原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)は福島第一原子力発電所の廃炉に向け「技術戦略プラン」の要旨を公表した。
3号機で2037年度以降に予定されている燃料デブリの大規模取出しをめぐり、現場の線量低減などの東京電力に対する4つの“宿題”の現時点での進捗を示すとともに、3号機だけでなく1・2号機についても方向性を検討するよう指示したことを明らかにした。東電に対しては「ある程度見通しを立てないと(事故から)30~40年(で廃炉を)目指しますというのは無責任ではないか」とし、“宿題”の回答期限である約1年後までには「本当に計画通りできるのか、あるいはもっとかかるのかも含めてある程度見通しが立ってくると思っている」とした。
NDFは8月6日に福島市で会見を開き、福島第一原発の廃炉の円滑かつ着実な実行のために毎年公表している「技術戦略プラン」について説明を行った。「技術戦略プラン2026」は9月の公表を予定しているが、それに先立ち要旨の説明を行った形となる。
前年公表されたものから大きく変わったことのひとつが3号機の燃料デブリ大規模取出しをめぐる記載。大規模取出しをめぐっては、2025年7月に東京電力がNDFに工程案を示し、一定の技術的な成立性が確認されているが、「準備に12~15年かかる」とされ開始は2037年度以降となり、それまで掲げられていた目標である「2030年代初頭の着手」の達成は極めて困難な状況となっている。
NDFによると東京電力の工程案では、格納容器上部の“上蓋”に穴をあけて工具を入れ、ウォータージェットで内部の構造物や燃料デブリを破砕して細かくしたものを下に落とし、格納容器の横側に設置した装置で吸引、連続回収することを想定している。
NDFは燃料デブリ取出しの具体的工法の評価を行うことなどを目的として「燃料デブリ取り出し工法評価小委員会」を設置していて、この小委員会は東京電力から提示された工程案に対し、技術的な検討課題・“宿題”を出している。
“宿題”は「線量低減」「必要な構造物の具体化」「充填剤」「汚染建屋の処理」の4項目。合わせて1・2号機の検討を進めるよう指示したという。
「線量低減」をめぐっては、破砕して下に落とされた燃料デブリなどを回収する装置を設置するための前提として、1階部分の放射線量を設置作業ができるまでに十分に下げる必要がある。NDFによると東京電力は除染を4、5年で実施する見通しを立てているというが、これを具体的な工程に落とし込んで実現可能かどうかを検討するよう指示しているという。
2点目は「必要な構造物の具体化」。格納容器の“上蓋”から入れる工具とそれに関する構造物は、重すぎたり大きすぎたりして建屋の健全性に支障をきたさないようにしなければいけない。東京電力は地面に足がついた状態の構造物を新たに設置する案と、建屋に抱き着く形での構造物を設置する案の2案を示しているが、NDFは1つに絞るよう指示。前者は足場を設置ために汚染された廃棄物処理建屋を解体する必要があり、後者は積載できる装置の重さが前者よりも制限される可能性がある。
3点目の「充填剤」は、格納容器上部に穴を開けるにあたって崩落等を防止するための素材の検討。格納容器上部の“上蓋”は事故で汚染されているうえに水素爆発の衝撃で崩れて空間が開いている。穴をあけることで崩落しないよう、充填剤で固める必要があるものの、この材質について決まっていないため性状を明確にするよう指示したというもの。放射線の遮蔽効果も必要となる。
「汚染建屋の処理」は2点目の「必要な構造物の具体化」とも関わる。足つきの構造物を新設する場合は汚染された廃棄物処理建屋の解体が必要となるが、NDFによるといずれにしても耐用安全の観点からは解体をすべきものだという。同じくNDFによると東京電力はこの解体を5、6年で実施可能としているが、内部の廃棄物がどういう状態なのか調査をするよう指示したとしている。
上記4つの宿題に合わせ、NDFは3号機だけでなく1・2号機も検討を開始するよう指示している。
国と東京電力は事故から30~40年、2051年までの廃炉完了を掲げているが、会見を行ったNDFは「(3号機の大規模取出し)準備に12~15年だと余裕が非常に少ないので、2号と1号も並行して作業をしないと30~40年におさまらない」「ある程度見通さないと30~40年(での廃炉を)目指しますというのは無責任」とした。
この4つの“宿題”への指示、そして1・2号機への検討について、東京電力は“検討中”としているという。回答期限は東京電力が工程案を示した2025年7月から「1~2年」とされていて、残りは約1年。NDFは「2027年の7月くらいまでには、本当に12年から15年でできるのか、あるいはもっとかかるのか、技術的根拠をもってちゃんとできると胸を張れるのかということも含めて、ある程度見通しが立ってくると思う」とした。
3号機では大規模取出しに先立ち、2026年3月に超小型の“マイクロドローン”を格納容器内に飛ばして内部調査が行われた。この調査では、かつて「核燃料の入れ物」だった“原子炉圧力容器”とみられる場所の周辺の撮影にも成功。圧力容器の底と見られる部分には“つらら”のように付着物がついていた。3号機で圧力容器の底部とみられるものが撮影されるのは初めてで、東京電力は、圧力容器底部の断面と思われるものも見えたことから「圧力容器に穴が開いていると推定できる」とした。また、本来は圧力容器の中にあるはずの構造物が落ちている状況も確認できたという。
福島第一原発には1号機に279t、2号機に237t、3号機に364tの計880tの燃料デブリがあると推計されている。
2051年までの廃炉完了に向け、安全かつ着実な作業の実行が求められている。
