女子サッカーの元日本代表候補という異色の経歴。「フィールド」から「水上」に戦いの場を移し、地元・岡山でデビューした新人ボートレーサー選手に密着した。
◆「水上の格闘技」に挑む23歳新人レーサー
ぶ厚いジャケットを身に着け、ボートに乗り込む。最高時速は80キロ。「水上の格闘技」とも呼ばれるボートレースの世界で2026年5月にデビューした新人レーサー、岡山市出身の岡本亜子選手(23)。
「まずはデビュー期(1年以内)児島で1着を取りたい」
倉敷市の児島ボートレース場を拠点としている岡本選手を取材したこの日は、他の選手との合同練習。デビューしてからほぼ毎週、全国のレースに出場しているため、先輩レーサーの走りを間近で見られる合同練習は月に1回しかない貴重な機会。岡本選手は「スピード感と安定感が全然違う。いつも勉強させてもらっている」と話す。

◆作陽高校(現:作陽学園高校)時代は主将でボランチ U-17日本代表候補にも選出され大学時代はトップ選手
岡本選手の持ち味は「視野の広さ」。
小学1年の時にサッカーを始め、強豪の作陽高校(現:作陽学園高校)時代はキャプテンを務め、全日本高校選手権で準優勝、U-17の日本代表候補にも選ばれた。ポジションは中盤の要、ボランチ。日本体育大学進学後はなでしこリーグの試合に出場しながら大学女子サッカーの日本一に輝くなどトップ選手として活躍した。
そんなハイレベルなサッカー経験を持つ岡本選手、戦いの舞台を「ピッチの上」から「水上」に変え、ボートレーサーとしてこれから生かそうとしている。

◆岡本選手の持ち味である“視野の広さ”も先輩からすると…
300メートル離れた2つのマークを3周し、順位を競うボートレースでは、ターンのタイミングや位置取りが勝負のカギを握る。岡本選手の特長が生かされる場面だが・・・
(先輩 小林愛実選手)
「スピードだけで来るとかあればいいけど、それもなく、ただ落として滑ってスピードもない」
(先輩 藤原早菜選手)
「迷わず上(まくり)なら上と行く方がいい。それで失敗してこけたりしたらそれはそれでレバー調整が悪かったとかハンドルが切れていなかったとか反省すればいい。とりあえずやるしかない」
と、先輩からは視野が広い故の慎重さを指摘される。
岡本選手は「周りを見る癖が良くも悪くもあるのかと。ボートでは周りを見すぎて自分のことができなくなっては意味がないので直していかなくては」と語る。

◆「音からすごい」と思いボートレースの道へ…競争率22倍の難関を突破
岡本選手がボートレーサーを目指すようになったきっかけは大学時代、友人の誘いで初めて児島でレースを観戦し、「音からすごいな」と、やってみたいと思ったという。
競争率22倍の難関を突破し、2025年4月、レーサーの養成所に入った岡本選手。1年間の厳しい訓練を乗り越え、運転技術やエンジンの仕組みといった知識を身に付けた。
「最初は本当に何も分からず、部品やモーターも一回も触ったことがなかったので全然わからなかった」という岡本選手だったが、プロ試験に合格したいという思いで必死にやっていたら覚えるようになったという。

◆「ボートは水面に出たら全部自分の責任」サッカーとは違ったボートレースの魅力
「ハンドルさばきは?全然。運転は苦手です…」
趣味は旅行。オフの日は、家族と車で出かけることも多いそうだが、陸でのハンドルさばきはちょっと苦手のようだ。
現在、ボートレーサー1600人のうち、約250人が女性。岡本さんは、ボートレースには男女混合のレースも多く、性別に関係なく戦えることなど、サッカーとは違う魅力を感じている。
岡本さんは新たな挑戦について、OHKの取材にこう語ってくれた。
「サッカーだったら自分のミスを誰かが補ってくれることもあって、そういうところが楽しいが、ボートは水面に出たら全部「自分の責任」。今は下手なのでレースが面白いと思えないが、新しいことを学んだり、挑戦することは楽しいと感じる」

◆デビューも未だ勝利ならず…目標はまず順位を上げること
6月28日、福井県の三国のレースに出場した岡本選手。デビューからまだ勝利はなく、まずは、1つでも順位をあげるのが目標。結果は最下位の6着だったが、岡本選手は「スタートを遅れないように行くことと、船をしっかり向けてターンマークに対してまっすぐ入ることを意識した。いつもよりは周1マークを回ったときに良い位置に出れたのかなと思う」と手応えを感じていた。

◆「少しでも応援して良かったと思ってくれるように…」地元・児島でのレースを前に抱負語る
その後は7月9日から地元・児島で行われたレースに出場した岡本選手。期待をしてくれている人たちが少しでも応援して良かったと思ってくれるように、一走一走気持ちを込めて迫力があるレースができるように頑張りたいと決意を語った。
戦いの場は「フィールド」から「水上」に。新人ボートレーサー・岡本亜子選手の今後の活躍に注目だ。

