OMO5東京大塚に、なかなか予約が取れない客室があります。
その名も「都電ルーム」。
どこを見ても電車に囲まれたこの客室は、いまやホテルを代表する存在です。
その誕生のきっかけは、壮大な企画でも戦略でもありませんでした。
始まりは、客室の窓に残された――小さな手形でした。
OMO5東京大塚唯一のコンセプトルーム「都電ルーム」
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1日1室限定の「都電ルーム」
OMO5東京大塚の客室は、都市にあるホテルでありながら圧迫感を感じにくいよう、天井の高さと大きな窓による“広がり”を大切に設計しています。
コンセプトは「櫓(やぐら)」。空間を立体的に使いながら、秘密基地のように過ごせる「やぐらルーム」は、開業以来人気の客室です。
そしてその中に、1室だけ特別な客室があります。
ロールカーテンには電車。
クッションにも電車。
コップにも電車。
そして、服をかけるバーには、つり革。
どこに目を向けても、電車、電車、電車。
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その名も「都電ルーム」です。
大塚の街には、東京で唯一の路面電車「さくらトラム」(以降「都電」)が走っており、地元の人に愛される、大塚のシンボル的存在です。そんな都電を、部屋にいながら間近に感じられる都電ルームは、いまや連日予約が入る人気の客室となりました。
しかし、この都電ルームは企画会議から始まったものではありません。
きっかけは、客室清掃を担当していたパートスタッフの、ある“小さな発見”でした。
きっかけは、窓についた子どもの手垢
やぐらルームの特徴の1つは、床から天井まで広がる大きな窓。
街と客室をゆるやかにつなぐこの窓は、清掃スタッフにとって最も気を配る場所でもあります。
そして毎日磨いていたからこそ、気づいた違和感があります。
「……602号室、やけに子どもの手垢が多い。」
不思議に思ったスタッフは、その手垢の位置に手を当て、窓に近づいてみました。
すると——
ホテルの真下を、都電が走り抜けていくのが見えました。
しかも、よく見える。
子どもたちは窓に手をつき、夢中で都電を眺めていたのです。
「6階、とくに602号室は手垢が多い、という話は、スタッフの間でちょっとした“あるある”になりました」と当時の支配人の磯川さんは振り返ります。
この気づきこそが、すべての始まりでした。
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都電ルームの窓から見える都電の景色
最初の挑戦「都電Roomステイプラン」
すぐに現在の都電ルームが生まれたわけではありません。
2020年、まずは5室限定の「都電Roomステイプラン」がスタートします。都営交通へ企画を説明しに行くと、反応は予想以上。降車ボタンやつり革など、実際に使用されている備品を無償で貸し出していただけることになりました。
当時の内装は、すべてスタッフが監修。
とことん費用を抑えながら、都電を満喫できる客室を目指しました。
結果は大好評。
「この企画が想定以上に好評で、当初半年限定の企画でしたが、宿泊率の高さから1年以上継続しました。」と磯川さん。
しかし、成功の裏には課題もありました。
それは、子ども”だけ”が楽しい客室ということ。
「子ども”だけ”が楽しい客室」からの脱却
都電ルームは、子どもたちには大人気でした。
一方で、それは同時に課題でもありました。
デザインが“子ども向け”に寄りすぎていたのです。
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当時の「都電Roomステイプラン」用にしつらえられた客室
やぐらルームが満室で、代替としてこのお部屋にご案内するお客様に対し、「この客室をご提案するのが、少し申し訳ないと感じることもありました」と感じるスタッフも中にはいました。
「誰が泊まっても満足できる客室にしたい」
その想いから、「都電ルーム」プロジェクトが本格的に動き出します。
デザイナー、地域、そして社内説得
スタッフ主体の装飾には限界がありました。
そこで監修を依頼したのが、テキスタイルデザイナーの氷室友里氏。
「OMOの雰囲気との相性もよく、以前からいつかデザインをお願いしたいと思っていたデザイナーでした。」と磯川さん。
デザイナーの視点が加わり、アイデアは一気に広がります。
都営交通の全面協力もあり、プロジェクトは順調に進んでいきました。
——しかし、最後に立ちはだかったのは社内の壁でした。
デザイナー起用により費用は増加。
当時、星野リゾート内ではトマムの「鮭ルーム」が大ヒットしていましたが、「都電ルームは本当に成功するのか?」という声も上がりました。
それでも、これまでの宿泊実績と、スタッフ・デザイナー・地域が一体となって作り上げたデザインイメージを提示し、ついにGOサインが出ます。
かわいい…!
完成した客室を初めて見たとき、スタッフの口から自然とこぼれた言葉は——
「かわいい…!」
磯川さんの思いを継ぎ、都電ルームの進化を実現させた二代目総支配人・渡邉さん。その口からも、思わず同じ言葉がこぼれました。そしてその想いは、決してスタッフだけのものではありませんでした。
狙い通りそれまでファミリー利用が中心だった客室に、大人同士の宿泊が少しずつ増え始めます。
もちろん、子どもたちの満足度もさらに高まりました。
かつての「都電Roomステイプラン」を利用したゲストが、進化した客室に再訪し、驚きとともに喜んでくださることもありました。
「まだ帰りたくない」
そんな声が聞こえることも、珍しくありません。
誕生から4年以上が経った今も、都電ルームはなかなか予約が取れない客室です。
毎年の誕生日に訪れてくれるリピーター。
この客室に泊まるためだけに、自宅から大切な電車グッズを持ってくる子どもたち。
小さな手形から生まれた都電ルームは、ただ泊まるための客室ではなく、「大塚の街へ出かけたくなるきっかけ」をつくる客室へと育っていきました。
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