皆さんは「エアコンの2027年問題」という言葉を耳にしたことがあるだろうか。
国の省エネ基準見直しに伴い、2027年以降、もしかすると私たちが手頃な価格で買える格安エアコンが市場から消えてしまうかもしれない。
これからの時期に大活躍をする家電だけに、今後の動向が気になるところである。高知市内の家電量販店などの現場を取材し、その実態に迫った。
売り場に積み上がる“成約済みの山”と格安モデルの争奪戦
高知市知寄町にあるベスト電器・高知本店。店内に一歩足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは「エアコンの2027年問題」を受けて設置された特設コーナーと、注意を促す赤いポスターだ。
売り場の脇には、すでに成約済みとなったエアコンの箱が幾重にも高く積み上げられている。同店舗によると、4月から来店客への積極的なPRを始めており、比較的手頃な価格帯の商品を中心に紹介して対応にあたっているという。
現在、店頭に並んでいる6畳用のエアコンの価格帯をみると、プライベートブランドであれば税込みで5万円台、その他のブランドでも7万円台から8万円台の商品が並ぶ。
こちらの店舗では、先週末のエアコン全体の売り上げが前の年の同じ時期と比べて2割から3割も増えており、特に安い商品を求めて訪れる人が多いそうだ。
ベスト電器高知本店の笹岡大輔副店長は、現在の流通の現状について次のように危機感を募らせる。
「全国的にも今、スタンダードモデルがよく売れている状態なので、メーカーの在庫も非常に少なくなってきていると思います。早めに買い替えをおすすめしている」
実際に一部のメーカーでは、注文から入荷までに数カ月かかるケースも出てきており、売り場では在庫の確保にも非常に苦労しているのが実態だ。
各量販店の間で取り合いのような状態になっているのかという問いに対し、笹岡副店長は「そういう状態にはなっています。非常にそういう状態になっています」と答え、現場の切迫した状況を明かした。
「2027年問題」の背景と省エネの費用対効果
ここで、改めてエアコンの2027年問題について整理しておく。国は2027年4月から、家庭での光熱費削減や脱炭素への取り組みを進めるため、エアコンの新たな省エネ基準を導入する。これは現行の基準よりも大幅な引き上げとなるものだ。
基準が厳しくなることで、製品の省エネ性能は向上する。資源エネルギー庁の試算によると、6畳用エアコンで2027年度基準を満たした製品の場合、現行の2010年度基準の製品よりも年間で2760円の電気代削減効果があるという。さらに広めの14畳用であれば、年間で1万2600円もの省エネ効果が期待できるそうだ。
新しい基準を満たさない低価格帯のエアコンが、2027年以降すぐに販売禁止になるわけではない。しかし、複数の大手メーカーは取材に対し、今後、新基準を満たした製品を優先して販売・製造していく方針を示している。
ただ、省エネ性能をそこまで引き上げるためには製品に高い機能が求められるため、今後の新型モデルは本体価格が数万円程度高くなる可能性があるのだ。これが、格安エアコンがなくなってしまうのではないかと騒がれている理由である。
先を見据えて2025年から動いたホテル経営者
この価格高騰の波を見据え、すでに具体的な自衛策を講じている経営者がいる。高知市内でホテルを経営する、高知ターミナルホテルの山本佑樹社長だ。山本社長は2027年問題の存在を受け、なんと2025年から計画的に準備を進めてきたという。
量販店の店頭で取材に応じた山本社長は、エアコン更新の経緯をこう語る。
「家電量販店に担当の方がいて、前々からエアコンが2027年に高くなるというのを受けて徐々に入れ替えをしています」
ホテルの客室のうち、すでに30台近くを新しいエアコンに入れ替え終えており、残り約10室のエアコンを順次更新していく予定だ。ホテル業において、空調のトラブルは営業上の死活問題につながる。
「ホテル業なので、使えないとお客さんが一番お困りになる。これから暑くなってくるので、エアコンの効きが悪いだとか、使えないとなるともう泊まれないということになってくるので、価格も高くなるし入れ替えようかなという感じです」
値上がり前のコストを抑えられる時期に、計画的に設備投資を進める山本社長の姿勢は、一般家庭の買い替えのタイミングを考える上でも大きなヒントになるだろう。
最大3万円を助成 省エネ家電への「切り替えキャンペーン」始動
買い替えを検討している高知県民にとって、見逃せない追い風もある。高知県は6月から、エアコンなど省エネ家電への切り替えを後押しするため、購入金額の一部を補助するキャンペーンを開始している。
対象となるのは一定の省エネ性能を満たしたエアコンや冷蔵庫などで、購入内容に応じて最大で3万円の支援が受けられるという非常に手厚い内容だ。
高知県環境計画推進課の遠山忍課長補佐は、このキャンペーンの意義とエアコン購入の大切さを次のように呼びかける。
「2026年の夏も全国的に平年より気温が高くなる見通しですので、熱中症対策としてのエアコンの購入にもつなげていきたい」
県としても、単なる省エネ推進だけでなく、近年の猛暑を乗り切るための熱中症対策、すなわち命を守るための防衛策として積極的なキャンペーンの利用を促している。
家計の事情と削減効果を見極め、後悔のない選択を
国の新しい省エネ基準の導入を控え、2026年の夏のエアコン商戦はいっそう熱くなりそうな気配である。ただし、冒頭で触れた通り、現在自宅で使っているエアコンが2027年以降に使えなくなるわけではない。
そのため、周囲の動きに流されて慌てて買いに走る必要はないだろう。それぞれの家計の事情や、最新機種に買い替えた場合の光熱費の削減効果などを総合的に天秤にかけ、このタイミングで一度、自宅のエアコンの年数や状態をチェックしてみてはいかがだろうか。

