プレスリリース配信元:大正製薬株式会社
【医師監修】監督者が知るべき、『有効な熱中症対策』
大正製薬株式会社は、全国の工場や建設現場などの暑熱環境で働く20代~60代の263名を対象に、2026年4月に「熱中症対策」に関する調査を実施しました。その結果、「熱中症対策でこころがけていること」について、約7割が「こまめに水分補給をする」と回答しました。次いで、「エアコン・扇風機を使用する」(89人)、「十分な睡眠をとる」(85人)、「食事をしっかりとる(朝食を含む1日3食)」(73人)、「のどが渇く前に飲むようにしている」(70人)が続きました。

暑熱環境で働く方は大量に発汗するため、そうではない人以上に熱中症リスクを意識して生活する必要があります。脱水や熱中症をおこすことで集中力の低下や意識を失うなどの危険もあり、死亡事故につながる恐れもあります。このようなリスクを防ぐために重要なのが、「朝食を必ず摂ること」だと、熱中症に詳しい医師の谷口英喜先生は話します。
今回の調査の結果、暑熱環境で働く人の約半数にあたる133人は「朝食を欠食する日がある」と回答しています。この層のうち、約3割強(47人)が、医療機関で熱中症と診断された、または熱中症と思われる症状を経験しており、毎日必ず朝食を食べる人(29人)の約1.6倍にのぼることがわかりました。朝食欠食が熱中症リスクと無関係ではないと言えそうです。

暑熱環境で働く人の熱中症対策について、谷口先生に解説いただきます。
【監修】済生会横浜市東部病院 患者支援センター長/栄養部担当部長 医師 谷口英喜先生

麻酔・集中治療、経口補水療法、体液管理、臨床栄養、周術期体液・栄養管理のエキスパート。日本麻酔学会指導医、日本集中治療医学会専門医、日本救急医学会専門医、1991 年、福島県立医科大学医学部卒業。学位論文は「経口補水療法を応用した術前体液管理に関する研究」。2024 年 5 月に『熱中症からいのちを守る』(評言社)が刊行。その他の著書『いのちを守る水分補給~熱中症・脱水症はこうして防ぐ』(評言社)など。 2025 年 6 月 20 日には『「現代バテ」即効回復マニュアル』発売(評言社)。2023 年から、医療従事者の生涯教育サイト『谷口ゼミ』(https://taniguchi-seminar.com/)を開塾。2026年4月21日には、新刊「いのちを守る飲水学―からだがよろこぶ水分補給のトリセツ―」(評言社)を発売。
■朝食抜き(朝食欠食)が“命の危険”につながる理由
朝食を摂らない状態は、すでに軽度の脱水とエネルギー不足のまま一日をスタートすることを意味し、特に暑熱環境下では発汗によって水と電解質が急速に失われるため、体内バランスが崩れやすくなります。水分が不足すると発汗による体温調節がうまく働かず、熱が体内にこもって高体温となり、熱中症リスクが高まるほか、血液循環の低下によって脳や筋肉への酸素や糖分の供給も不足し、集中力や判断力の低下、動作の鈍化を招き、事故リスクの上昇にもつながります。
理想とされる1日の水分補給の手法に、1回あたり約180mL(コップ1杯程度)の水分を1日8回に分けて補給する「6オンス8回法」と呼ばれる方法があります(6オンス=約180mL)。起床直後、朝食時、午前10時頃、昼食時、午後3時頃、夕食時、入浴前後、就寝前といったタイミングで分散して摂取することで、合計約1.5~2Lの水分を効率よく体内に取り込み、体温調節や血液循環を安定させることができます。しかし朝食を欠食すると、このうち朝食時と午前中の補給機会を逃し、約400~600mLの水分摂取が不足することになります。
気温が上昇する時間帯に向けて脱水が進行しやすく、結果として午前中の早い段階から深部体温が上昇し、熱中症リスクが高まる点に注意が必要です。
■朝食で摂るべき栄養素
熱中症対策としての朝食では、単なるカロリー摂取ではなく、以下の栄養素をバランスよく摂ることが重要です。●水分:体液バランスの維持
平均的な成人で体内の約60%を占める水分は、血液や細胞内液として全身に栄養や酸素を運び、老廃物を排出する役割を担います。十分な水分があることで血流が保たれて発汗でき、体温調節がスムーズに行われます。不足すると血液が濃縮して循環が滞ってしまい、汗がかけずに熱が体内にこもりやすくなります。
●塩分(ナトリウム):発汗によって失われる電解質を補う
