まもなく開山期を迎える富士山。2026年は吉田ルートと須走ルートが7月1日に、富士宮ルートと御殿場ルートが同月10日に登山道の通行止めが解除され、本格的な夏山シーズンとなる。
登山道は閉山期通行禁止も…
富士山をめぐっては、開山期を除き5合目から山頂に通じる4つの登山道(一部期間の富士宮ルートのみ6合目から山頂)がいずれも通行禁止となっている。
これは安全上の理由から道路法に基づく措置で、違反した場合は6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処される可能性がある。

もちろん、この期間は救護所や道中の山小屋も閉鎖されていて、また厳しい気象条件下では遭難のリスクも格段に高まることから、静岡・山梨の両県並びに両県警は登山の自粛を呼びかけている。
ただ、登山道以外については立ち入りを制限する法的根拠はなく、このため閉山期であっても登山者が絶えないのが現状だ。
登山者を直撃「後ろめたさはない」
5月11日。
富士山・須走口5合目にある山小屋を訪れ代表に話を聞くと、この日もスキーや登山のため山頂方面へと向かう人の姿を目撃したという。
しかし、この光景は決して珍しいわけでなく、連日同じような状況になっているそうだ。
そこで下山してきた3人組に声を掛けると、「閉山期間であることはわかっているが、罪悪感を持っているわけではない」と口にした。

3人のうち1人が今夏にヒマラヤ登山を予定していることから、トレーニングのため訪れたとのことで、「後ろめたさはない」と話す男性は「富士山は日本人みんなのもの。静岡県だけのものでも、山梨県だけのものでもない。自己責任でやっている」と言い切る。
地元市長は怒り「困る」「迷惑」
一方、こうした現状に怒りを隠せないのが富士宮市の須藤秀忠 市長だ。
富士山では閉山期の遭難事故が後を絶たず、このため須藤市長は事あるごとに登山禁止の厳格化を訴えていて、6月8日の会見では「閉山中に行くということは雪がある。危険なところを登るということは遭難のおそれが十分にある」と強調した上で「遭難がなければ私たちの部下である消防隊員も命懸けで救助に行く必要はないし、原因をまず防ぐことが一番」と述べた。

あわせて、須藤市長が主張しているのが閉山期における救助の有料化。
なぜなら、現在の法律では警察や消防が出動した場合でも登山者に費用を請求ことができず、救助に要した経費は地元自治体の持ち出しとなっているからだ。
このため、須藤市長は「遭難したら助けてもらえばよいというのはとんでもない話。県道(登山道)を歩かなければいいわけではない。登ってもらっては困る」と語気を強める。
イギリスの伝説的登山家として知られるジョージ・マロリーは、かつてインタビューで「なぜ、エベレストに登りたいのか?」と問われた際「Because it’s there(そこにあるからさ)」と答えたと言われるが、須藤市長は「登山家の方々は『山があるから登るんだ』と言うが、それは自分たちの勝手であって、登っては困るという私たちの立場を理解してもらいたい。登山家にはいろいろ夢があるし、いろいろ考えがあり、富士山に登ることは誇りかもしれないが地元としては迷惑な話。冬山に登らなくても、開山中はいつでも登れる」と一刀両断した。
有料化に理解 冬山登山の許可制を提言
日本を代表するアルピニスト・野口健 氏は、富士山の現状について「インバウンドの影響もあって観光地化していて、適切な装備を持たない無自覚登山者が増えている」と指摘する。
野口氏によれば、山岳救助に要する費用が自己負担となっている国や地域は多く、自身の経験から「有料か無料かによって緊張感が変わる。何かあっても無料で(救助に)来てくれるというのは無意識の中で緊張感がなくなる」といい、「1つの試みとしては良いのではないか」と有料化に理解を示す。
また、閉山期の富士山に関しては登山を一律に禁止するのではなく、許可制にするのが望ましいと考えていて、「例えばアメリカの国立公園マッキンリーに行くと、まずカバンの中のチェックがあり、しっかりと装備を持っているのか確認される。また、申請時には過去にどのような山を登ったことがあるのか自身の登山歴をすべて書く。現場に行っても担当者が大丈夫と判断した時に初めて山に登ることができる」と、こちらも自らの経験に基づいて見解を述べた。
