プレスリリース配信元:株式会社帝国データバンク
エネルギー価格上昇による企業への影響調査

株式会社帝国データバンクは、全国2万2,572社を対象に、エネルギー価格上昇による影響についてアンケート調査を実施した。
SUMMARY
エネルギー価格の上昇が自社の経営に『マイナス影響』を与えているとする企業の割合は89.4%と約9割にのぼった。業界別では、『運輸・倉庫』および『農・林・水産』で6割近くが「大きなマイナス影響」と回答した。具体的な影響としては、「原材料・資材コストの上昇」が8割近くにのぼったほか、「物流コストの上昇」や「光熱費の上昇」などコスト負担の増加が上位に並んだ。また、それらコストの上昇分を販売価格へ十分に転嫁できず、「利益の減少」に直面している企業も5割近くにのぼった。
調査期間:2026年6月17日~6月30日(インターネット調査)
調査対象:全国2万2,572社、有効回答企業1万413社、回答率46.1%
エネルギー価格上昇、企業の9割が経営にマイナス影響
『運輸・倉庫』『農・林・水産』で6割近くが「大きなマイナス」
不透明な中東情勢が続くなか、原油やLNG価格は強含みで推移しており、電気・ガス・ガソリン料金などエネルギー価格の先行きには上振れリスクが残っている。
こうした状況を受けて、エネルギー価格の上昇が自社の経営にどのような影響を与えているか尋ねたところ、「ややマイナス影響」をあげた企業の割合は52.6%、「大きなマイナス影響」は36.8%となった。合計すると『マイナス影響』は89.4%と約9割にのぼった。
他方、「影響はない」は5.8%、『プラス影響』(「ややプラス影響」と「大きなプラス影響」の合計)は2.1%にとどまった。

『マイナス影響』の割合を業界別にみると、漁船や農業機械の燃料、天然ガス価格の影響を受ける肥料などへの依存度が高い『農・林・水産』が96.4%で全体を7.0ポイント上回り、最も高かった。うち「大きなマイナス影響」は56.8%と6割近くに達した。次いで、工場の稼働にともなう電力・ガスの使用に加え、エネルギー価格の高騰が原材料費にも波及しやすい『製造』が94.8%(「大きなマイナス影響」47.0%)、燃料費が主要コストである『運輸・倉庫』が93.5%で続き、うち「大きなマイナス影響」は57.5%と10業界中最も高かった。燃料価格高騰の影響の大きさがうかがえる。
『マイナス影響』とする企業からは、「船底用ペンキの価格上昇と品不足が起きているほか、燃料費やその他資材の価格高騰で経費が増えている。漁業者に対して支援策を増やしてほしい」(農・林・水産[定置網漁])や「材料費や運送費などあらゆるコストが上昇し、製造コストも上がる一方である」(電気機械製造[無線通信機械器具製造])といった声が聞かれ、コスト負担の増加に苦しむ様子がうかがえた。また、「コストに占める燃料費の割合が高いため、大きな影響を受けている。燃料費や車両維持費の上昇分を十分に価格転嫁できないケースも多く、負担が増している」(運輸・倉庫[貨物軽自動車運送])のように、コスト上昇に対して不十分な価格転嫁により利益が圧迫されている企業もみられる。
一方で、『プラス影響』とする企業からは、「原油高騰に起因する原材料価格の上昇を背景に、販売先からの前倒し受注があり、売り上げは増加している。ただし、エネルギー価格の上昇は収益環境を圧迫する要因である」との声が聞かれた。プラスの影響を受ける一方で、収益環境への悪影響を懸念する声もあった。
具体的な影響、「原材料コスト上昇」が76.5%で最も高く 価格転嫁進まず、5割近くで利益減
エネルギー価格上昇による具体的な影響について尋ねたところ、原油由来の材料を含む「原材料・資材コストの上昇」をあげた企業の割合が76.5%で最も高かった(複数回答、以下同)。次いで、「物流コストの上昇」(58.5%)、「光熱費の上昇」(55.0%)が5割を超えて続いた。さらに、それらコストの上昇分を販売価格へ十分に転嫁できず、「利益の減少」(47.1%)に直面している企業も5割近くにのぼった。
ほかにも、「賃上げ余力の低下」(21.2%)が2割台、「売り上げの減少」(17.8%)が2割近くとなるなど、マイナスの影響が上位を占めた。

