新型コロナ、人種、経済、気候変動

勝利宣言をしたバイデン氏が、政権移行に向けて動きを加速させている。

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勝利宣言の翌日、地元デラウェア州の教会や家族の墓を訪れたバイデン氏。
交通事故で亡くした前の妻と娘や、5年前に病死した長男に大統領選の勝利を報告したものとみられる。

勝利宣言で「分断させようとするのでなく、結束させる大統領になることを誓う。わたしたちの仕事は、新型コロナを制御することから始まる」と演説したバイデン氏。

政権移行に向けて設けたウェブサイトを更新し、就任初日から取り組む最優先課題として、新型コロナ対策人種問題経済再生気候変動の4つをあげ、具体策を示した。

政権移行に向けたSNSより
政権移行に向けたSNSより

最初に取り組むと宣言した新型コロナウイルス対策については、9日に早速、対策チームのメンバーを発表する予定。

全国民にとっての最重要課題に最初に取り組む姿勢をアピールすることで、国内の分断の解消を目指すとみられる。

「パリ協定」への復帰を明言

そして、気候変動対策については、「パリ協定に大統領就任初日に復帰する」と述べ、トランプ政権が脱退した地球温暖化防止の国際的枠組み「パリ協定」への復帰を明言。

2050年までに温暖化ガスの排出ゼロを目指すとしている。

経済再生では、新型コロナで打撃を受けた雇用の回復を。

人種問題については、教育や就業機会の均等化や黒人暴行死事件の原因となった警察の改革を進めるとしている。

政権移行に向けたSNSより
政権移行に向けたSNSより

バイデン氏:
同盟国や友好国と協力する大統領になる。人権と尊厳のためにいつでも立ち上がる。

外交面では国際協調を重視し、人権問題を念頭に中国をけん制するバイデン氏。

今後の日米関係について菅首相は、「日米同盟をさらに強固なものにするために、そしてインド太平洋地域の平和と繁栄、そこを確保していくために、米国とともに取り組んでいきたい」と述べた。

また、加藤官房長官は、「パリ協定が目指す脱炭素社会の実現に向けて、米国と協力しつつ、気候変動問題に積極的に取り組んでいきたい」とした。

国際社会を分断から結束の軌道にのせることができるのか。
バイデン氏の手腕を世界が注視している。

外交、安全保障への影響は?

三田友梨佳キャスター:
今回の選挙結果を受けて、日米関係にはどのような影響があるのでしょうか。
外交、安全保障への影響について哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人さんに聞きます。

津田塾大学・萱野稔人教授:
日本の安全保障にとって最大の問題は、バイデン政権がどのような対中政策をとるかということです。
バイデンさんはずっと親中派、中国寄りで、それはオバマ政権の副大統領時代から言われてきました。

ただ、アメリカ国内では中国の拡張路線に対して、今、非常に反中感情が強まっています。
バイデンさん自身も対中強硬に舵を切ってきたということですが、具体的な対中政策の中身が見えないんです。7日の勝利演説でも対中政策に全く言及していませんでした。

三田友梨佳キャスター:
そういったバイデン氏の方針に対して、日本はどう対応していくべきなのでしょうか?

津田塾大学・萱野稔人教授:
バイデンさん自身は国際協調路線を掲げています。
中国に対しても同盟国と協力して中国に圧力をかけていくべきだと述べています。

日本としてはバイデンさんの方針を踏まえて、アメリカ、オーストラリア、インドと作り上げてきた対中包囲網にアメリカをさらに関与させる。どこまで関与させて行けるかが今後の安全保障にとって非常に大きなカギになると思います。

経済への影響は?

三田友梨佳キャスター:
アメリカが中国に対峙するためにも、アメリカ国内の経済がしっかりと安定していることが必要不可欠だと思いますが、経済の視点からエコノミストで企業ファイナンスを研究している崔真澄さんに聞きます。

崔さんは経済への影響をどうお考えですか?

エコノミスト・崔真淑さん:
バイデン氏の政策は期待もあれば懸念もあります。

期待の方は、4年で2兆ドルの公共インフラだとかエネルギー投資を行うということなので、巨額の財政政策を行えば、アメリカそして日本経済に対してもプラスになるのではという思惑が出ています。
ですからバイデン氏が大統領に就任してからの数年間はアメリカのGDP、そして雇用にもプラスになるという試算が出てきています。

一方で、懸念なんですが、トランプ氏の政策と差別化を行うためにも金融機関への規制を強化するのではないかという思惑が流れています。具体的には証券との分離であるとか、ウォール街への何かしらの規制です。

なので、バイデン氏の政策に対する期待で盛り上がっているので、株式市場は上昇基調が続いていますが、金融機関の株価は日本、アメリカ共に相対的に上昇が小さいものになっています。

三田友梨佳キャスター:
規制の強化は日本にも影響があるということですね。

エコノミスト・崔真淑さん:
日本の株式市場の約7割は、アメリカや海外の投資家による売買で支えられています。
アメリカで金融機関に対する規制が強化されれば、アメリカから入ってきていた日本の投資マネーにも影響するかもしれません。

さらに、規制強化となれば、アメリカの金融機関の企業価値が下がるであるとか、事業会社の資金調達が割高になるというシミュレーションも存在しています。

なので、期待もあれば懸念もある。この辺りを注視しておきたいと思います。

三田友梨佳キャスター:
そう考えると東証の株価はきょう値上がりしましたが、それも一過性のものと言えるのかもしれません。日本企業は冷静に今後出される政策に対して対応策を講じていくことが求められそうです。

(「Live News α」11月9日放送分)