誰でも最初は分からないことだらけの妊娠・出産。
外国でのお産を経験する場合、その不安はさらに大きいものになります。

そんな外国人の妊婦さんたちに寄り添い、サポートし続ける日本人女性がいます。

外国人から見た日本のお産準備とは。

東京・池袋の会議室に集まっているのは出産を間近に控えた妊婦たち。
練習しているのは病院に行くタイミングを伝えるための日本語です。

ここでは日本で出産する外国人のために、入院・出産に向けた準備や、陣痛が来て入院するタイミングなど、日本式の出産を無料で教えています。

助産師の「母子手帳は入院の時、必ず必要ですけど、外に出るときは必ず持ち歩くようにしてください」と言う説明の後、一斉に通訳が始まりました。

この時飛び交っていたのはミャンマー、ネパール、インドネシアなどの5カ国語。

参加した外国人は妊婦やその家族、合わせて30人以上。
皆さん、日本で出産する準備は万全なのでしょうか。

ミャンマー人妊婦:
日本語は日常会話はできますが、医療用語が入ってくると不安なので勉強したいと思ってきました。

ネパール人妊婦:
日本は出産した後に1週間入院できるのが素晴らしい。言葉の壁があって不安ですけど、とても楽しみにしています。

日本に住む外国人は増加し続け、2025年末には412万人を超え過去最多に。
外国人の妊婦も増えているといいます。

そんな彼女たちに、「日本でも安心して出産をしてほしい」との思いで、このサポートを始めたのがNPO法人Mother's Tree Japan・坪野谷知美さんです。

坪野谷知美さん:
言語の壁、風習の壁で困ってるお母さんたちをサポートするのが一つのミッション。

日本での出産までのプロセスは、外国人にとっては当たり前ではないといいます。

坪野谷知美さん:
日本みたいに(出産まで)14回妊婦健診に行く国もあれば、バングラディシュみたいに2回くらい妊婦健診に行って産んだ次の日に帰宅する国もある。妊娠・出産・子育てはそれぞれの文化が色濃く出る。

保育士の資格を持つ坪野谷さんは、5年間で3000人以上の外国人の妊娠・出産をサポートしてきました。
行っているのは無料講座だけにとどまりません。

この日、坪野谷さんが訪れたのはパキスタン人夫婦の自宅。
妻のアインさんは現在、妊娠8カ月です。

日本での初めての出産に備え、ベビーチェアや抱っこひもなど必要なものを持ってきました。

夫のハラムさんは都内の小中学校で英語教師をしています。

2025年に妻のアインさんとパキスタンで出産した3歳の息子を日本に呼び新生活をスタートさせましたが、その直後にアインさんの妊娠が判明したのです。

ハラムさん(30):
言葉の壁に直面しました。病院は日本語が話せないと予約を受け付けてくれず、途方にくれていました。

「診察には通訳が必要」などの理由で、日本語が話せないアインさんを受け入れてくれる病院はなかなか見つかりませんでした。

長男のシャーミン君をパキスタンで出産した時は、近くに住む親族のサポートで不自由がなかったというアインさん。

頼る人のいない日本での出産に不安を覚え、食事もとれないほど弱ってしまった時、坪野谷さんのサポートに出会いました。

アインさん(34):
以前はとても大変でしたが、今は元気になってきています。

サポートを受けるようになって5カ月。
食欲も戻り、キッチンに立つ日も増えてきました。

作っているのは、チャパティと呼ばれるパキスタンのパン。
専用のフライパンで焼きます。

熱々のパキスタン風オムレツとチャパティは、ほっとする母国の味です。

ハラムさん(30):
最近、彼女はよく食べるようになって、私の分まで食べようとするほどです。

アインさん(34):
(この味が)好きです。

母国・パキスタンとの違いに戸惑いつつも、母子手帳や検診など充実した医療が受けられる日本での出産を楽しみにしているといいます。

この日はアインさんの妊婦健診。
坪野谷さんも通訳として付き添います。

この病院も坪野谷さんの紹介で通うことができました。

7月の出産に向け、経過は順調。

おなかの赤ちゃんのエコー写真も見せてくれました。

坪野谷知美さん:
(通院に)すごく慣れてきて、「こんにちは」「ありがとうございます」とか、どんどん言うようになって、(アインさんが)前向きになってきました。

外国人に寄り添い、母親のようにサポートする坪野谷さん。

このサービスを始める原点となったのは、幼少期に海外で暮らしていた時に見ていた母の姿でした。

坪野谷知美さん:
私が熱を出したりするたびに母がどんどんげっそり痩せていく。(母が)「帰りたい」と泣いていることもあった。ママたちを見ると当時の母に見えて仕方がない。母に恩返しするような気持ちでこのサポートをしている。

慣れない異国でも安心して母親になってほしいと願う坪野谷さん。

出産直前などの際、通訳がいなくても指をさすだけで会話ができる「お産ボード」も、そんな思いから生まれました。

都内で開かれた、妊娠・出産の勉強会にはアインさん夫婦も参加。
出産に必要なものをチェックしていました。

坪野谷知美さん:
国籍関係なく無事に生まれてほしい。子ども、赤ちゃんを真ん中にした多文化共生。一緒に育てることで日本を豊かな子育てができる国にしていきたい。