高知市の介良小学校で水泳の授業を受ける子どもたちへ真剣なまなざしを向ける一人の男性。彼は学校の先生ではなく、救命救助のプロフェッショナルである現役の消防士である。
悲しい事故を二度と繰り返さないために
2026年6月から高知市の小学校で始まったのは、消防士による水泳授業の監視体制。この取り組みのきっかけとなったのは2024年7月、高知市長浜小のプール事故。事故では、当時4年生だった男の子がプールの授業中に溺れて亡くなった。
事故の翌日、当時の119番通報を耳にした高知市消防局総合指令課の武西貴浩さんは、その内容が頭から離れなかったという。自身も小学生の父親である武西さんは「人ごととは思えず、心苦しく思った」と振り返る。
そして、自分たちに何かできることはないかと考え、水泳の授業に消防士を配置することを高知市に提案したのだ。
救命のプロがもたらす安心感
武西さんの提案は市教育委員会との協議を経て実現し、現在では市内の33校を対象に、可能な範囲で消防士が出向いている。
学校側もプールサイドにAEDを設置したり、複数人で監視を行ったりするなどの対策をとっているが、消防士の存在は心理的にも大きな安心感をもたらしている。
高知市中央消防署の井上大介消防主査は、「生徒の数を両側しっかり把握して、要所要所で人数を確認しながら、浮いていない子がいたら気にして安全確認している」と語る。
立ち位置を小刻みに変え、手からは決してホイッスルを離さない。万一の事態には瞬時に授業を中断し、救助に当たるためである。人員不足に悩む教育現場において、独立して安全監視を行う専門家の存在は非常に心強い。
未来の命を守るための仕組みづくり
救急車やドクターカーが到着する前に、現場に消防士が一人でもいれば迅速な救助と救命活動を開始できる。
高知市消防局では今後、救急車がスムーズに校内へ入れるような仕組みづくりも検討していくという。