一方で、プラスの影響をあげた企業の割合は低く、「売り上げの増加」(3.2%)や「利益の増加」(1.5%)はいずれも一桁台にとどまった。
業界別に全体を15ポイント以上上回った項目をみると、『農・林・水産』では、エネルギー価格上昇の影響が大きい一方で価格転嫁が難しい品目もあることなどから、「利益の減少」(64.0%、全体比+16.9ポイント)が全体を大きく上回った。『卸売』では「物流コストの上昇」(75.1%、同+16.6ポイント)が高く、商品の調達・配送機能を担う業態の特徴を反映した結果と考えられる。また、『製造』では「原材料・資材コストの上昇」(92.3%、同+15.8ポイント)が際立った。
企業からは、「エネルギー価格の上昇は、仕入価格や光熱費などのコスト負担を増やし、顧客の購買力低下を通じて売り上げを減少させる方向に働く。エネルギー価格が下がるか、安定して先行きが見通せるようにならなければ、業績面で厳しい状況が続くと考えている」(不動産[不動産管理])といった声が聞かれた。
また、「エネルギー価格自体だけでなく、包装資材価格は3割上昇し、原料費も大きく上昇している。来月から思い切って値上げする」(食肉小売[飲食料品小売])とのコメントも寄せられた。原材料・資材コストや物流費、光熱費の上昇による負担が広がるなか、コスト上昇分の価格転嫁の成否が今後の収益環境を左右する要因となりそうだ。
本調査の結果、エネルギー価格の上昇が自社の経営に『マイナス影響』を与えている企業の割合は89.4%と約9割に達した。業界別では、燃料費が主要コストを占める『運輸・倉庫』と、燃料などへの依存度が高い『農・林・水産』で、6割近くが「大きなマイナス影響」があると回答した。具体的な影響としては、「原材料・資材コストの上昇」が8割近くにのぼったほか、「物流コストの上昇」や「光熱費の上昇」などコスト負担の増加が上位に並んだ。また、それらコストの上昇分を販売価格へ十分に転嫁できず、「利益の減少」に直面している企業も5割近くにのぼった。
中東情勢の緊迫化が長期化する兆しに加え、各地で猛暑日や酷暑日が観測されるなか、電気料金をはじめとするエネルギーコスト負担のさらなる増加が懸念される。帝国データバンクが2026年7月6日に公表した「エネルギー価格上昇に対する企業の政策要望調査[1]」では、昨今のエネルギー価格上昇への対応として、中東情勢の悪化を受けて重要性が改めて浮き彫りとなった「安定供給の確保」のほか、「負担軽減」や「価格転嫁支援」を政府に要望する企業が多いことが明らかとなった。エネルギー価格の変動要因が不透明な状況は当面続くとみられるなか、政府によるエネルギー関連政策や支援策の強化が求められる。また、企業においても、価格転嫁に向けた仕入価格の見える化や省エネ設備の導入など、自社で取り組める対策を進めていくことが重要となろう。
<参考>企業からの声
- 価格転嫁ができない中小企業にとっては、大きな利益の減少につながっている(建設[建築工事])
- 燃料だけでなくナフサ関連材料の値上げについていけず、悩ましい限りである。この状況が続くと廃業もやむなしと考えている(建設[建築工事])
- エネルギー価格の上昇は事業活動に直接影響を及ぼすだけでなく、顧客の設備投資意欲にも悪影響を与えている(建設[はつり・解体工事])
- エネルギーや関連資材、人件費を含むあらゆる経費が増加しており、収益を圧迫している。中小企業は淘汰されざるを得ないのではないかと思うようになった(不動産[貸事務所])
- エネルギー価格は高止まりの傾向にあり、今後も需給逼迫や夏場の電力需要の増加が重なり、エネルギー価格の上振れリスク、コスト増への警戒が必要と考えている(飲食料品・飼料製造[調味料製造])
- エネルギー価格の上昇は、原材料・物流費の上昇、ひいては全体の物価上昇を引き起こし、一般消費者の買い控えを招き、景気を下押しする主要因となる(飲食料品・飼料製造[肉製品製造])
- エネルギー価格が上昇すると、資材、副資材、光熱費も上がってしまう。従業員の通勤手当にも影響が及ぶ(精密機械、医療機械・器具製造[医療用品製造])
- 物流費、流通加工費、資材費が大きく上昇し、経営を圧迫している。大手小売業が主要販路になるが、コスト上昇分全額の転嫁を受け入れてもらえず、非常に厳しい状況(繊維・繊維製品・服飾品卸売[衣服・身の回り品卸売])
- 燃料費や人件費の高騰を背景に、従来利用していた配送業者から一部地域で集荷を停止するとの通達があり、8月からは運賃の高い業者への切り替えを進めている。今後、集荷停止地域が拡大すれば、物流コストのさらなる上昇が懸念される(化学品卸売[化粧品卸売])
- ガソリン価格、印刷用の溶剤・洗剤・インキなど仕入価格が上昇している(機械・器具卸売[特殊産業用機械機器具卸売])
- 価格転嫁を行っても、その後さらに資材価格が上昇するため、適正な価格設定が難しい。適正価格を提示すると購入者が減少する(専門商品小売[花・植木小売])
- 店舗の電気代や空調費が増加しているほか、輸送・物流コストの上昇により仕入れ価格も上がっている。一方で、商品価格への転嫁は難しく、価格を上げれば客離れ、据え置けば利益減となるなど、経営を圧迫している(専門商品小売[紙・文房具小売])
- 燃料費の高騰は経営に大きな打撃を与えている。従来の運賃では採算確保が難しく、運賃改定が必要な状況だが、価格交渉は非常に困難であり、このままでは運送業界全体の経営悪化につながることを危惧している(運輸・倉庫[一般貨物自動車運送])
- 直接事業への影響は少ないが、従業員の家計への負担が大きくなり、賃上げへの圧力が大きくなると考える(情報サービス[ソフト受託開発])
[1]帝国データバンク「エネルギー価格上昇に対する企業の政策要望調査」(2026年7月6日発表)
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