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プレスリリース配信元:マンションリサーチ株式会社
―― 駅別在庫分析で見えた「実需が支える街」の強さ
東京都内における最寄り駅別の50平方メートル 以上の中古マンション在庫の推移を調査しました。
前回の記事では東京都23区全体の在庫推移について分析しましたが、区単位で市場を見るだけでは、各エリアが持つ個性や需要構造の違いまでは十分に把握することはできません。
同じ区内であっても、駅が一つ違うだけで購入層や価格帯、供給量、流動性は大きく異なるためです。
そこで今回は、東京都内の各駅を最寄りとする50平方メートル 以上の中古マンションを対象に、在庫の増減傾向を可視化しました。駅単位まで細分化することで、これまで見えていなかった市場の特徴や、今後注目すべきエリアが浮かび上がってきます。
以下の地図では、各駅周辺における中古マンション在庫の推移を色分けしています。

出典:Google mapを福嶋総研が加工
- 赤プロット:在庫減少傾向(流動性が高い)
- 黄プロット:在庫横ばい(流動性は標準的)
- 青プロット:在庫増加傾向(流動性が低下)
在庫が減少しているエリアは市場に供給されても比較的短期間で成約していることを示し、反対に在庫が増加しているエリアは、売り物件が積み上がり販売期間が長期化している可能性を示しています。
山手線内側では在庫が積み上がり 流動性が低下

出典:Google mapを福嶋総研が加工
地図を見ると最も特徴的なのは、山手線内側を中心とした都心部で青プロットが非常に多い点です。港区、千代田区、中央区をはじめ、都心の主要駅周辺では大型マンションの在庫が増加し、市場全体の流動性が以前より低下していることが分かります。
この背景には、ここ数年続いた急激な価格上昇があります。
都心部では海外投資家や富裕層、法人による購入需要に加え、短期転売を目的とした売買も活発化しました。その結果、実需だけでは説明できないほど価格が押し上げられ、高額帯マンションが数多く供給される市場へと変化しました。
価格上昇局面では「今買わなければさらに高くなる」という期待が需要を呼び込みます。しかし一定水準を超えると購入できる層は急速に限定されます。供給は続く一方で購入できる実需層が減少するため、市場には徐々に在庫が積み上がる構造となります。
特に広面積帯の大型住戸は販売価格も高額になりやすく、住宅ローン金利の上昇や購入コストの増加も重なったことで、以前ほどスムーズに売買が成立しなくなっていることが在庫推移からも読み取れます。
つまり、在庫増加は単純に人気がなくなったことを意味するのではなく、「価格上昇によって市場参加者が限定され、流動性が低下した状態」と考える方が実態に近いでしょう。
墨田区が示す健全な実需マーケット
一方で、非常に印象的だったのが墨田区です。
出典:Google mapを福嶋総研が加工
墨田区では、多くの駅周辺が黄色または赤色となっており、在庫は横ばい、もしくは減少傾向を維持しています。これは市場の流動性が非常に安定していることを意味しています。
墨田区は都心へのアクセスが良好でありながら、都心部ほど極端な価格高騰は見られません。そのため、購入層の中心は投資家ではなく、実際に居住するファミリーや共働き世帯などの実需層です。
実需主体の市場では、価格は所得や住宅ローン返済能力に支えられるため、過度な価格変動が起こりにくく、供給と需要のバランスも比較的安定します。
投資マネーの流入が少ないことは一見すると派手さに欠けるようにも見えますが、市場という観点ではむしろ健全性の高さを示しています。
価格だけが先行する市場ではなく、「住みたい人が購入する市場」が維持されていることは、中長期的な安定性という意味でも評価できるポイントと言えるでしょう。
城東エリア全体に広がる実需の強さ
この傾向は墨田区だけではありません。江戸川区、葛飾区、足立区など城東エリア全体でも在庫は減少傾向を示す駅が多く確認されました。
近年、東京都心ではマンション価格が急激に上昇したことで、予算面から都心購入を断念する世帯も増えています。その結果、交通利便性を維持しながら比較的価格が抑えられている城東エリアへ需要がシフトしている可能性があります。
また、城東エリアは生活利便施設や教育環境も充実し、ファミリー層との相性も良い地域です。実際に市場データを見ても、価格上昇局面であっても一定の成約件数が維持されており、実需によって市場が支えられている様子がうかがえます。
市場全体が二極化する中でも、実需を基盤とするエリアは流動性を維持しやすいことを今回の分析結果は示しています。
大森駅に見る「隣接駅へ需要が波及する現象」
今回、駅単位で分析したことで特に興味深かったのが大森駅です。
出典:Google mapを福嶋総研が加工
大森駅は、大規模再開発やタワーマンション開発が続き、大きく価格上昇した大井町駅に隣接しています。
大井町駅周辺では再開発への期待や新築供給によって価格が大きく上昇しましたが、その反面、高額帯マンションを中心に在庫が増加し、流動性の低下も確認されています。
一方、大森駅では逆に在庫が減少しています。
この違いは非常に興味深く、大井町駅で価格が上昇した結果、「同じ沿線で利便性が高く、より割安な大森駅」を選択する購入者が増えている可能性があります。
いわば需要が隣接駅へ波及している状態であり、価格上昇局面ではよく見られる市場の特徴でもあります。
再開発エリアそのものが成熟期に入り価格が高止まりすると、その周辺駅へ需要が移転する現象は過去にも数多く見られてきました。
今後も大規模開発が進むエリアでは、開発駅だけでなく、その周辺駅の在庫や流動性にも注目することで、新たな需要の変化をいち早く把握できるかもしれません。
今回の駅別分析は、単なる価格推移だけでは見えてこない市場構造の変化を示しています。在庫の増減は、価格だけでなく、そのエリアにどのような需要が存在しているのかを映し出す重要な指標です。今後は価格だけではなく、流動性や在庫推移を組み合わせて分析することで、より本質的な中古マンション市場の姿が見えてくるでしょう。
筆者プロフィール

福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社
データ事業開発室
不動産データ分析責任者
福嶋総研
代表研究員
福嶋総研代表研究員。早稲田大学理工学部卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、
建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。また大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供する。
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【マンションリサーチ株式会社について】
マンションリサーチ株式会社では、 不動産売却一括査定サイトを運営しており、 2011年創業以来「日本全国の中古マンションをほぼ網羅した14万棟のマンションデータ」「約3億件の不動産売出事例データ」及び「不動産売却を志向するユーザー属性の分析データ」の収集してまいりました。 当社ではこれらのデータを基に集客支援・業務効率化支援及び不動産関連データ販売等を行っております。
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代表取締役社長: 山田力
所在地: 東京都千代田区神田美土代町5-2 第2日成ビル5階
設立年月日: 2011年4月
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