FIFAワールドカップ2026で日本と同じグループFに入るチュニジアが、現地時間6月6日、ベルギー・ブリュッセルで行われた本番前最後の強化試合でベルギーに0-5の大敗を喫した。
一見すると日本にとっては追い風にも映る結果だ。しかし試合内容や現地報道を見ていくと、森保ジャパンが油断できる状況ではなさそうだ。
スタッツが示したベルギーの圧倒的な強さ
チュニジアは前半28分、トロサールに先制点を許した。後半8分にはデ・ケテラーレに追加点を奪われると、後半17分にはガルビが2枚目の警告で退場。数的不利となった後はデ・ブライネらに立て続けにゴールを許し、0-5で敗れた。
チュニジアは1日のオーストリア戦にも0-1で敗れており、本番前最後の強化試合を2連敗で終えた。
ただ、この試合で強く印象に残ったのはチュニジアの弱さというよりベルギーの強さだった。
ボール支配率はベルギー56%、チュニジア44%。シュート数は23対6、枠内シュートは11対1。コーナーキックも14対0だった。
ベルギーはデ・ブライネ、ドク、トロサールらを中心に終始主導権を握った。チュニジアGKシャマフが再三の好セーブを見せなければ、さらに大差となっていても不思議ではない内容だった。
ラムシ監督「結果は両チームの差を反映」
敗戦を受け、チュニジア国内では危機感も広がっている。チュニジアのサッカーメディア「Kawarji」は、「W杯開幕直前に深刻な警告を受けた」と報じた。記事ではベルギー戦で守備面の課題が露呈したと指摘し、「コーチングスタッフは数多くの守備上の欠点を迅速に修正しなければならない」と伝えている。
サブリ・ラムシ監督も試合後、厳しい表情で敗戦を受け止めた。
Kawarjiによると、「この敗戦は辛く、受け入れ難い」と述べた上で、「私たちは大きく支配された。結果は両チームの現在の差を反映している」とベルギーの強さを認めた。さらに、「スタメンの選択も、試合中の交代も機能しなかった。責任はすべて私にある」と語り、自らの采配に責任があるとの認識を示した。
一方で、「試行錯誤の時間は終わった。私たちはW杯を戦うチーム像をより明確に描けるようになった」とも話しており、敗戦を本大会への教訓にしたい考えを示している。
日本が対戦するのは「修正後のチュニジア」
もっとも、日本が注目すべきなのは今回の敗戦そのものではない。チュニジアはアフリカ予選を9勝1分けの無敗で突破し、しかも全10試合無失点という堅守を武器にW杯出場を決めた。ベルギー戦では5失点したものの、退場者が出るまでは0-2。5失点のうち3失点は10人になった後に喫したものだった。
当然、チュニジア陣営もベルギー戦で露呈した課題を分析し、本大会ではより守備を重視した戦い方を準備してくるとみられる。日本がグループリーグ第2戦で対戦するのは、ベルギーに大敗したチュニジアではない。その敗戦を踏まえて修正を加えたチュニジアだ。
指揮官はW杯で日本を破った経験も日本にとって不気味な要素もある。ラムシ監督は現役時代にイタリアのパルマで中田英寿氏とプレーした経験を持つ。さらに、2014年ブラジルW杯ではコートジボワール代表監督として日本と対戦し、後半の逆転劇で勝利を収めた。日本の特徴を理解している指揮官であり、大会直前の修正力も軽視できない。
日本だけが勝利 だからこそ油断は禁物
興味深いのは、日本と同じグループFの各国が直前の強化試合で結果を残せていないことだ。
オランダはアルジェリアに0-1で敗れた。スウェーデンはノルウェーに1-3で敗れ、ギリシャとも2-2で引き分けた。チュニジアはオーストリアとベルギーに連敗している。一方、日本はアイスランドに1-0で勝利し、本大会へ向けて比較的順調な調整を続けている。
しかし、ワールドカップでは親善試合の結果がそのまま本大会につながるとは限らない。むしろ敗戦によって課題を洗い出したチームほど、本番で修正してくるケースも少なくない。
ベルギー戦で浮かび上がったのは、チュニジアの限界というよりベルギーの完成度だった。そして日本が対戦するのは、ベルギーに0-5で敗れたチュニジアではない。その敗戦を教訓に守備を立て直し、本来の堅守速攻に磨きをかけてくるチュニジアだ。
オランダもスウェーデンも、そしてチュニジアも、強化試合では結果を残せなかった。しかし、それぞれが課題を持ち帰り、本大会へ向けて修正する時間は残されている。グループFで直前のテストマッチに勝利したのは日本だけだ。
(フジテレビ報道局国際取材部デスク 小杉基)