【搬入から3か月 現在は“最後の準備”】
福島第一原子力発電所2号機では現在、3回目の燃料デブリ採取に向け現場の準備が進められている。これまで2回の採取では狭い場所を通ることができる“釣り竿型”のロボットが使われたが、次は「3度目の正直」で大型のロボットを投入する。約78億円をかけて開発したこの大型の“ロボットアームが”福島第一原発構内に搬入されてから7月7日で3か月となった。
東京電力は「順調にいけば2026年7月に試験的取り出し作業に着手する」としているが、現在は装置の動作試験などを行っている“最後の準備作業”とし、試験的取り出しに向けた詳細なスケジュールは明らかにされていない。
3回目の「試験的取り出し」作業をめぐっては、“ロボットアーム”先端が格納容器に入るための弁を通過することが作業への“着手”となる。経路にある干渉物を除去するなどしてロボットの通り道を確保し、格納容器内の3Dデータ等の取得を経て、燃料デブリの“採取”作業に入る見通しで、“着手”から“採取”までの間に3~4か月かかる見通し。
【“ロボットアーム”開発には遅れも】
福島第一原発では、事故後13年8か月が経過した2024年11月にようやく、2号機で初めてとなる燃料デブリの採取に成功。その後、2025年4月に2回目の採取を実施した。
格納容器につながる配管の中に、事故の熱で溶けたケーブルなどが固まって詰まっていたため、2回の採取とも、比較的狭い場所を通ることができる“釣り竿型”のロボットを使用。
次の採取に使用する“ロボットアーム”はこれより大型で、約78億円をかけて製作した装置となっている。
このロボットアームについては、開発の遅れや経路への堆積物の詰まりなどが影響して投入が予定よりも遅れている。この間、一部のケーブルが経年劣化で断線していたことが発覚。また、実際の環境を模擬した試験を行ったところ、配管に引っかかるという事象も発生。さらに耐放射線性がメーカーの仕様を満たしていないことが発覚し使用実績のあるカメラに付け替えるなどの対応に追われた。
東京電力によると、これまでの釣り竿型のロボットは、速やかに燃料デブリそのもののデータを得るために“採取”に特化した装置で、アクセスできる範囲も限られていた。ロボットアームでは先端部分を取り換えながら3Dデータを取ったりデブリをつまんだりすることが可能であるため、試験的取り出しはあくまで目的の1つだという。
また、廃炉・汚染水対策の最高責任者である東京電力の小野明プレジデントは「3Dデータなどを見たときに、位置によって燃料デブリがかなり違いそうだということになれば、1か所だけでなくもう1か所取りに行こうかという議論が出てくると思っている」「状況を見て採取の回数を決めていくことになるだろう」などとして、“複数回採取”の可能性にも言及した。
【推計880tに対し実績は“1円玉1枚”】
福島第一原発に残る燃料デブリは1号機に279t、2号機に237t、3号機に364tの計880tと推計されている。これまで実施された2回の試験的取り出しで採取された燃料デブリは合計約0.9g。ロボットアームでの燃料デブリ採取も数g程度と予定されている。
国と東京電力が掲げる「2051年の廃炉完了」まで残り25年、“廃炉の本丸”燃料デブリへの対応が大きな課題のひとつとなっている。
【2号機燃料デブリ試験的取り出し・これまでの経緯】
■2021年:当初の試験的取り出し着手予定
⇒ロボットの開発遅れ、経路への堆積物の詰まり発覚などで延期
■2024年8月22日:試験的取り出し着手を計画するも「現場での棒の順番ミス」が発覚し取りやめ
⇒東京電力が現場に立ち会っていなかったことなどが問題に。
管理体制の見直しを行う。
■2024年9月10日:試験的取り出し作業に着手
■2024年9月14日:ロボットが一度デブリをつかむ
■2024年9月17日:カメラ4台のうち2台の映像が見られなくなるトラブルで中断
⇒高い放射線が影響でカメラ内部に電気がたまり不具合を起こしたと推定。
カメラ交換を決断。
■2024年10月24日:カメラの交換作業を完了
■2024年10月28日:試験的取り出し再開
■2024年10月30日:デブリの把持・吊り上げに成功
■2024年11月2日:デブリを事故後初めて格納容器外へ取り出し成功
■2024年11月5日:放射線量が「取り出し」基準クリアを確認
■2024年11月7日:試験的取り出し作業完了
■2024年11月8日:デブリの水素濃度などが輸送の基準を満たすこと確認
■2024年11月12日:事故後初めてデブリを第一原発構外へ 研究施設へ輸送
■2024年12月26日:JAEA「採取デブリからウラン検出」公表し「典型的な燃料デブリ」と評価
■2024年12月:デブリの非破壊分析が完了・分析機関に分配するためデブリを砕く
■2025年1月8日:JAEA「5つの分析機関への分配決定」公表
■2025年1月10日:デブリの一部をJAEAからMHI原子力研究開発株式会社(NDC)に輸送
■2025年1月22日:デブリの一部をSPring-8とJAEA原子力科学研究所に輸送完了
■2025年1月31日:デブリの一部をJAEAから日本核燃料開発株式会社(NFD)に輸送。予定されていたすべての研究施設への輸送が終了。
■2025年3月25日:2回目の採取に向け前回ミスがあった「棒の順番ミス」の訓練開始
■2025年4月14日:東京電力「準備が整った」として4月15日に2回目採取に着手することを公表
■2025年4月15日:ロボットの先端が格納容器につながる扉を通過し「2回目の採取着手」
■2025年4月17日:燃料デブリの2回目の把持・吊り上げに成功
■2025年4月19日:2回目の試験的取り出しで燃料デブリを格納容器外・配管の中にまで引き出す
■2025年4月20日:2回目の試験的取り出しでつかんだ燃料デブリの“引き出し”作業完了
■2025年4月21日:つかんだ燃料デブリが搬出基準(1時間あたり24ミリシーベルト以下)を下回っていることを確認
■2025年4月23日:事故後2回目の試験的取り出し作業完了
■2025年4月25日:燃料デブリ・事故後2回目の「原発構外」搬出完了
■2025年8月28日:3回目の取り出しに使用する「ロボットアーム」のカメラの耐放射線性がメーカーの仕様を満たしていないことを公表
■2025年9月25日:3回目の取り出し着手を「2026年度」に見直し
■2026年2月25日:3回目の取り出し着手を「2026年夏頃」と公表
■2026年4月7日:「ロボットアーム」を第一原発構内に搬入
■2026年7月2日:3回目の試験的取り出し作業を「順調にいけば2026年7月着手」と公表
