北海道の美容室を支える専門商社「菊地」。創業から60年、ヘアカラー剤やパーマ液などの商材提供にとどまらず、技術教育や経営サポートを通じて、業界の成長に貢献してきました。地域に根差した美容ディーラーとして、どのような価値を提供しているのか。代表取締役社長の菊地大輝さんに、北海道の美容業界の未来と経営、そして地域活性化への取り組みについて聞きました。 

美容業界との出会いと、家業を継ぐまで

――美容ディーラーの仕事内容と取引規模を教えてください。
 「美容室や理容室、ネイルサロン、美容専門学校に向け、業務用の薬剤から施術椅子、シャンプー台、小物類まで幅広く扱う卸売会社です。創業から今年で60期を迎え、道内の理美容室の約半数とお取引をいただいています。一般販売はしていませんが、皆様が普段行かれる美容室のサービスには、当社が届けた商品が間接的に使われているケースも多いはずです」

――幼少期はどのように過ごしましたか。
 「札幌で育ち、小学校から高校まで野球一筋でした。小学校の授業で流通の仕組みを学び、家業が卸売業だと認識しましたが、当時は『家業を継ぐ』という感覚はなく、公務員のような堅い仕事に就きたいと思っていました」

――大学卒業後はどのようなキャリアを歩みましたか。
 「就職活動の際に美容メーカーで流通の話を聞き、その時にディーラーの重要性を知りました。大学卒業後はそのメーカーへ就職し、大阪で4年間営業を経験しました。ディーラーの動向を外から見る経験は、自分ならこうしたいというインスピレーションを養う素晴らしい期間でした」

――家業に戻るきっかけは何でしたか。
 「大阪での仕事は充実していましたが、帰省した際に父から一緒に働かないかと誘われました。当時は業界再編やM&Aが活発な時期で、父は会社の将来を考えていたのでしょう。外から家業を見ていた私は、長年のお客様との関係はありつつも、新しい取り組みや新規顧客の開拓が不足していると感じていました。それを父にストレートに伝えた時は衝突もしましたが、建設的に話し合うことで、徐々に形にしていきました」

家業の革新と社長への継承

――会社で最初に取り組んだことは何ですか。
 「札幌駅前に事務所とスタジオを設立しました。理美容業界は技術練習やコミュニケーションなど教育が欠かせません。当時、東京のトレンドをリアルタイムで学べる場が不足していたため、実際に学べる場を作りました。年間で約2,000名もの美容師さんが足を運んでくれる場所となり、情報を得ていただけるようになりました」

――どのようにして社長に就任したのですか。
 「3年前に社長に就任しました。元気なうちに並走しながら引き継ぎたいと考え、何度も継承を求めました。当時は衝突もありましたが、自分自身も新しいチャレンジを続け、お客様や取引先メーカーからも後押しをいただき、最終的に交代を実現しました」

――経営者として、特に意識したことは何ですか。
 「『美容を通じて北海道を元気に』というミッションを掲げました。60年続いてきた会社を次につなげるため、自分たちの会社だけが良くなるのではなく、業界全体を盛り上げる決意をしました。最初に取り組んだのは、道内の理美容専門学校生のリクルート支援です。専門学生の就職先は半分が道外へ流れてしまうという現状があり、地元のサロンと学生をつなぐ就職イベント『THE BEAUTY』を始めました。優秀な人材を地元に残す循環を作ることが、業界全体の成長につながると信じています」


美容ディーラーとしての介在価値

――美容ディーラーとしての存在価値をどう考えていますか。
 「商品の提供だけならネット通販の方が早いかもしれません。だからこそ、当社には技術を伝える教育部やセミナー、物流倉庫の新設など、ネットにはない付加価値を積み上げています。『なくなったら残念だね』ではなく、『なくなったら困る会社』をつくることが今の目標です。介在価値を高める戦略を考えるのは、非常に面白い仕事です」

――地域社会とのつながりについても新しい取り組みがありますね。
 「業界をより多くの人に知ってもらうために、地域に根付いているスポーツとの連携を強めています。昨年は北海道日本ハムファイターズとコラボし、美容師監修のハンドクリームを開発しました。水や薬剤に触れることの多い美容師さんの悩みから生まれたこの商品は、多くの方に手に取っていただきました。こうした発信を続けることで、業界の認知度や地位を向上させていきたいと考えています」

――ボスとして、大切にしていることは何ですか。
 「社員には仕事のスキルだけでなく、人間的な成長を求めています。社会人になると成長実感を感じにくくなりますが、新しいチャレンジや苦手なことに取り組むことで、昨年の自分より一歩成長してほしいと伝えています」


美容の力で広がる地域の可能性

――今後の展望について聞かせてください。
 「北海道は日本の社会問題が先に起きるエリアだと感じています。地方ではお店がなくなることもありますが、美容室には多くの方が定期的に通われます。美容師さんが持つ情報の価値は非常に高いのです。例えば、生活環境や健康面の話から、医療機関と連携し、安否確認や生活サポートの一部を美容室がつなぐことができれば、美容を通じてやれる領域はもっと広がる。北海道のサロン業界がそんな存在になることを、今すごくワクワクしながら想像しています」

 北海道の活性化を目指すボス達と北海道の未来と経営を楽しく真剣に語り合うUHB「#BOSSTALK」(ボストーク)。廣岡俊光キャスターがBOSSの本音に迫ります。

北海道文化放送
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