新型コロナウイルスの影響で、なるべく接触は避け、相手とのソーシャルディスタンスを保つようになった。

コロナ禍での新しい生活に慣れてきた中、一般社団法人・盲導犬総合支援センターが視覚障害者への“コロナ禍においての新しい声かけ方法”について呼びかけ、注目を集めている。

同センターの公式キャラクター「もうどう犬 エルくん」がTwitterアカウント(@moudoukenLkun)で、このように呼びかけているのだ。

みんな、ぼくからのお願いだよ
コロナ禍においての新しい声かけ方法を
ぜひ沢山の人に教えてあげてほしいよ

例えば、手引きをしなくても少し前を歩いて、声で誘導したり、
消毒液の場所やレジで並ぶ列の進み具合を教えてもらえるだけで、
すご〜く助かるんだよ

このコメントとともに投稿した画像には、コロナ禍以前・以後で変化した3つのケースが紹介されている。

<ケース1>道案内
以前の方法…ヒジなどを持ってもらい、手引きで目的地まで誘導。
新しい方法…少し前を歩いて、声で誘導。

ソーシャルディスタンスを保つ必要があるため、以前はできた接触がしづらくなった。それに伴い、接触をしないで案内する“声”での方法を推奨している。
 

イラスト:セツサチアキ
この記事の画像(11枚)

<ケース2>店内に入る時
以前の方法…手伝いの必要なくそのまま入店。
新しい方法…消毒液の設置場所を教える。

街中のいろいろな場所で見かけるようになった消毒液は、店舗や施設によって設置場所もさまざま。どこにあるのかを伝えなければ、設置されていることにすら気付かないこともあるだろう。

イラスト:セツサチアキ

<ケース3>レジで並ぶ時
以前の方法…前にいる人の足音など、耳で流れを判断。
新しい方法…前後に並んでいる人が列の進み具合を教える。

こちらもソーシャルディスタンスを保つため、レジまでの列にはラインを引くなど前の人との間隔を空けるようになった。しかし、距離があると前の人が進んだことは分かりづらい。移動の際に何歩進んだのか伝えると良いという。

イラスト:セツサチアキ

この新しい声かけ方法を紹介する投稿には「見かけたら気をつけてみる」「実践してみます」「これは大切なことですね」「こういうアップデート大事」といったコメントが並び、1万8000のいいねの反響がある。(12月2日時点)

新型コロナウイルスの影響で変化した生活様式。視覚障害者がとまどうポイントも変わり、手助けする方法も変化しなければならないが、実際どうすればいいのか悩んでいた人もいるだろう。声かけをためらっていた人は、この投稿に背中を押されたのではないだろうか。

新たな気付きを与えてくれた投稿だが、なぜ今回TwitterなどSNSで「“新”声かけ方法」を呼びかけることになったのか?

グッズ販売・ビジネス活動を通じて視覚障害者及び補助犬育成の支援をする、一般社団法人盲導犬総合支援センターの富谷美奈子さんに話を聞いた。

「声かけ」を多くの方に知っていただきたい

ーーなぜ「新しい声かけ方法」をTwitterに投稿した?

私たちはかねてより「声かけパンフ」というパンフレットを通じて、盲導犬ユーザーへのお手伝いの方法を広めております。コロナ禍においてソーシャルディスタンスが推進される中、盲導犬ユーザーにとって、大切な情報源である周囲の方からの「声かけ」が減ってしまっているという声を聞きました。

そこで私たちにできることとして、この状況でも変わらず周りの方へお願いしたい「声かけ」を多くの方に知っていただきたいと思い、発信しました。

声かけパンフ (イラスト:セツサチアキ)

ーー投稿への反響をどう感じた?

大変ありがたいですし、盲導犬ユーザーにとって大変心強いお声だと思います。同時にまだまだ伝え続けていかなければならないと実感しております。


ーー例えば日常の中で、私たちはどういったことができる?

まずは視覚障害者のための設備を必要としている方が利用できるようにしておくことではないでしょうか。点字ブロックの上に立ち止まっておしゃべりをしていたり、自転車が置かれていたりすることを見かけることがあります。

そしてお会いした際には、温かく見守っていただき、困っていそうな様子を感じたら、お手伝いの声かけをお願いいたします。

イラスト:セツサチアキ

私たちができる具体的な対応とは?

では実際、視覚障害者はどういったことに困っているのか? その時、私たちはどういった対応をするのがいいのか?

盲導犬の育成や普及活動、リハビリテーション訓練などを通じて、視覚障害者の歩行をサポートしている、公益財団法人日本盲導犬協会・広報室の担当者にも話を聞いた。


ーー新型コロナウイルスの影響で視覚障害者が困っていることはあるの?