ナトリウムは、体液の浸透圧を維持して水分を体内に保持する働きがあります。汗とともに失われると、血液量が低下し、めまいや立ちくらみの原因になります。また、神経伝達や筋肉の収縮にも関与しているため、不足すると筋肉のけいれんや倦怠感が起こりやすくなります。意識や体の動きの制御に非常に重要です。
●糖分(炭水化物):エネルギー源としての役割
糖質は分解されてブドウ糖となり、脳や筋肉の主要なエネルギー源として利用されます。朝、糖分を補給することで血糖値が適切に上がり、意識の覚醒や集中力の維持につながります。逆に不足した低血糖状態だと、ぼんやり感や判断力低下、ふらつきなどが起こりやすくなります。
●ビタミンB群:エネルギー代謝をサポート
ビタミンB群は、摂取した糖質・脂質・たんぱく質を効率よくエネルギーに変換するために不可欠な補酵素として働きます。特にビタミンB1は糖質代謝に関与し、不足するとエネルギー産生が滞り、疲労感やだるさが強くなります。暑熱環境ではエネルギー消費が増えるため、重要性がさらに高まります。
●アルギニン:血流改善と疲労回復
アルギニンは、血管を広げて血の流れをよくする働きがあり、血流が良くなることで筋肉や脳に酸素や栄養がしっかり届きやすくなり、また、体の修復や回復に関わる成長ホルモンの分泌もサポートするため、疲労回復を助ける栄養素として重要です。
●クエン酸:疲労軽減と代謝促進
クエン酸は糖質や脂質を効率よくエネルギーに変換し、さらに、疲労物質とされる乳酸の分解を促進するので、暑熱環境で感じやすいだるさの軽減にも寄与します。
これらを朝の段階でしっかり補給することで、日中のパフォーマンス維持と熱中症予防につながります。
■特に朝にカロリーを摂るのが重要
朝食は、単なる習慣ではなく、体を「活動モード」に切り替える重要なスイッチです。特に朝に適切なカロリーを摂取することで、体温が上昇し、代謝が活性化します。これにより発汗機能や循環機能が正常に働きやすくなり、暑さへの耐性も高まります。一方で、朝食を抜くと体は省エネモードのままとなり、自律神経や筋肉の働きも鈍化してしまい、暑熱環境への適応が遅れ、結果として熱中症リスクが高まると考えられます。■理想的な朝食メニューと現実的な対策
理想的には、ごはんやパンなどの主食に加え、味噌汁や卵、魚、野菜などを組み合わせたバランスの良い食事が理想的だとされています。特に暑い時期は、冷たい味噌汁にするのも有効です。味噌に含まれる塩分で電解質を補給できるだけでなく、わかめやあさり、しじみ、豆腐などを具材にすることで、細胞内の水分バランスを整えたり、心臓や筋肉の働きをサポートするタウリンや発汗によって失われやすい電解質を補い、筋肉のけいれん予防や神経・筋肉の正常な働きを維持するミネラルやカリウムも同時に摂取でき、疲労回復や肝機能サポートにつながります。また、焼き魚や納豆、卵などを組み合わせることで、たんぱく質やビタミンB群も補え、エネルギー代謝を活発にすることに役立ちます。ただ、「忙しくて朝食の時間が取れない」、「暑くて食欲がない」という方は、熱中症対策の一環として、市販のゼリータイプ飲料などを積極的に取り入れることもおすすめです。短時間で水分・糖分・塩分を同時に補給できるため、現場での実用性も高い対策です。
■市販のゼリータイプ飲料を選ぶ際のチェックポイント
熱中症対策の朝食としての市販のゼリータイプ飲料を選ぶ際は、「水分補給」だけでなく、含まれている成分が体内でどのように機能するかを意識することが重要です。特に暑熱環境下では、発汗によって水分と電解質が同時に失われるため、まず確認すべきはナトリウム(塩分)が適切に含まれているかどうかです。全国清涼飲料連合会が定める「熱中症対策」表示ガイドラインでは、飲料100mLあたりの食塩相当量が約0.1~0.2gの範囲に収まっていることが一つの目安とされています。これはナトリウム量に換算すると、100mLあたり40~80mgに相当し、発汗によって失われる塩分を適切に補いながら、水分の吸収効率を保つために設定された基準です。
この濃度設計には理由があり、塩分が少なすぎるとナトリウム補給としては不十分になり、一方で濃すぎると体内への吸収がかえって遅くなる可能性があります。そのため、0.1~0.2g/100mLというレンジが、日常的な熱中症対策飲料としてバランスの取れた基準とされています。パッケージに「熱中症対策飲料」という表示のあるものを選ぶのが理想的です。
加えて、糖質が含まれていることも重要です。糖質も小腸での水分吸収を促進し、エネルギー源として脳や筋肉の働きを支えます。また、糖質に加えてビタミンB群やアミノ酸が配合されているものにすると、エネルギー代謝や疲労回復の観点からも非常に有効です。
