千葉県柏市の病院に入院していた当時75歳の患者の点滴に排せつ物(大便)を混入し殺害した疑いで、元看護師の女(51)が逮捕された。

関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」では元神奈川県警捜査一課長の鳴海達之氏が出演。このような事件は「聞いたことがない」と率直な驚きを示した。

現時点で判明していることや専門家への取材などから、事件の背景や今後の捜査のポイントを詳しく解説した。

■「体内に排せつ物を…聞いたことがない」

点滴への異物混入事件はこれまでも度々発生してきた。
過去には筋弛緩剤や消毒液、空気を注入するという事例があったという。

しかし今回の手口は、それらとは一線を画すものだった。

元神奈川県警捜査一課長の鳴海達之氏は、「体内に排せつ物を入れるなんて、ちょっと考えられないことですよね。排せつ物を入れるというのは聞いたことがない」と率直な驚きを語った。

■点滴に大便が“少量”でも混入すると死の危険が

近畿大学病院安全管理センター医療安全対策部の武本智樹准教授によると、点滴に大便が混入した場合、血管内に大量の菌が入り込み、細菌などで起こる炎症反応である「敗血症」を引き起こす。

その結果、多臓器不全で死に至る危険があり、急激に容体は変化し、少量でも死に至るおそれがあるということだ。

今回の被害者も、体調が急変した翌日に死亡した。
司法解剖の結果、死因は多臓器不全であり、体内から排せつ物に含まれる細菌が発見されている。

点滴に大便が混入した場合…
点滴に大便が混入した場合…
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■「担当ではない病室に複数回出入り」 同僚看護師が目撃

事件が発生したのは、ことし1月29日夜から30日朝にかけての夜勤中だった。

病院の会見によると、事件当日の夜勤では元看護師の女と准看護師Aの2名が、全32病床の病棟を担当していた。病棟は2人で半分ずつ受け持ち、元看護師の女が「リーダー看護師」として病棟全体の管理も行っていた。

被害患者の病室は元看護師の女の担当ではなかったが、「被害者の病状が心配だから立ち寄った」という理由で複数回病室に出入りしていたのを准看護師Aが確認していた。

そして30日午前4時過ぎ、准看護師Aが被害者の病室を巡視すると、被害者から「苦しい」という訴えがあった。

16日午後2時から行われた病院の会見
16日午後2時から行われた病院の会見

■あったはずの“滅菌カップ”が不自然に移動

病室に駆けつけた看護師長Bは、被害者の点滴ルートに異常を発見した。

通常は透明であるはずのチューブの内部が、血管に刺入されている先端付近まで不自然な色に変色していたのだ。

看護師長Bはすぐにチューブを写真撮影した後、新しいものに交換。抜いたチューブは滅菌カップに収納し、足元に置いた。

ところがその後、そこにあったはずの滅菌カップがなくなってしまった。

看護師長Bが元看護師の女に確認すると、「スタッフステーションに移動させた」と回答。
確かに、ステーションに滅菌カップはあったが、中に入っていたチューブの色は、自らが写真撮影したものとは異なっていた。

鳴海氏はこの経緯についてこう分析する。

鳴海達之氏:容疑者とすれば『これはまずい』ので、どさくさ紛れに滅菌カップを自分で運んで、証拠隠滅を図ったという見方になる。

■防犯カメラ・スマホ検索履歴が”状況証拠”に

警察の捜査では、複数の状況証拠が積み上げられていった。

まず、院内の防犯カメラには夜勤中の元看護師の女が被害者の病室に「約1分間」入る様子が記録されていた。

また、点滴チューブに付着した「茶色い付着物」の鑑定を行ったところ、排せつ物であることが判明した。

さらに、元看護師の女のスマートフォンの検索履歴には「便注入、死ぬか」といったワードが残されていたことも、捜査関係者への取材で明らかになった。

鳴海達之氏:逮捕するまでの間に期間もありましたが、容疑者に間違いないということは警察でかなり特定が進んでいます。

■「1分で出てくるはずがない」 鳴海氏が指摘する行動の不自然さ

鑑定や検索履歴という物証がある一方で、元看護師の女は「チューブに排せつ物を混入したことを否認します」と、排せつ物の混入を否認し続けている。

鳴海氏は、防犯カメラに映った「1分間」という時間にも注目する。

鳴海達之氏:病室の中で何が行われていたかという客観的な証拠はない。ただ、容疑者がなぜ担当外の病室に入っていったのか、1分の間でどんな医療行為があるのか。もし通常の業務であれば、1分で出てくるはずがない。

鳴海氏が指摘する行動の不自然さ
鳴海氏が指摘する行動の不自然さ

■「患者のおむつなどから便を入手することは可能」

元看護師の女はすでにこの病院を退職している。

病院側は会見の冒頭、病院長が20秒以上にわたって深く頭を下げ、遺族や患者への謝罪の言葉を述べた。

また、現役看護師への取材によると、「患者のおむつなどから便を入手することは可能であり、看護師であれば点滴ルートへの混入も技術的には可能だ」とされる。宿直の際に患者と二人きりになる状況もあるということだ。

容疑者が否認している中、警察は動機の解明など捜査を進めている。

(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2026年7月16日放送)

16日午後2時から行われた病院の会見では病院長らが20秒以上にわたって深く頭を下げた
16日午後2時から行われた病院の会見では病院長らが20秒以上にわたって深く頭を下げた
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