『高校の授業料無償化』について、制度の目的は家庭の教育費の負担を軽減し、子どもが行きたい学校を選べるようにすることです。段階的に所得制限が撤廃され、この春からは私立の高校でも無償化がスタートしました。私立も無償となったことで『公立重視』と言われている熊本に、どんな変化が起きたのでしょうか。

私立・熊本マリスト学園高校では受験者増

2026年4月に私立の高校の入学式では、生徒から「物価も高いので私立に通えるのは嬉しい」や「公立重視と言われていたが、授業料無償化の話を聞いて、私立もいいよと言われた」、また保護者からは「選択の範囲が広がってよかった。とてもいい環境で勉強ができると期待している」などの声が聞かれました。

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これまでの所得制限が撤廃され私立高校でも無償化がスタート。熊本マリスト学園高校では2026年度の入試の受験者は764人と前の年度の1.5倍に増加。全体の倍率も2.6倍から4.1倍に上がりました。

熊本マリスト学園の光永幸生校長は「専願もかなり増え、奨学、一般入試も増えて、驚いた。そういう意味からすると、合格ラインも変わらざるをえなかった。選択肢が広がったぶん、受験生が増えたということ」と話します。

しかし、私立高校の経営状況にとってプラスというわけではないようです。光永校長は「補助金の問題もあり、定数管理は非常にシビアな問題」と話します。私学では定員を1割超えると補助金が減額されるため、受験生が増えても、定員を簡単に増やせるわけではないのです。

私立が『滑り止め』ではなく第一志望へ

では、2026年度の高校入試ではどのような変化が起きていたのでしょうか。総合学習塾・英進館は「一部の私立高校の難易度が上がった」と分析しています。英進館の執行役員の奥畑健太郎熊本ブロック長は「公立高校(の難易度)は例年通りで変わらないが、私立高校がことしは難しかったので、一番大きいところで偏差値が4上がっている学校もある。熊本の中でも上位4校くらいは偏差値が上がっている」と話します。

一方で『上位の県立高校の難易度に大きな変化はなく、人気は健在』と分析。しかし、今後については…。奥畑熊本ブロック長は「今後、無償が根付くと、特に来年は定員を削減する県立高校もあり、そうすると倍率が上がるので、選択肢として私立を入れておくというのが、家庭の方針としてピタっとくるかもしれない」と話し、「公立や私立で説明会もあるし自分に合うところを探して、本当に行きたい学校のために勉強するのが大事」とアドバイスします。

英進館の分析では『公立の滑り止め』ではなく「私立を第一志望にする受験生が増えた」ということです。受験生の選択肢が増えた一方で、私立高校の場合、授業料は無償でも、それ以外にも必要な費用がある。

私学の場合、『施設充実費』などが必要な場合があり、学校によって異なるので事前に十分調べることが大切です。

県立高校は『地域密着』で魅力化

ここまで私立高校の変化を見てきましたが、続いては県立高校です。2026年度の後期選抜試験の倍率は熊高、済々黌、第二、第一は高倍率ですが、全日制の平均倍率は0.88倍で50校のうち39校で定員割れでした。

このような状況の中『地域密着』をキーワードに魅力化を進める高校があります。葦北郡内唯一の高校県立芦北高校です。林業科の生徒たちが向かったのは近くの海。魚の産卵や成育の場となるアマモの苗を育てて海に植え付ける活動を行っています。

芦北高校林業科3年の土屋藍莉さんは「成長しているとうれしい」と話し、芦北高校では漁獲量の減少がきっかけで2003年、地元の漁協からアマモの再生を依頼されプロジェクトを発足。2026年で24年目です。

中には、熊本市から通っている生徒もいて、芦北高校林業科3年でアマモ班班長の北岡統世さんは「進路を調べている中で、芦北高校のアマモ班の活動を知り、興味がわいて芦北高校に進学した」と話し、土屋さんも「発表会や展示のときに、地域や研究者と話し、芦北の魅力とかアマモの魅力、芦北高校の魅力を伝えられることがいい」と話します。

3つの専門学科がある芦北高校。中でも林業科の2026年度の入試倍率は1.85倍でした。芦北高校の前島和也教諭は「アマモの保全に取り組みたい、研究したいという生徒が県外からも、熊本の遠方からも本校に入学を決意してくれる」と話し、芦北漁協・芦北支所の上塚末博支所長も「若い子が頑張ってくれていて、自分たちも頑張らないといけない」と地域の励みにもなっているようです。

子どもたちが将来の夢を描き、同時に、地域の未来も描けるように。県立高校に期待される役割は大きいようです。熊本県は、県立高校の魅力化を進めるため高校教育改革のモデルケースとなる拠点校として4校を申請。菊池農業高校、天草工業高校、熊本高校が採択されました。

熊本県の高校改革推進室の久多見長久室長は「公立も私立も公の教育を担う主体としては変わりない。公私が協調して熊本の未来を拓く人材を育成していければ」としています。

(テレビ熊本)

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