2021年の東京オリンピックから5年。「ホストタウン」として台湾陸上協会と縁を結んだ鹿児島県大崎町では、コロナ禍で一度は阻まれた交流が今もなお続いている。今年は次世代を担うユース世代も初参加。合宿中の選手たちが地元の小学校を訪れ、子どもたちとリレーで熱戦を繰り広げる場面では、校長先生が転倒しながらゴールするハプニングも飛び出し、会場は大いに盛り上がった。
ホストタウンとの出会い――2017年から始まった縁
大崎町と台湾陸上協会の交流が本格的にスタートしたのは2017年のことだ。大崎町が台湾陸上協会の「ホストタウン」に登録されたことがきっかけだった。
ホストタウンとは、東京オリンピックに出場する国や地域と全国の自治体が、文化や経済などの交流を図るために創設された制度である。大崎町では東京オリンピックに向けた事前合宿も予定されていたが、新型コロナウイルスの流行により中止を余儀なくされた。

当時の東靖弘町長はこう語った。「今回は(合宿中止の)結論を出したので、本当に残念なことだがオリンピックで活躍してくれることを祈っている」。その後もコロナの収束は遅れ、思うように交流ができないままオリンピックは閉幕。ホストタウンとしての役目も終わりかと思われた。

コロナを越えて――ナショナルチームが選び続けた大崎町
しかし、東京オリンピック終了後も大崎町と台湾陸上協会の絆が途切れることはなかった。2022年12月、両者は協力に関する覚え書きを締結、より一層の協力と発展を確認したのだ。
台湾陸上協会にとって、ナショナルチームの合宿先に大崎町を選び続ける理由は、まだある。台湾陸上協会の邱為榮さんによると、大崎町にある「大福ジャパンアスリートセンター大隅」の練習環境が、選手たちにとって非常に魅力的だという。
「練習環境が非常に良く、このトラックは長さがあり、我々のアスリートにとっても(コンディションを)整える素晴らしい場所」。さらに「交通、宿泊、食事の面でも全面的なサポートを得られて非常にありがたい」とも話す。大崎町側のきめ細かなサポートが、選手たちの信頼を積み重ねてきた結果といえるだろう。

今年はナショナルチームに加え、次の台湾陸上界を担うユース世代も初めて大崎町での合宿に参加した。7月7日から約100人の選手やスタッフが3週間の日程で滞在している。
子どもたちとの陸上教室――転倒した校長先生が会場を沸かせた
7月13日、合宿中の台湾の選手たちが大崎町の持留小学校を訪れた。児童たちに陸上教室を開くためだ。
選手たちは「アジアU-23の400mリレーの3位の選手です」と自己紹介しながら、子どもたちと一緒に体を動かした。そのあとはお待ちかねのリレー対決。選手・児童・先生が入り混じった混合4チームで競い合うという、コロナ禍では実現しなかった夢の対戦だ。

黄色いバトンを2位で受け取ったアンカーの校長先生は懸命に走り――転びながらゴール。会場は大盛り上がりとなった。
参加した児童はこう振り返る。「初めての経験でとても楽しかった。すごいなと思いました」「めっちゃ早かった。めっちゃ軽々と。オリャーって感じで」。台湾の選手も「とても子供たちがかわいくて積極的で楽しく過ごせました」と笑顔で語った。

バナナ1100本が届けたメッセージ
この交流には、思わぬ広がりも生まれている。東京に住む台湾の女性が大崎町と台湾陸上協会の交流を知り、台湾特産のバナナを町内の全小中学生分、約1100本プレゼントするというエピソードも生まれた。大崎町と台湾の絆は、当事者の枠を超えて人々の心を動かしている。
東京オリンピックという一つの機会から生まれたつながりが、コロナ禍の試練を乗り越え、今や地域の子どもたちの笑顔や思わぬ善意まで引き寄せている。大崎町と台湾の交流は、年々その絆を深めている。
【動画で見る▶今も続く大崎町と台湾陸上協会の絆 東京五輪”ホストタウン”がきっかけ【鹿児島】 】

