連日雨が降り、ジメジメする梅雨の季節。

この時期に綺麗な姿を見せてくれるのが、“コケ”です。

近年、未来の医薬品や食料として研究が進んでいて、鉄分がホウレンソウの25倍など、高い栄養価が注目されています。

さらにコケを使ったフィルターは、これまで化学薬品で処理していた工業廃水を処理でき、環境問題までをも変えるかもしれません。

約5億年前から存在する「コケ」の秘めたる力を徹底取材しました。

■「1000年前のコケが水をかけたら復活した」驚異の生命力

コケが地球上に現れたのは、約4億7500万年前で、人類はもちろん、恐竜よりも古く、「陸上に最初に進出した植物」とも言われています。

世界に約2万種類が存在し、胞子をまいたり千切れた葉から増えたりと、強靭な繁殖力を持っています。

さらに驚くのはその生命力。

乾燥して生命の危機を感じると、葉を閉じて休眠状態に入り、水なしでも環境をやり過ごすことができます。

【京都府立大学 小林亮平特任研究員】「1000年前の地層から見つかって、水をあげたら復活したという報告がされている」

京都府立大学の小林亮平特任研究員は、3年前に環境省もその生態が解明されていないとしているコケを関西で初めて発見。

約5億年前から地球に存在しながら、コケはいまだ多くの謎に包まれているのです。

■鉄分は「ほうれん草の25倍」食べられる“コケ”の栄養価

【京都府立大学 小林亮平特任研究員】「(コケの)味の研究をしている方もいて、甘かったり辛みがあったりして」

小林研究員のこの一言が気になった取材班は、「食べられるコケ」があるという神戸大学へ向かいました。

コケを研究して20年以上のキャリアを持つ石崎公庸教授。教授が差し出したのは、コケの一種「ゼニゴケ」でした。

【神戸大学大学院理学研究科 石崎公庸教授】「味はレタスみたいに淡白な葉物野菜という感じ。鉄分がほうれん草の25倍で、貧血気味の方におすすめです」

石崎教授はゼニゴケを使ったオムレツやクッキーなどのアレンジ料理も考案しており、去年は日本料理店でゼニゴケを使った懐石料理の試食会も実施しました。

ただし、食用に栽培されたものと違い、道端に生えているゼニゴケは”味や衛生などの観点から絶対食べないで”と教授は強調します。

過去の記述によれば、野生のゼニゴケをうどんに混ぜて食べた人が「食べた瞬間にうどんごと放り投げた」というほど、まずいものだといいます。

■「薬の代わりにゼニゴケを食べる未来」宇宙食から医薬品まで

食用に注目が集まったきっかけは、思わぬ出会いでした。

石崎教授の研究室にJAXAの研究者が偶然訪れ、「宇宙で栽培する野菜」について相談を受けたのです。

コケは土が不要で、少ない水と小さなエネルギーで育つことから、「宇宙栽培に理想的ではないか」という発想が生まれました。

さらに石崎教授が注目しているのが、ゼニゴケが遺伝子組み換えをしやすいという特徴です。

薬の成分を作る遺伝子をコケに組み込んで栽培することで、希少な成分を大量に抽出できる可能性があります。

【神戸大学大学院理学研究科・石崎公庸教授】「将来的には、風邪になったら風邪薬を作っているゼニゴケを食べる、腹痛になったら腹痛の薬を作っているゼニゴケを食べるという、薬やサプリの代わりにゼニゴケを食べる世界が来ると非常に楽しい」

■世界初の「コケフィルター」を開発 環境問題の救世主へ

コケの可能性は“食”にとどまりません。

ジャパンモスファクトリーで「チーフ・モス・オフィサー」を務める井藤賀操さんは、コケの発芽直後の姿である「原糸体」が、鉛や金などの金属イオンを吸着することを発見。

”コケフィルター”を世界で初めて開発しました。

緑色のコケフィルターが金を吸着すると、紫色に変色します。

このフィルターは大量の化学薬品に代わって工業排水を処理できる可能性を持ち、数年以内の実用化を目指しています。

道端で見過ごされてきた、ちょっと地味な植物・コケ。

しかし約5億年前から地球上に存在するその植物は、未来の食卓を変え、医療を変え、環境問題を解決するかもしれない無限の可能性を秘めていました。

その力を活かす未来は、すぐそこまで来ています。

(関西テレビ「newsランナー」2026年6月23日放送)

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