車社会の新潟県で、なくては困るのがガソリンスタンドだ。しかし、店舗数は減り続けていて、新潟県内ではこの10年で約230店舗が姿を消した。特に津南町では、豪雪地帯でありながら、ガソリンスタンドがわずか3店舗のみとなっている。国も過疎地のスタンドに対する支援の強化に乗り出す中、ガソリンスタンドの果たす役割について取材した。
過疎地で存在価値高まる“ガソリンスタンド”
新潟県津南町の中心部にあるガソリンスタンド、大阪屋商店大割野サービスステーション。この日の夕方、出先から会社に戻る車が次々と給油に訪れていた。
給油に来た人は「2、3日に1回は必ず寄るし、自分の車もここで入れている」「週4回来ている。(地元にガソリンスタンドがあるのは)やっぱりありがたい」といった声が聞かれた。
町民にとって必要不可欠な存在となっている大阪屋のスタンド。近年さらにその存在価値が高まっている。

給油に来た女性が「以前は町内の各地域でガソリンスタンドがあったが、閉鎖になった地域では、町なかに来ないとガソリンを入れられなくなった」と話す通り、津南町のガソリンスタンドは2021年ごろまで6店舗あったが、徐々に減り、現在は大阪屋を含めわずか3店舗のみとなっている。
「自宅の灯油もこちらで入れていただいている。なので本当に助かっている」と話す女性。
灯油は冬の命綱「なくすわけにはいかない」
4mを超える積雪を記録したこともある、豪雪地帯・津南町。
暖房の燃料として使われる灯油は冬の命綱だ。夏場でも、風呂や台所の給湯のため一定の需要があり、大阪屋では社員がホームタンクに給油して回っている。
灯油を配達してもらった住民の男性は「生活の一環だから。灯油だけはなくすわけにはいかない」と話す。
大阪屋商店の柳澤哲也さんは「冬の配達は朝8時から夕方5時、遅いときは6時ぐらいまでかかる。多い日はミニローリー2台で1万4000~5000リットルは出る」と現状について明かす。
ガソリンスタンド30年で半数以下に その理由は?
地域住民のインフラとなっているガソリンスタンドだが、全国では1994年度の6万か所をピークに、2024年度には2万7000か所に減少。30年で半数以下になった。

燃費の向上や車の保有台数の減少などにより、ガソリン需要が落ち込んでいることが主な理由だ。新潟県内では2014年度からの10年で23%にあたる231店舗が姿を消した。
大阪屋もガソリン事業の売上の伸び悩みが課題となっていて、その売上は10年前から約5億円で推移。町内の店舗が減っても売上は増えず、オイル交換など給油以外の売上を合わせて利益を確保しているのが現状だ。
“地下タンク”更新に3000万円
そして、スタンド経営に重くのしかかるのが、老朽化した地下タンクの更新だ。地下タンクは燃料を安定して供給するために欠かせない設備だが、老朽化すれば更新や改修に大きな費用がかかる。
大阪屋は2025年、その地下タンク3基を更新。ドラム缶250本分に相当する軽油など5万リットルを備蓄できるようにしたが、「更新費用は3000万円ちょっと。投資回収には何十年もかかるけどしょうがない」と話す桑原健次社長。
災害時に果たすスタンドの役割
厳しい経営環境にある過疎地のガソリンスタンド。
資源エネルギー庁の研究会は26年6月、支援を強化する方針を打ち出しているが、その背景の一つにあるのが災害時に果たすスタンドの役割だ。

2011年3月に発生した長野県北部地震では、津南町も震度6弱の激しい揺れに見舞われた。
地震発生当日の朝、震度6強を観測した長野県栄村の公民館へ県境を越え灯油を配達したこともあったと大阪屋商店の板場茂生さんは振り返る。
「避難した住民が公民館で過ごすのに灯油がないということで、配達に来てほしいと電話があった。肌寒いし雪も残っている時期だった。灯油がないと一日でも過ごすのに厳しい状況だったので、なんとかできないかと配達に向かった」
栄村の震災復興祈念館には、燃料について、村内では対応できない状況だとして、大阪屋への連絡を促した地震翌日の記録が残されていた。
スタンドは“最後の砦”「住民の命を最終的に守る職場」
また、2006年1月の大雪で、津南町と栄村にまたがる秋山郷の10集落で、約200世帯・500人が孤立した時にも、通行止めの一時解除に合わせ、枯渇していた灯油と軽油を大阪屋がピストン輸送した実績がある。
桑原社長は「秋山郷の孤立の際、一部業者さんの灯油が切れたということが、住民の皆さんに伝わってしまった。そのため当社に注文が一斉に集中した経験があったので、災害時を見据えた在庫の増強はどうしても必要だと思った」と明かす。
こうした経験から、大阪屋の桑原社長は2013年、国の補助金を得ながら、地下タンクやミニローリー、発電機を新たに整備。備蓄量を増やし、災害時の機動力を整えた。

「ガソリンスタンドは住民の命を最終的に守る職場だと思っている。『最後の砦』として、社会的な責任を果たしていきたい」と桑原社長。
給油や灯油配達を通じて平時の暮らしを支え、災害時には燃料供給の拠点となる。
人口減少や需要減少で経営環境が厳しさを増す中でも、地域に残るガソリンスタンドの役割は、これまで以上に重みを増している。

