長野県中川村に、4月、新たな交流拠点ができました。運営するのは村の出身で、在宅支援の会社を手掛ける35歳の男性です。キッズスペースやカフェ、宿泊施設も備えた建物で、妻とともに、「地域を盛りあげたい」と奮闘しています。
■「坂戸から地域を1つに」交流拠点
人口約4500人の中川村。
村の入り口には、天竜川にかかる美しいアーチ橋があります。国の重要文化財「坂戸橋」です。
その橋のたもとに、4月、新たな「交流の場」ができました。
子どもたちが遊ぶキッズスペースに、食事をしながらおしゃべりを楽しめるカフェも。
運営するのは、村に住む富永良謙さん(35歳)です。
富永良謙さん:
「もう一度ここに、人が訪れるような場所をつくりたいというのと、ここから中川村の良さを発信できる場所がほしいな」
この場所を、「坂戸橋から地域を一つに」という思いをこめて、「SAKADONE(サカドネ)」と名付けました。
妻の茜さんもサポートしています。大阪出身の茜さんに村の印象を聞くと―。
妻・茜さん:
「魅力が多くて子育てしやすいし、自然が豊か。家で引きこもりがち、1人でワンオペ(育児)になっている人も多いと思うので、ほっと一息つける場所になったら」
■もう一つの顔は…訪問看護師
富永さん:
「こんにちは~」
富永さんにはもう一つの顔があります。
富永さん:
「酸素の値を測りますね。ご飯も食べられてます?」
実は富永さん、看護師の資格をもち、訪問看護や介護など在宅支援サービスを提供する会社「ぽれぽれ」の代表でもあります。
ぽれぽれ代表・富永良謙さん:
「生活の場を見なければいけない。病気だけではなく、生活の状況や家族、介護者が大変ではないかとか、いろいろ見ながら考える必要があるので」
■「人の役に」海外で医療スタッフに
村で生まれ育った富永さん。
高校まで村で過ごし、大学は横浜市立大学の看護学科に進学。
SAKADONEを運営・富永良謙さん:
「人に親切にすること、人の役に立ちたいという思いがあり、看護師が自分に合っていると」
卒業後、大学病院で4年間、看護師として働いたのち、海外ボランティアの医療スタッフとしてミャンマーやカンボジアへ。
SAKADONEを運営・富永良謙さん:
「誰かのために、何も見返りを求めずに尽くしてみたいと思った」
そこで出会ったのが同じボランティアスタッフだった助産師の茜さんです。
1年間で50カ国あまりを2人で巡り、旅行中に結婚。
しかし2020年、コロナの感染拡大もあり帰国することに。
■実感した地元の魅力と在宅医療不足
帰る場所として選んだのが富永さんの地元・中川村でした。
SAKADONEを運営・富永良謙さん:
「世界一周まわった後でも、中川村ってすごく魅力的だと思った。暮らしやすい場所で、帰ってきたからこそ気づく中川村の良さ」
その後、飯田市内の病院で働いた富永さん。地域の医療現場に目を向ける中で、気づいたことが―。
SAKADONEを運営・富永良謙さん:
「病院で働く中で、中川村周辺の在宅医療が不足している話を聞いたり、じかで感じて、自分で起業をして地域に貢献できたらと」
2023年、在宅支援サービスを行う会社を開業。代表でありながら、今も訪問看護師として働いています。
■訪問看護で住民と向き合う日々
ぽれぽれ代表・富永良謙さん:
「1週間に1回、訪問しているので、家でどんな様子か、家族の困っていることはないか聞く」
この日訪ねた佐々木育子さん(67歳)は、20年ほど前に病気を患い、歩くことが困難です。
ぽれぽれ代表・富永良謙さん:
「息が苦しいとかないですか。痰が出たりは?」
佐々木育子さん:
「咳出る時が」
日々の体調はもちろん、通院や投薬なども確認します。
夫・佐々木正太郎さん:
「いろいろ親切に心配して電話くれたり、ありがたく思っています。いろいろな人との(交流)が少なくなってきたのでそういうのができれば」
■「住民の居場所を」旧旅館を改装
訪問看護を通して地域の人と関わる中で生まれたのが、「地域住民の居場所をつくりたい」「村の良さを発信したい」という思いでした。
その実現のために選んだ場所が、会社の事務所でもある「旧・坂戸旅館」です。
20年ほど前まで営業していた古い建物を1年かけて改装。
4月24日に、交流拠点の「SAKADONE」としてオープンさせました。
妻・茜さん:
「(富永さんは)なんでも挑戦して努力しているなって。やりたいことを聞いて、影で支えてあげられたら」
■食事に宿泊、子連れに優しい空間も
大きな窓から光が差し込むキッズスペース。子どもたちの声が響きます。
カフェスペースでは、食事も提供。
ランチタイムは3種類のプレートのほか、キッズメニューも充実。
イチオシは、はちみつとマスタード、特製ソースを合わせじっくり焼いた国産の鶏肉です。
さらに―。
富永さん:
「今は5部屋が泊まれるようになっています」
旅館だった建物を活用し、宿泊もできます。(1泊5000円〜)
食事を頼んだ親子が向かったのは、カフェスペースから少し離れた部屋です。
子連れでも、気軽に食事を楽しむことができるようにとプライベートな空間もつくりました。
子連れの母親:
「ありがたいですね。(子連れで)行く場所(この周辺に)本当に何カ所しかなくて。中川に本当にないから使いたいと思います」
■「うれしい」住民が集う場に
オープンからまもなく1カ月。すでに地域の人たちが集う場に―。
村内から:
「おいしいです。色とりどりで見た目も良くて。遊ぶ所もあって気軽に来られる所ってなかったので、ありがたいし、うれしい」
「外から見るとすごくシックな旅館ですけど、中に入るときれいでおしゃれな雰囲気。(村外の人に)こういう場所があるんだよと、案内できる所が1カ所増えたのはうれしい」
SAKADONEを運営・富永良謙さん:
「思い描いた構想の中で、こんなに人が来てくれるんだなと、夢のようだなと。この土地を知ってもらいながら交流できることは、関係人口は広がってすごく良かった」
■「地域を盛り上げ、魅力ある村に」
目指すのは「地域の人が集まる場を盛り上げて、地域の活性化につなげること」。
そして今後は、村の良さを発信することにも力を入れたいとしています。
SAKADONEを運営・富永良謙さん:
「地域の方が暮らしやすい、住みやすい地域をつくるために、地域医療の福祉以外にも盛り上げていければ。(また)発信して、魅力ある中川村に住んでみたいと思ってもらえるような場所にしていきたい」