イオンモール熊本で地震後に起きた爆発で7人が死亡した事故。
一体なぜ大規模な爆発が起きたのか?
関西テレビnewsランナーは複数の専門家とともに緊急検証。

そして私たちの生活の中で起こり得るガスの事故のの危険性についても徹底取材しました。

熊本で最大震度7を観測した地震発生からおよそ1時間半後…

イオンモール熊本付近を走行する車のドライブレコーダーなど記録された映像には轟音とともに吹き出す巨大な爆煙。周囲に激しい衝撃が広がり状況が記録されています。

熊本県嘉島町の「イオンモール熊本」で起きた大規模な爆発。LPガスが原因とみられ7人が死亡するという大きな被害が出ました。

一体なぜ、爆発事故は起きたのか?

取材班が向かったのは広島大学にあるガス爆発の実験施設。

ここでは今回イオンモールの事故原因とされているLPガスの爆発の威力を調べる実験なども行うことができます。

まず爆発のメカニズムが専門の広島大学・金佑勁准教授に数百枚の空撮画像をもとに作成した3Dモデルを見てもらい、現場の状況を解説してもらいます。

■爆発のメカニズムの専門家 ガスが時間をかけて建物の広い範囲に拡散し爆発したか

金佑勁准教授がまず指摘したのはガスが多く溜まっていたと考えられるエリアについて。
屋外のLPガスのタンクから施設内にガスが入り、建物内部で漏れ出て溜まり、爆発したのではと分析します。

さらに大きく損傷した箇所がある一方爆風の被害を受けていない箇所があることについては「(建物の)全部までは(ガスが)拡散できなくて、ある程度拡散できるどころでの着火なのかなという気がします、向こう側(損傷の少ない部分)にはまだそこまで広がっていない状況なのかなと思います」と指摘。

【広島大学・金佑勁准教授】「(破損した部分は)コンクリートではないですよね、それなりに弱いもの。それも(破損した部分も)それなりの強度を持つので、圧が上がった後の爆発かなという気もします」

整理すると、金准教授は大量のガスが時間をかけて建物の広い範囲に拡散した可能性を指摘。

その後、何らかのきっかけでガスに着火し比較的強度の弱い壁や屋根が大きく破損した可能性があるといいます。


■再現実験で見えたガス爆発の“威力”

建物内で起きたとみられるLPガスによる爆発を再現するため、容器内にたまったガスに着火する実験を行ってもらうと、少量のガスでも爆発音が響き渡り、容器内は一瞬炎が充満しました。

【広島大学金佑勁准教授】Q.大きな音がなったがかなりの威力が?
「これくらいの(小さな)体積でも非常に大きな爆発になります」
Q.この構造はイオンモールの爆発と同じような原理?「そうですね。
「内圧がある程度上がっていて、弱いところがパンと割れるようなことなので、今回も壊れたところがそれなりに少し弱いところが壊れたんじゃないかと思います。

少なくとも非常にLPガスが大量に拡散していて、そこに火炎が伝播したんじゃないのかなと想像しています」

■“損傷”は建物の密閉度が影響か 排気口の有無で建物損傷に

さらに金准教授は今回、大規模な爆発になった要因として、建物の密閉度に原因があった可能性を指摘します。

金准教授らが行った密閉度の差が爆発の被害にどのような影響を与えるかについて検証する実験では、排気口がある建物と無い建物を再現した2つの箱の内部で爆発を起こします。

その結果は、排気口があるものは大きな火柱があがりましたが箱そのものはそれほど損傷を受けていません。
しかし排気口のないものは箱が大きく損傷しました。

今回のイオンモールは溜まったガスが抜ける窓や排気口が少なく、建物内の圧力が高まり広い範囲に被害が出た可能性があるといいます。


■都市防災の専門家 配管の中に残ったガスに引火か

一方で都市防災の専門家は今回の爆発について別の見解をしめします。

【関西大学・越山健治教授】「南側の2階部分の被害が一番大きいので、そのあたりが爆発した場所であるとおおよそ特定できると思います。

バックヤード側つまり店舗ではない側のどこかで爆発が起きた可能性が高いと思います」

吹き抜けになっている店舗側ではなく、閉じられた空間のバックヤード側にガスがたまって爆発が起きた可能性を指摘。

そして越山教授が指摘する爆発の原因は、配管の中に残ったガスへの引火です。

基本的に地震の揺れで屋外に設置されているガスタンクの遮断弁が作動し、ガスは漏れないようになるはずですが、配管が損傷するなどして管の内部に残っていたガスが建物内に漏れ、爆発した可能性もあるといいます。


■地震後の混乱の中ガス漏れに“気づくにくい”

さらに“地震後”という状況もガス漏れに気づきにくくなる要因だといいます。

爆発事故発生直後の映像には付近にいた人が「ほこりが臭いです」を話す声が記録されています。

越山教授は、「地震の後なのでホコリは舞ってるし色んなにおいとかいろんな状況が混乱してる中で、ガスのにおいというのがどこまで違和感として感じ取れるか、日常の感じ方とは危機感の感じ方が変わるというのは間違いない」と指摘。

■ガス爆発は身近なところでも発生 死者も

様々な要因が重なった可能性がある今回の爆発。
ガス爆発の危険は私たちの生活の中の身近なところにも潜んでいます。

1日には千葉県のマンションでガスが原因とみられる爆発事故が起き、2人がけがをしました。
また、ことし2月には札幌市でも大規模なガス爆発が発生。

ガスコンロ、給湯器、ガスファンヒーター、ヘアスプレーの中でもガスは使われていて、金准教授はたとえ少量のガスでも注意が必要だといいます。

【広島大学・金佑勁准教授】「可燃性ガスが十分あるのであれば、可燃性ガスが爆発限界に達していれば、十分爆発というのは起きます」


■爆発事故を防ぐには…事故の多くが“誤使用”によるもの

生活に欠かせないガス機器は、ひとたび使い方を誤れば、家庭でも大きな事故を引き起こします。

コンロのガス栓にホースがうまく差し込まれていない、劣化した古いカセットボンベを使用したり、熱くなる場所に放置したりすると、いずれも爆発が発生。

こうした小さなミスや間違った使い方が火災や爆発につながります。

製品事故を調査する「NITE」=製品評価技術基盤機構は注意を呼び掛けています。

【NITE燃焼技術センター・川上正之センター長】「10年間で474件のガス機器による事故が起きています。そのうち、使用者の誤使用不注意によるものっていうのが261件あります。

今の製品はよくなってきてますから、いろいろ安全装置というものがついてますけれども、定めた使い方を守っている範囲で動作するものなので、取り扱い説明書というのをご一読いただくっていうのが大切かと思います」

■”ガス漏れ”に気づくために臭いつけているものの“監視”は重要な手段

ガスはそもそも無色無臭ですが漏れる危険があるため臭いがつけられています。
日頃からガス漏れの危険性をしっかり認識することが大切です。

さらに、ガス漏れ対策を手掛ける企業は、臭いだけではなく警報器などの設置も事故を防ぐための一つの手段だといいます。

【ガス漏れ対策にあたる「新コスモス電機」浮田大吾さん】「隣の部屋にいる場合も考えられるし、そもそも嗅覚の強弱も個人差であるので、より安心に監視できるというところでガス警報器がお役に立てると思います」

一瞬で人命を奪い、建物を破壊しうるガス爆発。
危険性を知ったうえで正しく使うことが、命を守る第一歩です。

(関西テレビ「newsランナー」2026年8月3日)

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