思春期のいじめ被害の経験は、その後の人生における心身の健康に対して、深刻かつ長期的な悪影響を及ぼすことは知られているが、どのような仕組みで心の不調につながるのかについては、十分に解明されていない。
研究チームは、心身の健康に影響を及ぼす可能性が指摘されている、糖とタンパク質や脂質などが反応して生じる終末糖化産物の1つ、ペントシジンという物質に着目、思春期のいじめ被害の経験が、その後の心の不調につながるプロセスにおいて、ペントシジンが関与しているのか、また、関与しているとすればどの程度その関連を説明できるのか検証を行った。
検証には、思春期の子どもたちを対象に長期間にわたって健康状態を追跡しているデータを活用、12歳時点のいじめ被害の経験、14歳時点の尿中ペントシジン濃度、16歳時点での抑うつ症状や精神病体験といった心の不調に関する変化を分析した。
その結果、いじめ被害を経験した子どもでは、その後にペントシジン濃度が高くなり、また、ペントシジン濃度の上昇が抑うつ症状や精神病体験の増加と関連していることが分かった。
さらに解析の結果、いじめ被害と精神症状との関連のうち、抑うつ症状については約19%、精神病体験については約28%が、ペントシジンを介して説明される可能性が示された。
研究チームは、「本研究は観察研究であり、ペントシジンが心の不調の原因であることを直接示したものではなく、今後さらなる検証が必要である」としたうえで、「いじめ被害を経験した場合であっても、ペントシジンのような生物学的指標を活用することで、その後の心の不調リスクを早期に把握し、より効果的な予防や支援につなげられる可能性を期待する」としている。