中東情勢の影響によるナフサ高騰で、カルビーがポテトチップスのパッケージ見直しを打ち出したニュースは大きな衝撃を与えた。では、石川県民が愛してやまない揚げあられ「ビーバー」はどうなのか。製造元・北陸製菓の工場を訪ねると、「ダブルパンチみたいな状況」という言葉が返ってきた。
カルビーだけじゃない――広がるインクショックの波紋

中東情勢の緊迫化に端を発するナフサ(石油由来の原料)の高騰が、食品業界に静かな、しかし確実な打撃を与え続けている。

食品パッケージに使用されるインクは石油由来の素材に依存しており、ナフサ価格の上昇はそのまま調達コストに直結すると言う。大手スナックメーカーのカルビーが、ナフサ高騰によるインクの供給不安からパッケージデザインの見直しを打ち出したことが大きく報じられた。カラフルなデザインが象徴的だったポテトチップスの袋が、コスト削減のために白黒になるというニュースは、消費者に少なからぬ衝撃を与えた。

しかし、影響はカルビーにとどまらない。トマトケチャップ、油揚げ、もやし——身近な食品のパッケージにも同様の問題が波及しており、食品業界全体を取り巻く状況は予断を許さない。
石川のソウルフード「ビーバー」とは何者か

北陸製菓(金沢市)が製造する揚げあられ「ビーバー」は、もち米を原料とした独特のサクサクとした食感が特徴で、石川県内では長年にわたって親しまれてきた県民のソウルフードだ。地元のスーパーやコンビニに並ぶビーバーの存在は、石川の日常風景に溶け込んでいる。かつてはNBAの八村塁選手(富山出身)が『白えびビーバー』を紹介した事で、品切れになるほどフィーバーを巻き起こした。

そのビーバーが、中東発のインクショックの影響を受けているとすれば、話は他人事では済まない。北陸製菓の工場を取材した。
工場の現場で見えた現実

工場内では、ビーバーの包装作業が進んでいた。北陸製菓・営業企画部広報の福田栞さんは、作業を指差しながら説明した。「いまこちらはキムチビーバーをパッケージに包装しております。このパッケージも石油由来の素材を使用しておりますので、影響はございます。」

中東情勢の影響を受けて、北陸製菓でも包装資材の調達に変化が生じていると言う。これまで発注から入荷まで1カ月程度だった期間が、現在は2カ月ほどかかるようになったという。調達リードタイムが倍に延びるということは、計画的な生産管理の難易度が上がることを意味する。

また工場では1日に4万袋ものビーバーが製造されている。これだけの生産量を支えるためには、包装資材の安定した供給が欠かせない。福田さんが「包装資材の供給がないとお客様にお菓子をお届けできない」と語る背景には、こうした現実がある。
「ダブルパンチ」——原料高騰に資材値上げが重なる

ビーバーが直面している問題は、包装資材だけにとどまらない。
ビーバーの主原料であるもち米と揚げ油は、近年すでに年々、値上がりが続いている。食料品全般の物価上昇が続く中で、製造コストは着実に圧迫されてきた。そこへきて今回のナフサショックが追い打ちをかけ、包装資材のコストまでが上昇している。
「年々原料が上がっている状況で、それに加えて中東情勢の影響で資材も値上げで、ダブルパンチみたいな状況です」と福田さんは言った。
原料コストと包装資材コスト、両面から同時に締め付けられる構造は、ビーバーの製造を続けていく上で無視できない重荷になっているようだ。

安定供給は「今のところ」維持——しかし予断は許さない
では、ビーバーが店頭から消えたり、供給が滞るような事態になる可能性はあるのか。
「今のところ安定した供給はできているんですけども、今後の将来的な国際情勢については予測が難しい部分もありますので、引き続き状況を見ながら検討してまいりたいと思っております」と福田さんは語った。

気になるのは、カルビーと同様にビーバーのパッケージも白黒になってしまうのか、という点だ。あの赤や黄色が印象的なビーバーの袋が、モノクロになる日は来るのか。
「今のところ考えてないです」と福田さんは答えた。
ひとまず安心、といきたいところだが、話はそれで終わらなかった。「もし今後さらに厳しい状況になったら可能性としてはあるんですか」と尋ねると、少し間を置いて「可能性としては……はい。ございます」という答えが返ってきた。

現時点では白黒化の予定はないが、状況が悪化すれば検討の余地はある——。そのニュアンスは、インクショックの影響がビーバーにとっても決して他人事ではないことを改めて示している。カルビーのニュースが報じられた時のような衝撃が、石川のソウルフードをめぐっても訪れないとは言い切れない状況だ。

最後に福田さんはこう語った。
「私たちは包装資材の供給がないとお客様にお菓子をお届けできないので、どうか今後も安定した資材の供給があることを願っております。」

ナフサの高騰に端を発するインクショックは、石川県民のソウルフードにも静かに忍び寄っている。現時点での安定供給は維持されているが、先行きの不透明感は否めない。ビーバーのあの鮮やかなパッケージが変わらずに店頭に並び続けるためには、国際情勢の安定が欠かせない。
(石川テレビ)
