スタジオジブリの人気映画『魔女の宅急便』では、黒猫のジジがセントバーナードに見つめられ、全身から大量の汗を流すコミカルな場面があります。しかし、実際の猫ではこのようなことは起こりません。
猫の皮膚には、人のように全身へ汗を分泌する汗腺がほとんど存在しません。そのため、汗を蒸発させて体温を下げることはできないのです。
猫が汗をかける場所は、ほぼ肉球だけです。真夏の暑い日に野良猫がコンクリートの上を歩いたあと、小さな肉球の足跡が残ることがありますが、それが猫の数少ない「汗」の痕跡です。
そのため猫は、毛づくろいで唾液を蒸発させたり、日陰へ移動したり、呼吸を変化させたりして体温を調節しています。しかし、これらだけでは十分に体温を下げられない場合もあり、水分不足になると熱中症や脱水のリスクが高まります。犬のように口でハァハァ息をしていたら、危険な兆候です。直ちに病院へ駈け込んでください。
健康を支える水の5つの役割
水分は単に喉の渇きを潤すためだけのものではありません。猫の体内では、生命活動を支えるさまざまな役割を担っています。例えば、次のような役割を担っています。
・体温を適切に維持する
・血液やリンパ液として栄養や酸素を全身へ運ぶ
・腎臓で老廃物を尿として排泄する
・尿を適切に希釈し、尿石症や膀胱炎などの泌尿器疾患のリスクを下げる
・消化・吸収や代謝を正常に保つ
特に猫さんは、慢性腎臓病や下部尿路疾患(FLUTD)が非常に多く、水分摂取量はこれらの疾患と深く関係しています。飲水量が不足すると尿が濃くなり、尿結石のリスクも高まります。
猫は砂漠地帯に生息していたリビアヤマネコが祖先といわれています。この砂漠に適応するため、猫は食事中の脂肪を体内でエネルギーにすると同時に、お水を生み出すことができます。肉食の猫ですから、食事の中には脂肪がたっぷり含まれています。
また、お肉は水分のかたまりです。つまり、お肉を食べればお水が得られるので、ほかの動物よりも飲水する必要性が少ないのです。この能力は飲水機会の少ない砂漠で生きるために大いに役立っていたようです。背中のこぶに脂肪を蓄積するラクダも、同じメカニズムで脂肪から水を得ているのは有名な話です。
このような背景から、猫は「喉が渇いた」と感じる仕組みがあまり発達していません。そのため、水分不足になっていても積極的に水を飲まないことが少なくありません。だからこそ、猫さんと一緒に暮らす人たちが飲水環境を整えてあげる必要があるのです。

