実は今、国が1円玉を1億枚以上量産していることを知っていますか?この時代、現金を使う機会が減っていると思いきや、調べてみると、思わぬ事実が。
飲食店の店主たちは「現金だけの券売機に、変更しました」「キャッシュレスをやめることはあるかもしれないです」と口をそろえます。
キャッシュレス全盛の「令和」に起きた「小銭需要」。背景を徹底取材しました。
■令和初!11年ぶりに1円玉を量産
大阪造幣局のXに投稿された動画では、ピカピカの1円玉が次々に出てくる様子が。
財務省は今年度、一般に流通する1円玉を、令和では初めて、実に11年ぶりに量産することを発表しました。
その量は当初の予定からおよそ6倍となる1億3200万枚で、まさに「大量生産」に踏み切った形です。
■’89年の消費税「3%」導入では1円玉の不足が問題になったことも
かつて小銭は、生活に欠かせない存在でした。「3%」の消費税が初めて導入された1989年には、おつりが必要となり、1円玉の不足が問題になったこともありました。
翌年には、年間27億枚を超える量が製造されました。
一方、キャッシュレス決済が社会に浸透してきた今は1円玉を使う機会が減っているイメージもあります。
さらに専門家は、1円玉の製造はコスト面などにおいても、政府にとってマイナス面が大きいと指摘します。
【大阪経済大経済学部 高木久史教授】「1万円は、つくるのにどう考えても1万円かかっていない。1円硬貨をつくるにあたっては、政府は製造原価を公開していないが、どう考えても1円を超える価格がかかっている。本当は政府はあれは作りたくないはず」
■財務省「小銭の需要が堅調に生じている」小銭の利用者が意外に多い?
新たな1円玉をつくる必要性は低いようにも思えます。
しかし財務省の担当者は「100円以下の貨幣については、ここ数年、需要が横ばいになっている。小銭の需要が堅調に生じている」と話すなど、決して1円玉など硬貨の利用は減っていないと説明します。
そして、それが今回の大量生産にもつながったようなのです。
キャッシュレス化の中、一体なぜ、ここにきて、小銭が必要とされているのか。街の人に現金をどれぐらい使うか聞いてみました。
【80代姉妹】「現金ばっかり。歳やからわかれへんねん。“ピッ”とするの。現金しか信用しない。(現金は)たしかだわな、目の前に見えてるから」
【20代男性】「現金はほぼ持ち歩かないですね。カードとスマホだけです」
■小銭を使うと言えば…「カプセルトイ」買う人も普段は「非現金派」
財布にたくさんの小銭が入っていた人は…
(Q.けっこう入っていますね)
【40代父親】「子供のシールとか、“ガチャガチャ”してきたから」
【10代娘】「2つとりました」
若い世代を中心に人気で、いまでも大量の小銭が使われる場所=カプセルトイ専門店です。
大阪市内の店では、平日にも関わらず、朝から多くの人がひたすら100円玉を投入して“がちゃがちゃ”していました。
【親子】「3000円費やしました。(予算は)特に決めてないですね。もし無くなってまだ欲しいってなったら、両替しちゃう気がします」
【30代】「“シナモン”が2つと“マイメロ”が出ました。全種欲しいなと思って。(100円玉で)5000円は絶対あるはず。常にパンパンにしとかないと不安で」
ただ、訪れた人たちも、普段から「現金派」とは限らないようです。
「普段、小銭は持ち歩きますか?」と聞くと、「いや、ない。基本カードなので…カプセルトイにはまってから、小銭持ち歩くようになりました」という答えでした。
■「小銭需要」理由の1つに「セルフレジ」
では、より生活に近い場所での「小銭需要」はどうなのか。取材を進めると、スーパーマーケットで最近よく見かけるようになった、「セルフレジ」が理由の1つだとわかりました。
セルフレジでは現金を利用する人のため、おつりを切らさないよう、常に十数万円の現金を機械に入れておく必要があります。
この店では1つの有人レジに対して、2つのセルフレジが設置されているため、その分、現金も必要になります。
【食品館アプロ城東店 牛谷天音レジリーダー】「足りなくなったら補充する形になっています。1日に2~3回ぐらい補充します」
セルフレジで現金支払いをする人はどれくらいいるのか?平日の昼の時間帯で、取材班が調査してみると、意外にも、45人中21人と、半数近くの人が現金を使っていることが明らかになりました。
財務省の担当者も、「セルフレジが普及して台数が増えることで、おつり用の硬貨の量が多くなったと認識している」としていて、セルフレジの普及が、1円玉の大量生産を後押しした可能性がありそうです。
■飲食店で増えつつある「現金回帰」 手数料の負担大きく…
さらに取材を続けると見えてきたのは、キャッシュレス化の中で進んでいた「現金回帰」の動きです。
濃厚こってりラーメンが楽しめる大阪市天王寺区の「ラーメンフクロウ」は、元々キャッシュレス決済を導入していましたが、ことし2月「現金支払いのみ」に券売機を変更しました。
理由は「手数料」です。
【ラーメンフクロウ 福原康一オーナー】「1年でおよそ300万円ほど、手数料だけで発生していた。1000円のラーメン一杯につき、およそ30円ほど取られます」
キャッシュレス決済で負担することになる手数料が、物価高騰の中、店にとって死活問題となっていたのです。
【ラーメンフクロウ 福原康一オーナー】「ラーメンってやっぱり50円、100円値上げしただけで、『高くなった』っていう印象がつきやすい状態だと思うので。値上げをせずにどう利益を出せるかっていうところの戦いだった」
■決済会社の破産も「現金回帰」に拍車をかける
このような動きは、いま全国で広がる問題をきっかけに、加速する可能性もあります。決済代行会社「全東信」の破産手続きの開始です。
多くの飲食店などで売上の一部が入金されない状態になり、立ち飲み店の店主は不安を口にしました。
【立ち呑み大阪ふぐ太郎 島本一樹店主】「正直、怖さを感じました。売上として本来入ってくるものが入ってこなくなったりとか」
この店には直接の影響はありませんでしたが、今回の事態を受け、今後キャッシュレス決済を続けるかどうかを決めかねているといいます。
【立ち呑み大阪ふぐ太郎 島本一樹店主】「葛藤している部分はあります。手数料の面でもそうですし、(決済)会社がつぶれて入金がなくなってしまう(恐れがある)ことを考えると、現金でいただいているほうが店としては安心かなとは思います」
現金の価値を見直す動き。私たちにとって身近な「小銭」のあり方を変えるかもしれません。
(関西テレビ「newsランナー」2026年7月24日放送)
