避難所のあり方を考えるシリーズ「命と未来をまもる」。災害関連死が死者の8割を超えた熊本地震から10年。避難所の環境改善に向けた民間の動きを取材しました。

大阪、八尾市。小さな段ボール工場があります。

*Jパックス社長 避難所・避難生活学会 水谷嘉浩代表理事
「このベッドで8年間、寝ていますけど、全然、強度は大丈夫」

社長の水谷嘉浩さん。災害関連死の防止を目的に10年前、「避難所・避難生活学会」を立ち上げました。

2011年3月の東日本大震災以降、水谷さんが被災地を訪ねた回数は500回以上。自ら作った段ボールベッドを避難所に配って、健康被害や災害関連死につながる雑魚寝の解消に努めてきました。

*Jパックス社長 避難所・避難生活学会 水谷嘉浩代表理事
「東日本の時に、避難所ってみんな安全な場所って思うじゃないですか、でも安全じゃなかった、すごい疑問があって、もうそこからです」 

熊本地震・能登半島地震の避難所しかし、その後の熊本地震や能登半島地震で繰り返されたのが雑魚寝に象徴される避難所の劣悪な環境…。

地震の被害で直接、亡くなった人の数をその後の避難生活などで亡くなる災害関連死が大きく上回る事態が続いています。

・熊本地震 直接死50人 災害関連死225人
・能登半島地震 直接死228人 災害関連死507人

水谷さんが行き当たった一つの答えがありました。

*Jパックス社長 避難所・避難生活学会 水谷嘉浩代表理事
「イタリアの避難所、大型のテントで空調もあって、これベッド、簡易ベッドです」 

イタリアの避難所では、被災した地域の外から、居住空間や食料、トイレなどの資材を届け、運営までが行われていたのです。

*イタリア市民保護庁の支援組織 マリレーナ・エポジースト代表
「イタリアでは災害に見舞われた自治体の対応を補う制度が採用されています。なぜなら、人材や物資が不足し、災害を超えてさらなる被害が発生するからです。そのため、近隣の自治体、組織、国の市民保護庁が介入する毛細管のようなシステムを構築しているのです」

これに倣った水谷さんは、トイレ、キッチン、ベッドを48時間以内に避難所で展開する「TKB48」を提唱。

そのユニットを全国の備蓄拠点に分散配備し、どこで災害が発生しても短時間で避難所にTKBが届く仕組みです。

*Jパックス社長 避難所・避難生活学会 水谷嘉浩代表理事
「TKBという言葉は、もう政府も自治体も使うようになりました。でも実際に災害が起きた時に全員分できるのかっていうと、これはまた難しい。足らなかったら、隣から持ってくればいい」

熊本地震から10年。先月、熊本市の公園に次々とトラックが集結しました。

「皆さん、おはようございます。今回、訓練の…」

TKBユニットを運び込んで展開する熊本市主催の訓練。大手ゼネコン、清水建設の企業内ベンチャー「シェルターワン」がTKBだけでなく、電源や通信設備なども備えた最新鋭の避難所を構築します。

シェルターワンの創業者の一人、高岡市在住の中林秀仁さん。避難所・避難生活学会の水谷さんと共に、この仕組みの普及にあたっています。

学生時代、阪神・淡路大震災で火の海となった神戸を目の当たりにした中林さん、避難所の環境を根本から変える必要があると考えてきました。

*シェルターワン 中林秀仁取締役
「このブルーのラインが避難者が持ってるニーズの総量、これに対して、満たせない状況が日本の場合、こんなに大きいんですね」

避難者のニーズ、つまり、避難生活に必要なTKBなどの支援。被災した市町村の対応では物資の到着が遅れるなどグレーで示したニーズを満たせない時間が避難者に我慢を強いてきました。

48時間以内にTKBを整えるイタリアはそのニーズを素早く満たしているのです。

*シェルターワン 中林秀仁取締役
「1か月も立ってそうなる(ニーズを満たす)のではなく、数日後には、そうなっているべきではないか、広域から支援隊がやってくると、こんな世界ができる、そうすれば日本の避難所は変えられるのではないか」 

最新鋭の避難所で一夜を明かす参加者の多くは、10年前の地震を経験しています。

*参加した親子
「こういう空間があったら、もうちょっと楽に過ごせたのかな。どういう感じなのか興味があって参加しました」

「ふかふかで気持ちいい」

訓練に参加した熊本市職員の男性。10年前の地震で2週間以上、避難所で生活しました。

*訓練に参加した熊本市職員の男性
「周りとの隙間はこれくらい。持ち寄った毛布を敷いて雑魚寝です」

Q体調を悪くされる方も?
*訓練に参加した熊本市職員の男性
「もちろんいらっしゃった」

当時、支援物資の供給など多くの課題を体験しました。

*訓練に参加した熊本市職員の男性
「(支援物資を仕分ける仕組みが確立されていなかった拠点で目詰まって(避難所に)渡らない。なんで向こうは来ているのにこっちには来ないのか、そんなののはけ口にもならないと、どうしようもなかった」

熊本の教訓は今、どこまで活かされているのでしょうか。

*熊本市 大西一史市長
「私がなぜこれを強く推し進めようとしたか、命を守りたい。災害の直接死で亡くなられた方、本当に残念だけど、その後に関連死で亡くなった方は防げた。私はできなかったことが悔しい、申し訳ない。こういう仕組みを広げていかなければ、そういう思いで私はいます」

高岡市在住の起業家が手がけるTKBユニットは、今年度、横浜市が導入し、今後、訓練で実際に活用していくということです。

富山テレビ
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