2025年11月、196棟が燃えた大分市佐賀関の大規模火災発生からまもなく半年を迎える。
この火災で多くの住民の生活が変わったが、被災したのは人間だけではなかった。
住民に親しまれている「地域猫」も火災により行き場を失った。
自らも被災しながら、猫たちのために奮闘する地元の人々を取材した。

大規模火災から半年…街にはまだ傷跡が

大分市佐賀関で発生した大規模火災から、まもなく半年。
街にはまだ、爪痕が残されている。

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取材ディレクター:
火元となった家はこちらの奥にありました。火の粉が飛んできたのでしょうか。遠く離れたこちらまで燃えています。
中心部というところでしょうか。においなどは特にありません。

被災した住宅の一部は解体が始まり、復興に向け一歩ずつ歩み始めている。

多くの住民の生活を変えた火災。
被災したのは、人間だけではなかった。

被災したのは人間だけではなく…
被災したのは人間だけではなく…

大野富子さん:
2匹行方不明で、1匹は結構日数がたったあとに亡くなっているのを、うちの主人が発見したんで。

佐賀関の地域猫「関ねこ」
佐賀関の地域猫「関ねこ」

 町の人に親しまれてきた地域猫。
「佐賀関」の地名にちなみ、「関ねこ」と呼ばれている。
被災した住民たちは、この「関ねこ」を復興のシンボルにしようと、活動している。

火災発生当日(11月18日)・記者リポート:
こちら大分市の佐賀関漁港です。対岸からも激しく炎が燃え上がっているのがよく見えます。懸命な消火活動が続いています。

約6.4ha・196棟を焼失(2025年11月18日)
約6.4ha・196棟を焼失(2025年11月18日)

2025年11月、炎に包まれた佐賀関。
強風のため、瞬く間に延焼し、約6.4ha、196棟が焼け、鎮火までは2週間以上を要した。

現在も、54世帯85人が市営住宅や民間のアパートなどで生活している。
市は、11月末までにすべての解体・撤去作業を完了させる計画としている。

漁業が盛んな佐賀関では、火災が起きる前から「猫は大漁を招く」などとして、家庭のペットではない、地域で暮らす「関ねこ」たちが町に溶け込み、親しまれてきた。

そんな「関ねこ」たちの世話をしている大野富子さん。
7年前に別府市から引っ越してきたが、当時、町には異臭が漂っていたという。

大野富子さん:
こっちに住み始めたころに、猫がいっぱいいるなと。風が吹いたりすると臭うんですよ、ふん尿の。よく見ると、道とかに猫のふんとかボロボロ落ちてて、ふんを見つけたら拾うというのを始めて。

手術済みの猫の耳は“桜の花びらの形”に
手術済みの猫の耳は“桜の花びらの形”に

異臭対策のために始めたのは、エサやトイレを整備した「猫の居場所づくり」。
大野さんはさらに、繁殖を防ぐため、不妊・去勢手術も受けさせた。
猫の耳は、手術済みと分かるように“桜の花びら”の形にカットされているのが特徴となっている。

自宅も全焼…でも「佐賀関を離れない」

現在、火災の被害が大きかった田中地区にいるのは、23匹の関ねこたち。
1匹1匹につけられた名前のほとんどを大野さんがつけた。

「関ねこ」のアゴハチ
「関ねこ」のアゴハチ

大野富子さん:
アゴハチは浸透してます。みんなかわいい、かわいいってかわいがってくれるんで。

これまで、大野さんが世話をしてきた関ねこは60匹以上。
猫たちは、毎日のように大野さんの自宅にエサを食べに来ていたが、大野さんの自宅も火災で全焼してしまった。

大野富子さん:
ここがうちですね。ここが玄関があって、宅配ボックスで。もう見事に何も残っておりませんが。

わずかに残っているのは、塀と浴室の壁のみ。
それ以外は何も残らず、がれきと化してしまった。

大野富子さん:
たぶんこれが2階にあった事務机なんですよね。落ちてきてるんですよ。何もかもがもう・・・。ここにあれがあって、何があってという状態はまだ頭に鮮明に残ってるんで・・・。

現在は近くで仮住まいをしているが、今後も佐賀関を離れることはないという。

大野富子さん:
離れられませんね。たぶん地域から離れるのもできないんだけど、猫から離れられないのが一番大きいかもしれないですね。

以前の自宅が住めなくなったため、すぐそばの空き家を購入。
以前のように、関ねこたちの「餌場」となるよう、リフォーム中。
しかし、この家も一部がすすけ、窓ガラスが割れていたりと、現在も火災の跡が残っている。

家の屋上から広がるのは、爪痕が残る町。
夫の正義(まさよし)さんは、まだこの光景に慣れないと話す。

夫・大野正義さん:
住んでいいよと言われて買い取った時に、ここ(屋上)に上がってみたんですよ。全部見えるじゃないですか。結構気分沈みましたね、落ち込んで。(光景に)慣れないしやっぱり戻せるなら戻してほしいって感じですよね、本当に。

「関ねこ」を復興のシンボルに

関ねこを世話するのは、大野さんだけではない。
近くに住む橋本康聖(こうせい)さんも、一緒に関ねこたちを見守っている。

橋本康聖さん:
こういうふうに写真つきの名前をこれ(ボード)で管理してますというのを見せるようにしたんですよね。

炎は、自宅のすぐ裏手まで迫ってきたが、ぎりぎり延焼を逃れることができた。

大野さんの自宅を含め、数カ所あったという餌場が焼けたため、今では多くの関ねこが橋本さんの家に集まってくる。

橋本さんが考案した「関ねこ」のロゴ
橋本さんが考案した「関ねこ」のロゴ

デザイナーでもある橋本さんが火災後に考案したのが、関ねこのロゴ。
顔の模様に漢字の「関」があしらわれたデザインだ。

橋本康聖さん:
佐賀関の「関」という漢字をもとに、猫の顔の形でやってたんですけど、地域猫の活動ということで桜猫というか、耳をカットして。

大野さんは、橋本さんとともに、この「関ねこ」ロゴで町を元気にしたいと計画している。

お祭りでは、このロゴをあしらったシールとキーホルダーを販売。

観光客:
かわいい。これ1枚お願いします。

売り上げは、猫たちの医療費や餌代などに充てる予定だという。

大野富子さん:
田中(地区)の復興も一緒にかけていると言ったら何ですけど、関ねこ=田中地区だから、関ねこがみんなに注目していただければ、ちょっとでも昔のようなにぎわいが取り戻せたらいいのかなと。見てくれる方に、おかげでこんなになりましたという成果を見せたい。

大規模火災からまもなく半年。
被災した住民も猫も、笑顔を取り戻すため奮闘している。
(「イット!」5月11日放送より)

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