富士山は開山期以外の登山について自粛が呼びかけられているが、毎年のように閉山期の遭難事故が後を絶たない。このため、地元の首長は繰り返し苦言を呈している。一方、当の登山者はというと…。
地元市長が怒り「とんでもない話」
「遭難したら助けてもらえばよいというのはとんでもない話」
5月11日、静岡県富士宮市の須藤秀忠 市長は怒りに満ちた表情で、こう言い放った。
理由は富士山で閉山期の遭難事故が後を絶たないからだ。

富士山5合目から山頂に通ずる登山道は、安全上の理由から道路法に基づいて開山期以外の通行が禁止されていて(一部期間の富士宮ルートのみ6合目~山頂)、違反した場合は6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処される可能性がある。

また、閉山中は救護所や山小屋も閉じていて、厳しい気象条件の中では遭難リスクが極めて高いことから静岡・山梨の両県や両県警は登山の自粛を呼びかけている。
一方で、登山道以外の立ち入りを制限する法的根拠はなく、閉山期においても登山する人が絶えない。
二次遭難と隣り合わせ「冗談じゃない」
ただ、閉山期であっても遭難などが起きて救助要請があれば、警察や消防の山岳遭難救助隊は出動しなければならないため、須藤市長は「(隊員は)命懸けでやっている。たまたま今のところ二次遭難が起きていないが、もし二次遭難が起きれば隊員の家族も上司も、ましてや市長という立場では我慢できない。怒りになってくる。冗談じゃない、もう止めてほしい」と強調し、「県道(登山道)を歩かなければいいわけではない。登ってもらっては困る。救助を求めないでほしい」と語気を強めた。
須藤市長は予てから県に対して閉山期の遭難防止に向けた対策強化や救助の有料化を要望していて、念頭には埼玉県の存在がある。
埼玉県では山岳遭難の救助について有料化に踏み切っていて、指定された山や地域において県の防災ヘリで救助を受けた場合、燃料費に相当する手数料としてフライト時間5分につき8000円を徴収していて、須藤市長は「埼玉程度のことではなく、もっとたくさんの費用負担をしてほしい」と主張した。
なぜ?閉山期に登山するワケ
では、なぜ閉山期とわかっていながら富士山に登るのか?
5月11日に富士山・須走口5合目を訪れ、山小屋の代表に話を聞くと、この日もスキーや登山のために山頂方面へと向かう人の姿を目にしたそうだ。
そして、これは決して珍しい光景ではなく、連日のことだという。
実際に下山してきた3人組に声を掛けると、「閉山期間であることはわかっているが、罪悪感を持っているわけではない」と返ってきた。
3人のうち1人がヒマラヤ登山を予定していることからトレーニングのために来訪したといい、「後ろめたさはない」と話す男性は「富士山は日本人みんなのもの。静岡県だけのものでも山梨県だけのものでもない」と述べ、「自己責任でやっている」と言い切る。

その上で、3人は救助については有料化し、閉山期は登山を一律に禁止するのではなく許可制にするのが望ましいとの見解を示した。
登山の自由と警察・消防による救助の負担のバランスをどうするべきなのか…県はいまだその答えを見つけられないでいる。
