福島の“いま”を深堀り課題を浮き彫りにし、解決に向けた道筋を一緒に考えていく。最初のテーマは“ふくしまの米”、全国から高い評価を受けてきたが、いま岐路に直面している。

■米どころで暑さが収量に影響
会津有数の“米どころ”福島県湯川村。会津盆地に囲まれ、日中の“暑さ”と夜の“涼しさ”がおいしい米を育て、中でもコシヒカリは全国に知られる存在だ。しかし、そのコシヒカリが主食用米に占める割合は現在約6割で、9年前と比べると2割近く減っている。

4月、稲を育てるための種まき作業に追われていた湯川村のコメ農家・高橋勝彦さん。コシヒカリの作付け面積は全体の半分以上を占めていた年もあったが、2026年は4分の1程度に…。理由は“暑さ”だ。
高橋さんは「年々ほんと暑くなってきてますよね。体温と同じくらいの温度になっちゃう。本当に暑さに強い品種を導入しようとなってきています」と話す。(※「高」は正式にははしごだか)

■会津でも温暖化が顕著に
“温暖化”は会津でも顕著になっている。会津若松市における夏の最高気温の平均は、1954年は26.0℃だったが…、2000年代に入ると急激に上昇。2023年は観測史上最高の32.2℃を記録、1954年と比べると6.3℃も高くなった。この“暑さ”により湯川村のコシヒカリも米の粒が白く濁り品質低下につながることもあり、栽培が難しくなっている。
高橋さんは「昔会津は昼間暑くて夜は涼しくなるというのがいいと言われていたが、最近は夜間寝苦しい日があるのかなと。日中光合成をして(涼しい)夜間で休む。そこで登熟、実が太っていくわけなんですけど、それが(夜)暑いとうまくいかない」と話す。

■「特A」3年連続で逃す
高温障害が影響しているとみられているのは、「米の食味ランキング」だ。最上位に位置する「特A」は会津のコシヒカリの“指定席”だった。平成以降では10年連続で獲得していた時期もあったが…2023年度、2024年度、さらには2025年度と直近の3年間は「特A」に届かず。3年連続で逃すのは平成以降で初めてだ。
高橋さんは「平成に入った頃はササニシキが主流だったんですけど、いまはコシヒカリに代わって、これからまたコシヒカリに代わるものが必要になってくるんじゃないかなと思っています。何か新しい品種、県で何か作っているみたいだが、その品種に期待したいと思っているが、早めにお願いしたい」と訴える。

■高温耐性品種の作付けに遅れ
しかし、福島県では“高温耐性”の作付けが進んでいない。農林水産省によると、2024年産の主食用米に占める高温耐性品種の作付面積は全国平均で16.4%だったが、福島は全国で最も低い0%。2025年産でも1.8%にとどまっている。全国的にはこの10年で作付面積が2.7倍に拡大するなか、なぜ福島では切り替えが遅れているのか。
稲作やコメの品質に詳しい福島大学の新田洋司理事・副学長は、大きく変わった米作りを取り巻く環境に、現場は対応しきれていないと指摘する。「過去に遡ると、10年間に1回以上は冷害の被害を受ける年があったわけですね。ところが、ここ23年間は全く冷害がない訳です。ですから、逆に言うと、気象条件が大きく変わった。高温になった、温暖化が極端に進んだということがあるかと思います。まさに予測できなかった、そういう事態になっていると言えると思います。(これまで)冷害に強い品種は色々次々と開発されて、実際に使われるようになった訳ですけど、逆に高温に強い品種というのは後手に回っているというか、品種開発が十分でないまま、今日の暑さになってしまったという訳です。だから、備えが十分でなかったというのは否めないと思います」と話す。

■開発進む福島県の高温耐性品種
そうしたなか、福島県が2年後のデビューを目指し開発を進めているのが「福島59号」、待ちに待った“高温耐性”の品種だ。福島県農業総合センター作物園芸部の吉田直史部長は「生産現場からも求められている品種ですし、コシヒカリに匹敵する食味ということなので、広く生産現場の方に広まっていくこと普及していくことを期待しています」と話す。
この品種は、県農業総合センターが2011年から開発を重ねてきた福島県のオリジナル。全国では、既に数多くの高温耐性の品種が栽培されているなか、なぜ県独自の品種が必要になるのか。
福島大学の新田理事・副学長は「稲の品質、水稲の品質というのは地域の環境にばっちり合わせる必要があります。地域の依存性が強いので、都道府県ごとに高温耐性の品種を作るということは、重要なことだと思います」と話す。

■既存品種は高温に対応した栽培方法を
その上で、既存の品種については高温に対応した栽培方法の確立を進めることが欠かせないと強調する。「(福島で)一番多く栽培されているコシヒカリ、2番目には天のつぶ、これは福島県のオリジナル品種、3つめはひとめぼれですけど、これらの品種に福、笑い。最近栽培面積を増やしてきています。これらの品種を中心に高品質で食味のよい、もちろん収量性が低下しない、そういった安定的な栽培方法をしっかりと確立して、出荷・流通させていくことが必要かなと考えています」と福島大学の新田理事・副学長は話した。

記録的な暑さのなか、どうやって収量と品質を確保していくのか。“ふくしまの米”がいま岐路に立っている。

福島テレビ
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