まもなく閉店を迎える名店のグルメ。名付けて“タイムリミットグルメ”を求めて、関西テレビの秦令欧奈アナウンサーが京橋と新大阪に突撃取材。
そこで出会ったのは、食べ物の「おいしさ」だけじゃない、人と人との温かい物語だった。
■45年の歴史に幕を閉じる24時間営業のパン屋
まず向かったのは、京橋中央商店街にある「手作りパンの店 トリーゴ」。
秦令欧奈アナウンサー:おしゃれだな。
店内に足を踏み入れると、100種類以上の自家製パンがずらりと並ぶ。
あんトーストは2個セットで170円、拳ほどの大きさがあるミルキーパンは100円。
そして目を疑ったのが、店頭に置かれた透明の袋。
秦令欧奈アナウンサー:パンの耳、なんと『ご自由にお持ち帰りください』。無料ということですよね。すごいな。しかもこの量。
パンの耳が0円で山盛り提供される、そのサービス精神。これが閉店の理由なのだろうか?

■「立ち退き」と「資金不足」 苦渋の決断
店長の安倍一寿さん(51)に閉店の理由を聞いた。
トリーゴ店長 安倍一寿さん:建物の老朽化で立ち退きになって。
秦令欧奈アナウンサー:お店を新天地で開くという手もあるじゃないですか?
トリーゴ店長 安倍一寿さん:製パンの機械も入れないといけないし、今あるのがボロボロなので。内装費用が2000〜2500万円はかかる。
創業45年、2代目として父親とともに現役で切り盛りしてきたお店。しかし建物の老朽化による立ち退きと、移転に必要な莫大な資金…その両方が重なり、今回の閉店という決断に至ったという。

■24時間営業のパン屋さん!? 京橋ならではの理由が
実は「タイムリミットグルメ」を語る前に、もう一つ驚きのエピソードが。
秦令欧奈アナウンサー:お店は何時からやってるんですか?
トリーゴ店長 安倍一寿さん:24時間でやってます。
秦令欧奈アナウンサー:24時間営業?聞いたことないですよ。パン屋さんで。
トリーゴ店長 安倍一寿さん:シャッターを下ろして片付けてたんですけど、お客さんが来るんですよ。シャッターを開けて……いつの間にかずっと開いてるようになりました。
京橋という、夜の街としても知られる土地柄。深夜にふらっと訪れるお客さんに応え続けるうちに、いつの間にか24時間営業になっていた、というのだ。
夜中の仕込みと営業を家族3人だけで回していたというから、その体力的な消耗は想像を超えるものがある。
お母さんにも聞いてみると…。
母・美幸さん:いつまで(パン屋を)しないといけないのかという感覚。ちょうどいいタイミングかな。お客さまに対して申し訳ない気持ちのほうが強いです。

■「タイムリミットグルメ」は、スクランブルエッグのサンドイッチ
そんなトリーゴが誇る「タイムリミットグルメ」として、店長がおすすめしたのが、“スクランブルエッグのサンドイッチ”。
ひと口食べると…。
秦令欧奈アナウンサー:スクランブルエッグが甘めの味付けなんですけど、ケチャップもたっぷり入ってるので、酸味ですごく食べやすく仕上がってる。こだわりとかあるんですか?
トリーゴ店長 安倍一寿さん:あんまりこだわってないです。
驚くほど素直な答えに笑いが漏れたが、その飾らなさがこのお店の魅力を物語っていた。

■20年の常連さんが涙
取材中、20年間通い続けているという常連の女性が来店。秦アナが閉店の事実を伝えると…。
20年通う常連さん:えー! うそ! 知らなかった、聞いてない。
秦令欧奈アナウンサー:お気持ちはいかがですか。
20年通う常連さん:泣きたくなる。もう歳やから、おいしいもの食べて……悲しいわ、ホンマに…頑張ってください。もうしゃべれなくなる。
突然の閉店の知らせに常連さんの動揺と寂しさが伝わってくる。
トリーゴ店長 安倍一寿さん:そうですね。いいお客さんたちがたくさんいてます」
「トリーゴ」の優しさが詰まったパンが食べられるのは、6月30日までだ。

■新大阪の細い路地の奥に 52年の名店が
舞台は変わって、新大阪へ。
細い路地を30メートルほど進んだ先に現れたのが、「新大阪名物カレーうどん 麺の香」。創業から52年目を迎えるカレーうどん専門店だ。
店主の小林督夫さんは82歳。妻の佳子さんも同じく82歳で、もうすぐ83歳のお誕生日を迎えるという。

■脳梗塞からの復帰 そして決断
元々は近くの別の場所で30年以上営業し、施設の建て替えを経て14年前にこの地でリニューアルオープン。今では連日行列ができるほどの人気店に成長した。
それでも閉店を考えはじめたのには、きっかけがあった。
妻・佳子さん:おととしの年末に、主人が脳梗塞で倒れた。年末から年始にかけて20日以上店を休んで、その時に復帰は無理かなと思ったけど、また頑張ってくれて。辞める時期を考えないと皆さんに迷惑かける。
加えて、いくら求人を出しても若い人材が集まらない、という現実も重なった。

■50年のノウハウが詰まった 一杯のカレーうどん
北海道の最上級の真昆布など厳選素材を使い、ご主人50年のノウハウを注ぎ込んだカレーうどん。
妻・佳子さん:いつ食べるの?
秦令欧奈アナウンサー:今でしょ。
秦令欧奈アナウンサー:全然違う。出汁が本当にダイレクトに来ますね。カレーがまた上品な味。食べたことないカレーうどんですね。コシがすごい。スープをすくい上げてくれる。感動してます。本当においしい。

■22歳から30年 思い出と一緒に食べてきた
取材中に集まった常連さんは…?
常連客:新入社員の22歳の時から。店がここじゃない時から。真夏の暑い時に歩いてお店に行って、この熱いうどん食べて汗だくだくかいて、うちわ借りて扇ぎながら食べて、また会社まで戻る。これが気持ちいい。それをずっと楽しんでました。
秦令欧奈アナウンサー:めちゃくちゃ思い出詰まってるじゃないですか。
常連の男性:寂しいですね。

■閉店後は「のんびり」する予定 カレーうどんが食べられるのは、6月10日
閉店後の予定を聞くと…。
麺の香 店主 小林督夫さん:ちょっとのんびりさせてもらって。でも何かしないとボケるし。
思わず笑みがこぼれる。52年間走り続けてきたお二人に、今度こそゆっくりとした時間を…と、誰もが思わずにはいられない。
夫婦二人三脚で紡いできたカレーうどんが食べられるのは、6月10日までだ。
閉店前の最後の機会に、その味と温もりを体験してみてはいかがだろうか。
(関西テレビ「newsランナー」2026年5月15日放送)

