サイバー攻撃によるニチレイのシステム障害の影響は、外食産業やスーパー、そして私たちの食卓と、あっという間に拡大しました。

ニチレイは倉庫会社としての一面もあり、物流の面からさまざまな企業に影響した形です。

「関係ない」と思っていたというキムチ製造会社も、運送会社がニチレイの冷凍倉庫を使っていたため、冷蔵キムチの製造を一時中止に。

ニチレイは17日から業務を再開すると発表し、影響の縮小が期待されますが、専門家は「1カ月以上影響するのでは」と予想。

さらに、トラックドライバーの残業規制などで物流のコストが上昇する中で、大型の倉庫を所有するニチレイなどへの依存度が高まり、1社が受ける被害が拡大しやすくなっているという側面を指摘しました。

■大手外食チェーン「食材の調達が困難になった」と臨時休業や営業時間短縮

14日、突然飛び込んできた、大手外食チェーン「ケンタッキー・フライド・チキン」の発表。

運営する日本ケンタッキー・フライド・チキンが、「食材の調達が困難になった」ことを理由に、全国の一部店舗で営業が流動的になり、臨時休業や営業時間の短縮をすると発表したのです。

これを皮切りに、続々と、飲食チェーンや食品メーカーなどに影響が広がり、「551HORAI」を運営する蓬莱でも、15日、ちまきの入荷を停止していると発表。

16日から販売が順次再開されましたが、多くの企業が対応に追われることになりました。

■「ニチレイ」へのサイバー攻撃

一体、何が起きたのか、その原因は「ニチレイ」へのサイバー攻撃です。

冷凍食品大手のニチレイは7月13日、「システム障害が発生し、冷凍食品の出荷業務や、倉庫の出し入れに影響が生じている」と発表。

さらに15日、その原因がサイバー攻撃を受けたことであると明かしました。

しかし、なぜニチレイへのサイバー攻撃が、ここまで多くの企業に影響を与えることになったのでしょうか?

■ニチレイの別の一面「低温物流の大手」

物流の専門家は、「冷凍食品」のイメージが強いニチレイが持つ、“別の一面”が背景にあると指摘します。

【NX総合研究所 小松隆専務取締役】「(ニチレイは)独自に物流網や倉庫を持って、輸送用の車両を抱えている。実際に委託されてる会社が4~5000社に上るのではないか」

実は、ニチレイは国内最大規模の冷凍・冷蔵食品の物流網を持つ「低温物流の大手」でもあります。

グループが持つ倉庫にはニチレイ以外の企業の商品も多数保管されていて、そのシステムに障害が発生した結果、あらゆる企業に荷物が届かなくなる事態となったのです。

【NX総合研究所 小松隆専務取締役】「ケンタッキーが(食材の)調達をして、保管場所としてニチレイを使っているというところかと。

(大きな場所だと)1つの物流センターで何十万点というアイテムがある。

『システムが見えなくなりました』、『オーダーが紙で来ました』となれば、(倉庫の)『どこにいくつある』というのが、見えなくなってしまうと、(商品を)取りに行くこともできなくなってしまう」

そのため、専門家は、「この影響は大手飲食チェーンだけにはとどまらない」と指摘します。

【NX総合研究所 小松隆専務取締役】「食卓に上がる加工品とか生鮮品が、1週間ぐらいで入らなくなる形もありえなくはない」

■ニチレイの商品はまだあるけど…一部メーカーの商品が入荷未定 消費者に広がる不安

これは大手メーカーだけでなく、まさに私たちの「食卓の危機」に直結する問題です。

16日、大阪市内のスーパーに行ってみると、ニチレイの商品はまだ在庫があるようですが、肉製品のコーナーでは、ミートボールなどいくつかの商品がなくなっていました。

実は、一部メーカーの商品が、ニチレイグループの物流サービスを使って運ばれていて、入荷未定となっていたのです。

【フレッシュマーケットアオイ昭和町店 石上一隆店長】「例えばこの商品(ミートボール、チキンナゲット)、あすが納品日ですが、入荷があるかないか全く分からない。よく売れるハムやウィンナーもあるので、なくなるとお客さんにも影響が及ぶ」

買い物客の間でも、不安の声が聞かれました。

【買い物客】「お父さんのお弁当をお母さんと一緒に作るけど、メインがお弁当にいるじゃないですか。唐揚げがないと困る」

【買い物客】「夏場お弁当が傷まないように、自然解凍のおかずとかは結構買います。子供はこだわりがあったりするので、『これじゃないとダメ』とか言うので困ります」

■「関係ないと思っていた」 倉庫使えず製造を中止せざるを得ない会社も

さらに取材を進めると、「ニチレイショック」の余波が想像を超えて広がる現状も見えてきました。

1日あたり、10トンを超えるキムチを製造する高麗食品の黄成守工場長は「全く関係ないと思っていた」と話しますが、実際には大きな影響を受けています。

製造した冷凍用キムチは、運送会社を通じて、ラーメンチェーン店などに出荷される予定でしたが、ニチレイの冷凍庫を利用する顧客から“すでに納品されたキムチが動かせない”と連絡があり、出荷を中断している状態だということです。

倉庫が使えないため、冷凍用のキムチは14日から製造を中止せざるを得なくなりました。

一方、ニチレイは、外部のセキュリティ会社と安全対策を講じた上で、17日から順次業務を開始する予定だと発表。

こちらの工場でもあす=17日から復旧のメドが立ったそうです。

【高麗食品 黄成守工場長】「長引くとダメージはかなり大きくなるんじゃないかと思いましたけど、最小限で被害は済んだと思います」

■影響は給食にも「一番大変なのは栄養士」

その影響は「給食」にも。

兵庫県姫路市で高齢者施設などに弁当給食を提供している企業では、業者からの納品がストップし、一時、メニューを変更せざるを得ない状況となりました。

【ひでかつ給食 代表】「一番大変なのは栄養士。色んな業者に問い合わせて、同等の商品があるか、休みなくひっきりなく電話して。早い復旧でお盆どうなるかなと思っていた」


■影響は「1カ月以上」 日本の物流が抱えるリスクは残る

ただ、物流の専門家・NX総合研究所・小松氏は、「システム復旧のスピードによるものの、1カ月以上は物流に影響が残るのではないか」と指摘。

さらに、今回の「ニチレイショック」は、日本の物流が抱える、根源的な課題を浮き彫りにしたと説明します。

トラックドライバーの残業時間を規制するいわゆる「2024年問題」などで物流のコストは近年上昇し、その影響で、ニチレイのような大型倉庫を持つ企業に配送などを委託するケースが増加しました。

そのため、1つのサイバー攻撃が、多くの企業に波及しやすい構図となっていて、今後もこうしたリスクは残り続けるというのです。

【NX総合研究所 小松隆専務取締役】「1社だけだと多額の投資になってしまうんで、それ(倉庫)をシェアしていく動きはやっぱり加速していく。システムが使えないとなると、命綱が切れるような形なのかなと思います」

日本の物流の危うさを示した「ニチレイショック」。

食卓への影響は、まだしばらく続きそうです。

(関西テレビ「newsランナー」2026年7月16日放送)

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