■“アイススラリー”という形状ならば、体温を冷やす効果も
アイススラリーという飲料の形態が、高体温対策としても有効な手段として注目されています。アイススラリーとは、液体と微細な氷が混ざったシャーベット状の飲料で、見た目はかき氷に近いものの、氷の粒子が非常に細かく溶けにくいため、氷の粒子が残ったままでも流動性があり飲みやすいのが特徴です。この特性により、体内で氷が溶ける際に効率的に熱を奪い、単なる冷水よりも深部体温(体の中心の温度)を効果的に下げることができます。
もともとは運動時のパフォーマンス維持や熱ストレス対策を目的に、スポーツ医学や暑熱環境下での労働安全の分野で開発・応用が進んできた背景があり、さらに、臓器移植や外科手術の分野でダメージを抑えるために体や臓器を冷やすという考え方が用いられてきたように、アイススラリーも体を内側から効率よく冷やす発想に基づいています。
現在では熱中症対策としても広く活用が期待されており、屋外作業やスポーツ前にあらかじめ体温を下げるプレクーリングや、暑熱環境下で長時間活動した後の休憩時に上昇した体温をリセットする用途に適しているほか、建設業や製造業などの現場でも導入が進んでいます。一方で、今回の調査では、熱中症対策で「アイススラリーなどで体を内側から冷やす」と回答したのはわずか6人にとどまりました。現場での導入は進みつつある一方、働く人一人ひとりの実践はまだ十分に浸透していない状況です。
しかし、アイススラリーは日常生活に容易に取り入れることができる対策です。前日の晩に冷凍庫に入れておき出勤時に持って出れば、15分程度で飲み頃のシャーベット状になりますので、時間がなくて朝食を摂れない時にもこれを摂ると、水分と栄養補給にもなり、かつ体温を冷やすこともできます。
ただし、あくまで朝食をきちんと摂るのがおすすめです。朝食をきちんと摂っていたとしても10時には再度水分補給をするべきですし、その際、体温を冷やしながら水分補給ができるのでそれも有効な活用法です。
■日々の体調管理と職場の監督環境の整備も必須
熱中症対策は、水分や栄養補給だけでなく、「前日からのコンディションづくり」と「職場環境」が大きく影響します。まず重要なのが休養と睡眠です。睡眠不足では、自律神経のバランスが乱れ、体温調節機能が低下します。その結果、同じ暑さでも体に熱がこもりやすくなり、熱中症のリスクが高まります。前日はしっかりと睡眠時間を確保し、お酒でのアルコールも脱水の原因になるので過剰な飲酒を避けることも大切です。
また、疲労が蓄積している状態も大変危険です。体が回復しきっていないと、発汗や循環といった基本的な機能が十分に働かず、熱中症を引き起こしやすくなります。無理をせず、適切に休憩をとることが重要です。
職場においては、管理者のスタンスが安全性を左右します。本人が「まだ大丈夫」と感じていても、実際には脱水や体調不良が進行しているケースは少なくありません。そのため、周囲が積極的に声をかけ、こまめな水分補給や休憩を促すことが必要です。特に、「休憩を取りづらい雰囲気」や「我慢することが美徳とされる文化」は、熱中症リスクを高める要因になります。
体調の変化を申告しやすい環境づくりや、「少しでも異変を感じたらすぐ涼しい場所で休む」というルールの徹底が重要です。
■より精緻に脱水リスクを管理するための機器導入も

作業前の体調確認や、暑さ指数(WBGT)に応じた作業調整など、組織としての管理体制を整えることも、事故を未然に防ぐうえで有効です。近年、からだの水分量を簡単に測れる装置を導入するという選択肢もあります。2026年5月に登場した、シグマ光機株式会社(東京都墨田区)が開発し、ハーモナイズ株式会社(福島県本宮市)が販売している体水分計 「HBLS-03(一般医療機器・特定保守管理医療機器)」は、指に挟むだけで、血管内の水分量を簡単に測定できる機器です。装着後、約30~70秒で測定でき、数値で体内の水分状態を把握できます。この装置は、私が「ハイドロバランスメータ」と命名しました。「hbs(hydration balance score)」という単位は、血液中の水分量を数値化したもので、本製品で初めて導入されました。水分補給の必要性やタイミングの目安が数値で管理できます。
※2026年5月15日発売「ハイドロバランスメーター」 約36,300円(税込/1個)
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