コロナ禍の今年5月~6月にかけて、日本盲導犬協会所属の盲導犬ユーザー262人に電話での聞き取り調査を実施しました。困っていることや不安はないか、歩行の状態や人、犬の健康変化などについて、丁寧に聞き取りを行いました。その中で上がってきた声で代表的なものを紹介します。

・ソーシャルディスタンスがわかりづらい。例えばスーパーのレジで距離をあけて並ぶなどが難しい。

・マスクをしていると、風の流れなど肌から感じる感覚が変わってしまう。犬に指示語が伝わりにくい時もある。

・同行援護サービスについて、お互いに気を使ってしまい頼みづらい。いつもの半分の依頼にしたり、頼むのを控えたりしている。

・外出先で人が近づいてこない、声かけが減ったように感じる。迷った時など援助を頼みづらくなる。

・スーパーなどで、商品確認のため物を触るが、周囲がどう感じているか気になる。

・コロナを理由に受け入れ拒否にあうのではと心配。

写真提供:日本盲導犬協会

ーーその困ったことに対しては、私たちはどのような対応をしたらいいの?

コロナ禍では感染リスクを考え、視覚障害の方もサポート側も共に戸惑いがあるかもしれません。視覚障害の方が安心安全に活動できるよう、声かけやサポートを絶やさないでいただきたい、というのが一番のお願いです。

特に手引きでのサポートが必要な場合、ソーシャルディスタンスを保つことが難しくなります。双方が了解していれば、マスクなど感染対策をした上で「通常どおり」手引きをしていただきたいと思います。

接触することに対して、どちらかが不安ということであれば、声で誘導するやり方も選択肢のひとつになります。盲導犬ユーザーを声で誘導をする際の立ち位置は、その方の前、右横、後ろとありますが、いずれの方法がよいかはユーザー本人に確認することが重要です。

コロナ禍で、今までと違う状況が発生している、張り紙などで注意事項が掲示されているなどの場合は、まずその状況を言葉で伝えていただきたいと思います。「目を借りる」と表現される方もいますが、視覚障害の方は周囲から得た情報をもとに、サポートが必要かどうか、ご自身で判断をされます。

「声かけ」を絶やさないでほしい

ーーコロナ禍以前と対応は変わった?

コロナ前と以後で特に対応が変わるということではありません。人によってしてほしいことや、やり方が違うということです。決まったやり方やマニュアルがあるわけではありません。

ここで覚えておいていただきたいことは「本人に聞く」ということです。「何かお手伝いしますか」「どのようにしたらいいですか」と声に出して聞いていただければと思います。そこから先のやり方は、視覚障害の方が教えてくれます。

<視覚障害の方への声かけの留意点>

・視覚障害の方へ伝わりやすいように、なるべく正面から声をかけることをお伝えしています。しかし、コロナ禍では必ずしもそうとは限りません。視覚障害の方の真横に立って同じ方向を向いて会話することで、飛沫感染のリスクを低減するという考え方もあります。

・「盲導犬をお連れの方」「白杖の方」など誰に話しかけているか、わかるようにお願いします。

・「なにかお困りですか」「お手伝いしましょうか」と聞いてみてください。

駅ホームや交差点などで危険が迫り緊急事態の時は、「盲導犬の方、止まって!」と伝え、身体をつかんで危険回避をしてください。ただ危険もなくスイスイ歩いている、自信をもって歩いている時は、そのまま見守り、もしもの時には迷わず声がけをお願いします。


ーー盲導犬がいる、いないで声のかけ方など違いはある?

特に違いはありません。ただ、盲導犬は通常人の左側にいますので、横に並ぶ際には「犬のいない側」に立って話しかけるとよいと思います。


ーーコロナ禍​ならではの視覚障害者・盲導犬のためにできることはある?

視覚障害の方がより安全安心に社会の中で活動するためには、周囲の方のサポートは欠かせません。コロナ禍にあっても今までと変わらず、視覚障害の方への声かけを絶やさないでほしいと願っています。

さらにもう1つ。身体障害者補助犬法では、社会での盲導犬の受け入れは義務となっています。しかし新型コロナウイルス感染を心配するあまり、盲導犬の受け入れを断ってしまうといった残念なケースも出てきています。

犬から人に新型コロナウイルスが感染したという事例は、現時点で報告はされていません。また、盲導犬の衛生管理は補助犬法でも定められていて、ユーザーは徹底をしています。新型コロナウイルス感染を理由に、店舗や施設での盲導犬同伴を拒むようなことがないよう、正しい理解をお願いしたいと思います。

写真提供:日本盲導犬協会

コロナ禍以前と情報の伝え方などが少し変わった部分があるかもしれない。しかし、“温かく見守り、困っていたら助ける”という大きな部分は、何も変化を必要としていないという。

「ぜひお友達やご家族など周りの方へもお手伝いの方法を共有してほしい。声かけの輪を広めてほしい」と盲導犬総合支援センターの富谷さんが話すように、困っている人を見かけた時にためらわず行動できるように、事前に知っておくことも手助け活動の一歩となることだろう。
 

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