「1時間前ぐらいに、15錠、カルピスで飲みました」

そう語る20代の若者。

別の10代は「パキって記憶なくして、駅で寝てる写真がある」と明かします。

薬の過剰摂取=”オーバードーズ”が社会問題となるなか、大阪・ミナミの若者たちが集う場所に、ある男が出没していました。

■「自宅から5000錠以上」”薬屋さん”の実態

5月27日、無職の今川祐希容疑者(40歳)が逮捕されました。

ことし1月、大阪市内のホテルで少女2人に無許可で、睡眠導入剤など60錠を譲り渡した疑いがもたれています。

大阪・ミナミのグリコの看板下、通称”グリ下”に集まる若者たちは彼のことを「クスリ屋さん」と呼んでいました。

今川容疑者の自宅から押収されたのは、14種類、5000錠以上の薬。一部は、オーバードーズを繰り返す若者に売り渡していた疑いもあります。

大量の薬の入手方法について、今川容疑者はこう語っているということです。

【今川祐希容疑者】「私は現在、生活保護をもらって生活しています。女の子にあげた薬は、生活保護で診察を受けて処方された薬です」

生活保護の受給者は医療費が全額免除されます。今川容疑者はこの制度を悪用して薬を入手し、若者たちを”食いもの”にしていたとみられています。

■「ことしからバーッと増えた」 グリ下に“売人”が急増した理由

”グリ下”に出入りする若者たちは、取材に対してこう語りました。

【“グリ下”に出入りする若者】「女の子が増えるタイミングで増える。金・土・日。ことしからバーッと増えた」

別の若者は。

【“グリ下”に出入りする若者】「特に夜中が多い。カバンに入れて渡したり、『カバン買うから』と要らんカバンに入れて渡したり」

なぜ今、若者が集う場所に売人が現れるようになったのか。

藤田医科大学の伊藤隼也客員教授はこう指摘します。

【藤田医科大学 伊藤隼也客員教授】「市販薬が厳しくなっているから、処方薬を闇で買う。闇市場が活性化している」

5月から、乱用の恐れがある市販薬を未成年が購入する際には、個数の制限や身分証の提示が義務付けられました。

以前は「”親に頼まれた”と言って10箱買ったり」することもできたということですが、その抜け穴が塞がれたといいます。

【藤田医科大学 伊藤隼也客員教授】「買えなければ、闇で売ってる人たちが出てくるのは当たり前。(“売人”の増加は)規制強化の副作用」

■「赤字の病院が多い」処方薬が”流通”する構造的背景

処方薬の闇ルートは、売人だけの問題ではありません。

かつて大阪・ミナミで精神科を開業していた大阪梅田アウルクリニックの片上徹也院長は、転売目的とみられる患者に何度も出会ってきたといいます。

【大阪梅田アウルクリニック 片上徹也院長】「(怪しい人は薬を)指定してきます」

片上院長は診察で患者の説得に努めてきた一方、怪しい患者を黙認する病院の存在も示唆します。

【大阪梅田アウルクリニック 片上徹也院長】「赤字(経営)の病院が多いですよね。『薬をくれ』と言う患者に『危ないからやめましょう』と説明するのは難しい。時間をかけずに次々と診察した方が、医者からしたら手間が省ける。

■背景に病院の赤字経営

さらにこう続けます。

【大阪梅田アウルクリニック 片上徹也院長】「生活保護の人だけ(対象)にすると、本人たちは窓口負担がないので、短時間で高価な検査をしても文句を言わない人を大量に回す(診察する)ということは有り得る」

日本医師会によると、全国の4割以上の診療所が赤字経営です。

6月から診療報酬や入院費用などが引き上げられましたが、片上院長は厳しく評価します。

【大阪梅田アウルクリニック 片上徹也院長】「誤差ですね。本当は効率重視の経営をしたい医者はいないと思うが、そうしないと他で勝負できない医者であれば、そういう病院で働くしかないかもしれない。そういうクリニックを経営するしかないかもしれない」

経営難の医療機関が診察の回転率を上げることで利益を確保するという構造が、処方薬の”流通”を下支えしている可能性が見えてきました。

警察は、今川容疑者が大量に所持していた処方薬の流通経路について、慎重に捜査を続けています。

(関西テレビ「newsランナー」2026年6月2日放送)

関西テレビ
関西テレビ

滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。