フランス・パリ郊外で9日、ヨーロッパ最大級の日本文化イベント「Japan Expo Paris 2026」が開幕した。12日までの4日間の日程で開催されるこのイベントは、アニメやマンガ、ゲーム、食文化など日本文化を幅広く発信する一大イベントで、2026年で25回目を迎えた。開幕中には20万人以上の来場者が見込まれる。

カプセルトイに親子で夢中になる姿も見られた
カプセルトイに親子で夢中になる姿も見られた
この記事の画像(9枚)

会場には日本アニメのキャラクターに扮したコスプレイヤーだけではなく、多くの親子連れの姿も目立っていた。

世代を超えて浸透する日本カルチャー

日本のアニメやマンガを楽しむのはもはや若い世代だけではない。子どもと一緒にブースを回る親の姿も多く、日本のポップカルチャーは世代を超えてフランス社会に浸透しつつある。

コスプレを楽しむ男性に話しを聞くと、日本文化の受け止められ方にも変化が起きているという。

“日本”の捉え方にも変化が起きていると語る
“日本”の捉え方にも変化が起きていると語る

「日本のファンやオタク的な面は、フランスでは以前少し偏見がありました。でも今では親が、子どもが見ているアニメを『私も大好きだ』と言うようになっています」

変わったのはファンの「熱量」ではなく、日本文化が社会全体に受け入れられるようになったことだという。今では日本のポップカルチャーは熱心なファンだけのものではなく、大衆に広く受け入れられる存在となった。

日本企業の挑戦

日本のポップカルチャーの祭典という顔を持つ一方、ビジネスの見本市としての顔も持つこのイベント。多くの日系企業が出展し、日本独自の強みであるIP=知的財産の海外市場開拓を狙う一つの場にもなっている。

MIXIは、世界累計利用者数6500万人を超えるゲームアプリ「モンスターストライク」のグローバル版「STRIKE WORLD」を出展。現在インドで展開するグローバル版をヨーロッパのユーザーにも体験してもらい、新たな海外市場開拓につなげたい考えだ。

来場客「普段できないキャラクターの組み合わせを試せるのは楽しみ」との声も
来場客「普段できないキャラクターの組み合わせを試せるのは楽しみ」との声も

MIXIは今後、モンスターストライクがこれまで数多くのアニメやゲーム作品とコラボレーションしてきた強みを生かし、「STRIKE WORLD」を日本IPの魅力を発信する「ショーケース」として活用する方針だ。

MIXI 渉外グループ 白井聡明マネージャー
MIXI 渉外グループ 白井聡明マネージャー

MIXI 渉外グループの白井聡明マネージャーは 「日本IPの強みは作品数の多さです。たくさんの作品やキャラクターがあるので、自分の好きなものを見つけることができる。それが日本IPの大きな魅力だと思います」と話す。

一方で課題もあるという。白井さんは、「IPでそれぞれ権利が分かれているため、海外展開の際には様々な権利確認が必要になります。もっとスムーズに展開できる仕組みがあれば、日本の作品をさらに海外へ届けられると思います」と指摘する。MIXIは今後、ゲームを通じてファン同士が「熱量」を共有するコミュニティーを形成し、日本IPの持続的な成長につなげたいとしている。

「生活の中にIPの浸透」さらなる一手

また、様々な玩具やフィギュアを扱うBANDAIブースも多くの来場者でにぎわっていた。特に「たまごっち」ブースには多くの親子連れが訪れ、親子二世代で商品を見入る姿があった。

親子、カップルなど様々な来場客が訪れる
親子、カップルなど様々な来場客が訪れる

バンダイフランスの岩田航史社長は、日本IPの強みについて、世代を問わず長年にわたる継続的な展開によって、親子二世代などで楽しめる点を挙げる。

バンダイフランス 岩田航史社長
バンダイフランス 岩田航史社長

岩田社長は「ガンダムやたまごっちなど、昔から続いている作品が多くあります。親世代と子ども世代が一緒に楽しめることは、日本IPならではの強み」と語る。

一方で、海外に進出する企業にとって複雑な権利関係や各国ごとの文化・言語への対応が課題だという。「海外進出に積極的な権利者もいれば、そうでない権利者もいて温度差があります。やりたいことができる場合もあれば、難しい場合もある」と現状を説明する。そのうえで、今後の成長のカギは、日本国内のように生活の中でIPと接する機会を増やすことだと分析している。

日本IPは「輸出」から「市場を作る側」へ

こうした日本IPの海外展開について、Japan Expo共同創設者のトマ・シルデ氏は、日本がすでに世界有数のIP大国になっていると評価し、企業の挑戦が続く中、日本IPの未来について独自の視点を示す。

Japan Expo共同創設者のトマ・シルデ氏
Japan Expo共同創設者のトマ・シルデ氏

シルデ氏は、日本のアニメやマンガがすでにフランス社会の日常の一部になっていると評価したうえで、今後の焦点は「日本IPを広げること」ではなく、「日本が世界市場をどうリードするか」に移りつつあると指摘する。

その例として挙げたのが韓国のK-POPだ。トマ氏によると、K-POPは日本市場で成功した後、韓国が積極的に世界市場へ展開したことでグローバルな存在となった。一方、当時のJ-POPは国内市場やアジア市場が中心で、世界展開への動きは限定的だったという。

「消費者は国の違いをそれほど意識していません。好きなものを楽しんでいるのです。市場のニーズに合わせて展開することが重要です」

さらにシルデ氏は、日本が世界最高レベルのIPと創造力を持っていることは疑いようがないとした上で、本当に必要なのは能力ではなく「意志」だと強調する。

世界では今、日本のアニメやマンガに影響を受けたクリエイターや作品が次々と生まれている。しかし日本は、それらを競争相手とみなすのではなく、日本を中心とする大きなエコシステムとして取り込むべきだと提言する。

消費者が求めるのは「良い物」
消費者が求めるのは「良い物」

「日本はすでにリーダーです。しかし今後もリーダーであり続けるには、世界中の人たちが日本を中心に集まるようなルールや市場を作っていく必要があります」

また、日本にはまだ海外に出ていない中堅IPや地域発のコンテンツが数多く眠っていると指摘。巨大IPだけでなく、そうした作品群が世界へ出ていくための環境を整えることが、日本コンテンツ産業全体の成長につながるとの考えを示した。

会場で、熱狂の先に見えたのは、日本IPの人気そのものではなく、その人気をどう世界規模の市場へ育てていくかという次の課題だった。日本IPの強みを生かしながら、世界中のクリエイターやファンを巻き込む仕組みをどう構築できるのか。その可能性を探る挑戦はすでに始まっている。
(FNNパリ支局長 陶山祥平)

陶山祥平
陶山祥平

FNNパリ支局長
2011年入社以来、ENGカメラマン、政治部(総理官邸・野党担当)、社会部(警視庁担当)、番組ディレクターを歴任。平昌・北京五輪では現地取材、「イット!」プログラムディレクター、演出などを務め2025年8月より現職。
放送や記事を通して、何か気づきや共感が見つかるような瞬間が生まれたらうれしいです。