼崎市は現在、4年連続で転入者が転出者を上回っている。

■移住者の半数以上は外国人 外国人向けのお店も増加
さらに驚くことに、移住者の半数以上はなんと外国人だという。
カリフォルニアからの移住者:私は兵庫県で働いてるけど、大阪にとても近いのが気に入っています。大阪に住む友達にもすぐ会えるし、尼崎はつながりを持てるいい場所ですね。尼崎大好き!
また、8月5日にはAmazonが尼崎市で2つ目となる大規模な物流拠点を新設。1日最大50万個の荷物を取り扱っており、多くの外国人がそこで働いている。その影響もあって、商店街には外国人向けのお店も増えてきた。
オープンからまだ1カ月というベトナムをはじめ東南アジアの食品を扱うスーパーには、平日で1日500人、土日には1000人もの客が訪れるという盛況ぶり。
売り上げを聞いた秦アナが「めちゃくちゃ儲かってるじゃないですか!」と迫ると、「それはヒミツですね、絶対ダメです!」とピシャリ。秦アナ、撃沈だった。

■市場で「今っぽいカフェ」を発見した秦アナ
続いて秦アナが向かったのは、阪神尼崎駅の東側、杭瀬駅周辺の「杭瀬中市場」。70年以上の歴史を誇るこの市場には、鮮魚店や豆腐屋さんなどおよそ15軒が軒を連ね、定食はこのご時世で1000円を切るという価格が魅力だ。
そんな市場の中で、ひときわ目を引く「今っぽいカフェ」を発見した秦アナ。
秦アナ:急に今っぽいカフェがありますね。新しい?市場の雰囲気とはちょっと違っていますね。
ここは、尼崎出身の堀尚哉さんが1人で切り盛りする「ホーリーコーヒースタンド」。去年4月末にオープンしたばかりだ。アフォガードのシェイクも揃う、市場とのギャップが絶妙なお店だ。

■家賃はなんと3万円 市場全体の集客アップにもつながっている
驚くのはその開業秘話。市場内の別の店で働いていた堀さんに、ある日こんな声がかかった。
堀尚哉さん:『ここ、お店空いてるけどやる?』って言われて。一生貧乏で生きてるから『お金ないからできないですよ』って伝えたら、『(初期費用が)10万円あったら借りられる』って言われて。10万円貯めて契約しに行ってオープン。全財産10万円で、10万円払って、お釣り2000円返ってきてスタート。
秦令欧奈アナ:10万円で借りられるっていうのは、どういう仕組みなんですか?
堀尚哉さん:家賃が3万円なんですよ。
秦令欧奈アナ:めっちゃ安いですね!
開業当初は「そんなとこ誰が来るん?」と周囲に猛反対されたそうだが、今や月の売り上げは30万円超えだという。しかも、カフェができてから市場全体の客足も増えたと地元の人が口をそろえる。
客:ここができてから、他のお店も行くようになった。ここへ来た帰りに買い物して帰ろうかっていう。
台湾料理店や古本屋さんなど新たな出店も相次ぎ、市場全体の集客アップにつながっているというのだ。
「低い家賃」という尼崎ならではの条件が、若い挑戦者たちを呼び込んでいるという好循環が生まれている。

■「尼崎の良いところって、ちゃんとしてないところでもある」
堀さんは、こんな夢を語ってくれた。
堀尚哉さん:尼崎の良いところって、ちゃんとしてないところでもあると思うんですよ。ハードルが低い状態で店を始められるのを見た知り合いが、自分でお店始めているんですよ。『尼崎でならできる』と思える街になったらいいなって。
秦令欧奈アナ:自由にみんながチャレンジできる街を作っていきたいってことなんですね。素敵だなぁ。
昔の“ディープ”なイメージを残しつつ、新しい人・文化・挑戦が静かに根を張りはじめた尼崎。気になった方は、ぜひ尼崎に立ち寄ってみてはいかが。ディープでおしゃれな、この街の空気を感じられるはずだ。
(関西テレビ「newsランナー」 2026年8月14日放送)


